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老魔法使いは希望を見る

しばらくはソロモン視点でやっていきます。お付き合いください

side ソロモン


 「クソッ! おい誰か! この植物のことを国王に知らせに行ってくれ!」


 「一応この街の領主にも連絡を取れ! どうせコイツのことを知っててこの屋敷に案内したんだろうがな!」


 まぁそうじゃろうなぁ。この屋敷に儂らを連れてきたのは領主じゃ。この植物(怪物)のことも知っておった可能性が高い。領主に報告に行けば、その冒険者は殺されてしまうかもしれない。しかしここで報告しないという選択肢はないのだ。

 領で起きたことは、領主の問題。しかし俺達国民には、大きな問題が起きたのなら衛兵や領主などの管理者に報告する義務がある。

 ならば衛兵に報告すればいいと思うのかもしれない。しかし今の俺達は領主の助けでこの街に来た状態、つまりは現在の上司、報告しない訳にはいかないのだ。


 「お主ら他の冒険者も援護を頼むぞ! それからモーガンの治療も頼む!」


 「俺達がこのクソ植物にでかいのぶち込む隙を作れ! テメェらならできるな!?」


 「「「「「ぉぉぉおおおおおおお!!!」」」」」


 やれやれ最近の若者は血気盛んじゃのぉ。今はそれがありがたいが、さてさてどうしたものかの。


 「爺さん、さっきのもう1回だけいけるか?」


 「魔力が足らんよ。あれは儂の使える魔法の中では1番威力が高かったんじゃぞ? それだというのに傷1つ付かないのはショックじゃよ」


 「ならどうする? せめて弱点が分かればやりようはあるんだが……」


 「炎は最初は効いているように見えたのじゃが……突然効かなくなったの」


 「……まさか弱点が変化するのか? そりゃ反則ってもんだぜ」


 「嘆いても仕方あるまい? ではやるとするか」


 「どうやってだよ?」


 「そんなもの決まっておろう?」


 ──────全部試すのじゃ。


 「……正気か爺さん?」


 「当然じゃろう? そもそもこれは生きているのかすら分からんのだぞ? 魔法使いが何らかの手段で操っている可能性すらあるのじゃからな」


 植物を肥大化させて操る魔法、そんなものは聞いたことがないが、別にありえない話ではない。

 魔法は才能と魔力さえあれば誰でも作れる。かくいう儂も、数々の魔法を作り出し、魔法界の第1人者なんて呼ばれておる。


 そんな儂の魔法を簡単に無効化しおって……儂としてもプライドはあるのじゃぞ? やり返さないと気がすまんわい。


 「全属性を叩き込む、お主は?」


 「あ〜じゃあ俺は他のヤツらを助けてくる。死ぬなよ?」


 「誰の心配をしておる若造、さっさと行かんか。死人が出るぞ?」


 「応! 任せとけ!」


 疾風の如き勢いで駆け出す。やはり若者は元気じゃのう。あの様な時が懐かしいわい。

 さて、では負ける訳にはいかんのぉ。ここは先人としての力を見せておかなければな。まだまだ若いもんには負けんぞ。


 「炎よ、集い燃え盛れ! 明けの日光となりて!『フレアライトアロー!』」


 白く輝く炎の矢が残像を引いて飛んでいく。


 「ギュァァァァアアアアア!?!?」


 再度燃えだし、身体をくねらせて叫ぶ。


 「ふむ、やはり炎は効いておるな。では次じゃ」


 「集い貫け暴嵐の風、回れ回れ回れ、『エアリアル!』」


  一条の風が植物を貫き、大穴を開ける。さらにその先にあった屋敷の塀も、その先の民家の一部も、そして街の壁さえも大穴を開けて削り取っていく。

 そしてそれを受けて悲鳴をあげることなくピタリと静止した植物に安堵したのか冒険者達も喜びに叫ぶ。


 しかしその歓声もすぐに止むことになる。


 植物を包んでいた炎がまるで飲み込まれるように植物の歪な口に消えていく。その光景はまるで植物の食事のようにも見える。 そしてその光景を見て、儂はどうして先程の『ガーンデーヴァ』が防がれたのか察してしまった。

 こやつは魔力を文字通り飲み込み、自分の糧とすることで自分の傷を再生させておるのか……まさしく魔法使いの天敵のようなやつよな。


 そして鋭く空気を切る音と共に漆黒の触手が周囲の冒険者達を打ち据える。

 しかし戦えば戦うほど不思議なやつじゃな、そこら辺の剣や槍が通らない程の強度を誇るというのに、まるで柔らかいかのようにしなる触手。そして魔法使いがもっとも相手にしにくい能力を持っておる。


 あぁしかし儂は────()()()()()()()()()()()()


