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友達が欲しい少女の話 ①

楽しい!!!(楽しい!!!)

 今日も私は1人でご飯を食べます。別に一緒に食べてくれる人がいない訳じゃないんです。それどころか、私と一緒に食べようと、誘ってくれる人はたくさんいます。でも私はその人達をみんな振り切って1人でご飯を食べるんです。

 誰かと食べるのが嫌な訳じゃありませんよ? ただ⋯⋯あの人達は、私と一緒にいる事で、周囲と同調しようとしているだけなんです。私は、昔テレビに出た事があります。私としてはそんな事は大した事じゃないと思ってたのに、周りの人達にとっては違ったみたいなんです。友達は、私を凄いねと褒めました。私もテレビに出たいと羨ましがりました。

 何故かみんなとの間に壁ができてしまったような気がしたんです。みんなにとって私は、テレビに出るちょっとした有名人、それ以下でもそれ以上でもなく、私は少し遠い場所にいる人になっていました。私はみんなと普通に仲良くしたいだけなのに⋯⋯

 唯一、普通に仲良くしてくれた友達の真子ちゃんも、急にいなくなっちゃいました。

 もう私と普通に仲良くしてくれる友達はいないんですか?


 そしてそれは中学校に上がっても、特に変わる事はありませんでした。小学校とほとんど同じ人が中学校にはいましたし、それどころか、別の小学校から来た人も私の事を知っていたのか、そこでも私は特別扱いされました。男の子からも、何度も告白されましたし、友達だってたくさんできました。でも、みんな私に遠慮して、私に合わせようとします。

 私は、とても悲しくなり、お母さんに相談しました。そしたらお母さんは、


 『ごめんね?』


 と謝りました。違うんですお母さん、私はは別に謝って欲しい訳じゃないんです。ただどうしたらいいのか分からなくて、どうするのが正解なのか分からないだけなんです。本当の友達が欲しいだけなんです。一緒にいて楽しい人の作り方を教えて欲しいだけなのに⋯⋯


 私は何だかとても悲しくなって、近所の公園に行ってみました。最近誰かといても、それが凄く虚しくなってしまうので、遊びに行く時だっていつも1人です。

 でも公園には大抵男の子がいるので、誰も知らないような寂れた小さな公園に行きます。この場所は私のお気に入りの場所で、今まで誰にもここで会った事はありませんでした。だからその日も誰もいないんだろうと思って、公園に行きました。

 でもそこには、大きなお兄さんがいました。そのお兄さんは、公園のボロボロのベンチに座りながら、コーラを飲んでいました。私は、基本的に炭酸飲料はあまり飲まないので、それが美味しいとは、当時は思ってもいませんでした。

 そんなお兄さんは、ぼうっとして、空を眺めていました。その姿が、とても寂しそうに見えた私は、思わず近づいて声をかけてしまいました。お母さんから、いつも知らない人とあんまり話しちゃダメだと言われていたのに、そんな事なんて忘れて話しかけていました。


 「あ、あの⋯⋯」


 「ん?」


 お兄さんは、声をかけられるまで、私が近づいてきたことに気づかなかったみたいで、とても驚いていました。それが少し面白くて、私が少し笑っていると、お兄さんは、恥ずかしかったのか、頬をかいて苦く笑っていました。


 「ふふっ、こんにちは!」


 「こんにちは、こんな所に子供が来るとは思わなかったよ」


 「子供じゃないですっ! 私はもう中学生なんですから!」


 私は身長が低いせいか、年齢よりも低く見られることがとても多いです。お母さんも、子供の頃は小さかったそうですから、私もしばらくは小さなままなのかな⋯⋯


 「そりゃあ悪かった」


 お兄さんはそう言ってまたコーラを飲んで、重そうに息を吐いていました。


 「しかしこの辺は危ないぞ? 有名な幽霊屋敷だってあるしな」


 「さ、流石にあそこには近づきませんよ」


 あんな怖い所に近づくなんてみんなとても勇気があると思います。私は絶対に嫌です。


 「⋯⋯何かあったのか?」


 「ふぇ?」


 「いや、何か浮かない顔してるし、こんな危ない所に来るなんて普通じゃないからな。何かあったのかと思ってさ、まぁ余計なお世話か」


 「⋯⋯⋯⋯凄いですね」


 「あん?」


 「ちょっと聞いてもらってもいいですか?」


 「構わんが⋯⋯相談は親にするものだぞ」


 「もうしました」


 「でも解決しなかったと」


 「はい」


 「⋯⋯話してみ」


 私は、この初対面のお兄さんを信頼していました。理由は分かりませんが、このお兄さんに、今相談するべきだと思ったんです。そうじゃないと後悔すると思ったんです。


♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢


 「なるほど⋯⋯まぁようやくすれば友達ができないと」


 「友達はいるんですってば、私は、私が本当に仲良くできる友達が欲しいんです」


 随分と要約されてしまったが、別に間違えてもない気がする。それでも私が訂正したのは、何となく友達がいない寂しい子だと思われるのが嫌だったから。


 「まぁ中学生の人間関係って地味に複雑だよなぁ。分かる分かる」


 「わ、分かってくれるんですかっ!」


 「お、おう、俺も経験あるしな」


 「⋯⋯お兄さんはどうやって乗り切ったんですか?」


 「俺? 俺はなぁ⋯⋯」


 お兄さんは恥ずかしそうに言葉を切ると、私が思いもしなかった事を口にした。


 「同じ学校の奴らと友達になるのはほとんど諦めて、近所の年上の大学生とか高校生と遊んでたよ」


 「え?」


 「いや、だってそうだろ? 同じ学校の奴らと仲良くなれないなら、その外にいる人と仲良くなるしかないじゃねぇか、俺はそうしたぞ」


 「⋯⋯そうですか」


 私の近所にそんな人はいません。いや、いるのかも知れませんけど、私の控えめな性格のせいで、私自身、近所に誰が住んでいるのかあまり把握していません。

 そんな心情を察してくれたのか、お兄さんはため息をつき、コーラを一口飲んだ後、また考え出しました。結局私に、本当の友達はできないのだろうか、そんな事を考えて沈んだ気分になり、泣きそうになってしまいました。


