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奴隷の少女

「いらっしゃい! 本日はいい奴隷を入荷してるよ!」


「活きのいい奴隷が入ったよ~! 安くしていくから寄ってくれ~!」


声が周囲で響く。

しかしその内容は人の売買。

この辺り一帯は奴隷の売買を行う店しかない。

人の欲望を満たすための商売。

まぁ確かに娯楽は需要があるのだろう。

奴隷に人権は保証されない。

ゆえに奴隷は道具(おもちゃ)のように扱われる。

ストレス発散のためにサンドバッグとして扱われる者。

性処理の道具として扱われる者。

その用途は様々だが確実に言えるのは幸せな未来など待っているはずがないだろうということである。


シアの機嫌は最底辺であった。

どこにいるのも血を分け与えるに値しないゴミばかり。

こんなもの達のためにお父様が警戒しているのかと思うと苛立ちが収まらない。

自分の運命を受け入れる愚か者にただ怯えるだけのグズ。

殲滅した方が早いのでないだろうか。


「そこのお嬢ちゃん! 今ならこいつ安くしておくよ! 力はあるから便利だよ!」


「……別に要らないわ。必要じゃないしね」


「そっかぁそりゃ残念だな。……お前! お前がちゃんとしないから売れ残ってるじゃないか! ふざけるんじゃないぞ!」


「ぐあっ!」


シアに声を掛けてくる商人がいたが特に必要になるとは思えなかったため断る。

すると商人の男は烈火のごとく怒りだしシアに進めていた奴隷を罵り蹴り出した。

血を吐いているがそんなことはお構いなし。

見ていても別に気分転換になる訳でもないのでそのまま歩き出す。

その後も何度か声を掛けられるがほとんど同じ結果になった。

いい加減我慢の限界に達しそうになり適当に誰か殺してストレス発散でもしようかと思い始めていたその時、

1人の奴隷が目に入った。


「さぁ寄ってらっしゃい! 世にも珍しい悪魔の子だよ! いい加減誰か貰ってくれないと廃棄処分になっちゃうよ!」


悪魔の子、そう呼ばれる奴隷は褐色の肌にはちみつ色の髪、そして黒い瞳を持つ10歳前後の少女だった。

その少女はボロボロの布切れを来ていて瞳には光が無かった。

しかしシアは気がついていた。

その小さな手に魔力をかき集めていることに。

微弱ながらゆっくりと集まり形をなしていく魔力に。

シアは宿替わりにしている男から聞いていた。

魔法はまず魔力が扱えないと使えない。

大体の者は成人にならなければ魔力を扱うことすら不可能であると。

しかし現実はどうだ。

目の前の少女は魔力を己が手に集め魔法を発動しようと足掻いているではないか。

これは惜しい。

価値無しとするにはあまりに惜しい。

環境さえ整えてやればきっと育つだろう。

シアはさっきまでの不機嫌を忘れ上機嫌に笑っていた。

しかし同時に迷っていた。

ここまで才能があると吸血鬼にしたらその才能を潰してしまうのではと。

しかしここで彼女を放っておくメリットはない。

手に入れることは確定している。

……お父様に預けてみるか?

お父様は私なんかよりもずっと魔力の扱いが上手い。

その線で行こう。

お父様には面倒をかけるがもし要らないと言われたら私とフロンの血液袋になるだけだ。

私達吸血鬼は吸血衝動がある。

というより血を飲まないと生きてはいられない。

まぁ正確には血に含まれる魔力を吸っているのだがあまり変わらない。

どう転んでも使い道がある。

これほど素晴らしいことはないだろう。


とはいえ奴隷を買うには金が要る。

残念なことに持ってはいない。

ではどうやって奴隷を買うのか?

答えは簡単、買う必要がないのだ。

商人に少女を買うと告げると大層喜んで奥の部屋に招待された。

ここで色々と書類にサインして金を支払うらしい。

しかしシアは部屋に入った瞬間商人を呼びかけて振り向いた所を支配の魔眼で支配すると面倒な手続きをパスして少女を買うことに成功した。

しかもタダで。


「おい出ろ! お前の主人が決まったぞ」


そう言うと少女は絶望に染まった表情を見せる。

まぁこれで私の命令には絶対に逆らえなくなる訳だからねぇ。

脱出したい彼女からしたら絶望しか感じない情報だろう。


「初めまして、私はシア、これからあなたの主になるお方に仕える者よ」


「え?」


「あなた魔法が使えるんでしょ? だったらお父様の役に立つかも知れないじゃない。だから買ったの。分かったかしら?」


「……何で」


「何で魔法を使えるのを知ってるかって? 私が魔力を見ることができるからよ。分かったら従いなさい」


「……はい」


少女からは諦め以外の感情を感じなくなった。

まぁすぐに希望に満ちた生活が送れるでしょう。

お父様ならこの子を見捨てない気がするし。

まぁ逆らうなら私が殺すのだけれどね。


「じゃあ行くわよ。着いてきなさい」


そう言って今住んでいる屋敷に歩き出そうとするがジャラリという鎖の擦れる音に足を止めて振り向く。

見ると少女の足には枷がはめてあり歩くのも苦労しそうな状態だった。

それにため息をつくと怒られると思ったのかビクッと身体を震わせる。

カツカツと近寄ると魔力で足の鎖を破壊した。


「え……?」


「それでひとまず歩けるでしょう? さっさと着いてきなさい」


恐る恐るといった具合にシアの後ろを着いてくる少女。

まぁ今日の夜にシャドウキャットから情報を受け取ったらお父様に渡しに行こうかしら。


この子は将来絶対に役に立つ。

なら頑張ってお父様の役に立ってもらわないとね。

そうじゃないとお父様の時間を無駄に削ることになってしまうもの。

まぁその時は私達の奴隷として役立てるのだけれどね。


そんなことを考えながら屋敷に向けて歩く。

この後少女の運命がどうなるかは少女次第である。







はい、新キャラの奴隷ちゃんです。

名前は既に考えてあります。


明日も同じ時間に投稿します。

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