 「とんでもねぇなこりゃ」


 「……全くじゃな、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。予想外じゃった」


 「……は? 何言ってんだ?」


 「こやつは魔力を吸収して己の傷を直しておる。故にやつは、儂がここに来たから目覚めたのじゃろうさ」


 「……なるほど、魔力に反応して目覚めたってか? それにさっき炎を飲み込んだのは魔力の吸収ね。……爺さんの天敵じゃねぇか?」


 「あぁ全くじゃ、儂が魔法を撃つ度にヤツを助けておるのじゃ。これ以上は手出しできんよ」


 「……爺さんの援護無しでこの化け物と戦えと? そりゃ無茶だろ……」


 ふむ、誤魔化せたようじゃな。思わず本音が一瞬出てしまったから焦ったぞ。

 あぁ儂の悲願、その架け橋がこのような所に転がっているとはな、いや、この場合は生えていたと言うべきか? まぁどうでもよい。今はそんなことは些事(さじ)でしかない。

 この化け物植物は言ってしまえば不死の劣化版なのじゃろうさ。魔力を取り込み自らの傷を癒す、こやつを研究すれば不老不死に1歩近づくかもしれない。


 あぁそう思うと────興奮が収まらんな。


 これ程猛るのは一体いつぶりだろうか。不老不死とはすなわち人を辞めたもの。人間である以上死とは永遠に付いて回る逃れ得ぬ運命なのだから。つまりそれを破ろうと思うのならば人を研究していてもダメなのだ。この世ならざる、異形の怪物にこそ、我が血路はあったのじゃ。

 あぁなんと素晴らしいことだろうか! 今儂の目の前にはそのこの世ならざる異形の怪物がいるではないか! これが誰の仕業なのか等既にどうでもいい。儂は奇跡を目にしておる! 人間がたどり着けぬ領域の怪物と対面しておる! おぉ神よ! 感謝しよう! 今まで神なぞこの世の管理をするだけで儂らの事など全く見ていないと思っていたが! とんでもない! 神は確かに儂らを見ておられる!


 であれば儂はその天命に従おう。儂はこの怪物を研究して必ずや不老不死に手をかけてみせる。枯渇病の原因と治療法を確立して、儂は嘗ての栄光を取り戻すのじゃ。

 そのためならば悪魔にも魂を売ろう、いくらでも友を殺そう。

 栄光を取り戻すと言ったが儂は別に他人に賞賛されたい訳では無い。儂の目的はただ1つ、嘗ての力を取り戻し、儂を蔑む糞共を1人残らず殺してやるのじゃ。


 この世は所詮弱肉強食、それは目の前の光景も証明しておる。ほらまた冒険者が1人死んだ。漆黒の触手に貫かれて死んだ。

 どうやらあの触手には人体を貫通することが可能な程の、鋭利さも備えておるらしい。まさしく殺すために生まれた存在。これを作ったものにはぜひ会いたいものじゃな。


 まぁそれはさておき、ライオスには勝ってもらわねばならないのぉ。勝てなければこの怪物を研究することすらできなくなってしまうのじゃから。それは許せない()()()()()()()()()()()()

 悲願に到達するための鍵が目の前に転がっておるのじゃ、これを諦めることなどできるはずもない。


 「援護をしない訳では無いぞ?」


 「あん? でも魔法は効かないんだろ?」


 「まぁのぉ、じゃからこうするんじゃよ」


 儂はその言葉の後に魔力で仮初の腕を作り出し、近くに転がっていた瓦礫を掴み、植物に向けて投げつける。軽く音速に迫る速度で投擲された瓦礫は、植物の胴体に風穴を開けた。


 「ギュァァァァアアアアアア!?!?」


 「おぉなるほどな! 魔法を使った物理攻撃なら効くのか! しかしそれなら掴んだまま直接ぶつけた方が良くないか? 冒険者達も、数人余波で吹っ飛んだし」


 「儂もそうしたいのじゃが恐らく魔力の腕を食われて再生されるじゃろう」


 「あぁそりゃあ意味ねぇな」


 「まぁそういう事だから、儂も援護に回るぞ」


 「爺さんが援護してくれるならあんな怪物怖くねぇさ! おいお前ら! これから爺さんの頼もしい援護が始まる! 注意したんだから巻き込まれるようないねぇよなぁ!!」


 「応! 勿論だぜライオスの兄貴!」

 「ソロモンさんの援護があれば怖いもんなんてねぇ!」


 やれやれ、どいつもこいつも好き勝手言ってくれる。期待してくれるのはこちらとしても嬉しい限りだが、あまりこの老体に負担をかけんで欲しいのじゃがのう。

 まぁそんな事言ってもしょうがないか。では行くぞ植物(化け物)



















ソロモンさんがかなり闇深いキャラになってしまった。もう少しソフトなはずだったのに筆が乗りまくって気づいたらこんな事に……まぁあまり支障はないし、面白いからいっかぁ笑

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