 「あっ、思いついた」


 「ほ、本当ですか?」


 「いやまぁあんまり進められる方法じゃないけどな、というか、実際ただの時間稼ぎでしかないし」


 「それでもいいです! ぜひ教えてください!」


 私は、藁にもすがる思いで、お兄さんに質問しました。


 「別に人間じゃなくてもいいんじゃないか?」


 「へ?」


 「いや、だからさ、お前は自分と本当になってくれる奴を探してんだろ? なら別に人間じゃなくて、犬とか猫とかの動物から始めた方がいいんじゃねぇか?」


 「そのレベルからですか!?」


 「だってさぁ、お前、中学校の同級生は無理、近所の人にも心当たりがないんだろ? そうなると後はそれぐらいしか心当たりがないしなぁ」


 「うぅ」


 そう言われてみると、確かに理にかなってるかもしれない。でも何だか、それをやってしまうと負けな気がするのはどうしてだろうか。

 私がウンウンと悩んでいると、その様子が可笑しかったのか、お兄さんが楽しそうに笑っていました。私は恥ずかしくなり、俯きましたが、耳まで真っ赤になっている気がします。


 「しかしお前すげぇな」


 「へ? 何がですか?」


 今までの話の内容に、私が褒められるような内容が果たしてあっただろうか?


 「人間関係に失敗した中学校なんて、大抵が自分の世界作ってそこに閉じこもって、そこで自己完結してるような奴らばっかりだろ? でもお前はそうならずに、しっかりと自分の意思で、このままだと駄目だと思って行動してる。まぁお前の環境的な問題なのかもしれねぇけどさ」


 ⋯⋯今私の顔を見られる訳にはいきません。私の顔は、今間違いなくリンゴよりも真っ赤になっているはずですから。


 「⋯⋯私だって、友達を作ろうと頑張ってきたんですよ」


 「そうか」


 「でも、誰も私を、理解して、くれません、でした」


 「そうか」


 「私はそれが、ずっと嫌だった、んです」


 「そうか」


 「何度も何度、頑張っ、たんですよ?」


 「そうか」


 「お母さんにも、相談した、けど、分かって、くれなくて」


 「そりゃ辛かったな」


 「はい、はいっ、辛かったんですっ」


 私はみっともなく泣いてしまいました。誰かの前出泣くなんて本当に久しぶりで、しばらく泣きやめませんでした。私が泣いてるのを見て、少し慌てているお兄さんを見ると、何だか申し訳ないと思いながらも、私を心配してくれるのが、少し嬉しかったんです。


**********


 「あ〜だいじょぶか?」


 「は、はいっ、ご心配おかけしました」


 「いやまぁいいんだけどさ⋯⋯まさか泣かれるとは思わんかったぞ」


 「すみません⋯⋯」


 「で? どうだよ? その方法でいけそうか?」


 「頑張ってみます!」


 「幸いお前ん家はブリーダーやってるんだろ? 動物と触れ合う機会はたくさんある筈だ」


 「はい!」


 「それにこの周辺にも猫の溜まり場とか、あったりするからな」


 「そうなんですか!?」


 今日は珍しく叫んでばっかりです。この人の前だと、何故か本当の自分が前に出てくる気がします。


 「まぁ噂の幽霊屋敷なんだけどな」


 「うぇぇ!? 何でそんな事知ってるんですか!?」


 「この間入ってみたら何かたくさんいた」


 「はぇ〜勇気があるんですねぇ」


 「⋯⋯何なら今度連れてってやろうか? 親とかには内緒になるだろうが」


 「ぜひ!」


 じゃあ今週の土曜日にここの公園に集合でどうだ?」


 「大丈夫です! 絶対ですからね!? 約束守ってくださいよ!?」


 「お、おう」


 勢いに任せて小指を突き出す。お兄さんは、私の勢いに少し引き気味になりながらも小指を絡めてくれた。ちょっと大胆だったかと、恥ずかしくなったけど、何故か指を話したくなくて、そのまま約束を取り付ける。


 「指切りげんまん、嘘ついたら針千本の〜ます! 指切った!」


 この日から、私は毎週の日曜日が、とても楽しみになりました。


 「そういえばお兄さんの名前って聞いてなかったですね?」


 「そういやそうだったか、お前の名前は聞いたのに俺だけ教えないのは不公平だよな」


 「お前じゃなくて陽美子って呼んでください!」


 「分かったよ陽美子ちゃん」


 ちゃん付けをされるのは、子供扱いをされてるみたいで少し納得がいかないです。あれ? でもお兄さんからしてみれば私が子供なのは当たり前で⋯⋯何で私はお兄さんに子供扱いされたくないのかな? よく分かりません。


 「俺の名前は()()()だ。よろしくな」







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