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最強の刀 ①

またもや新キャラが出ます。

 そもそもこの刀はどちらかといえば戦うために作られた刀だ。断じて飾って楽しむための骨董品としての刀ではない。それは実際に使ったから分かる。

 でもそれにしてはこの刀は軽い。いや、軽すぎる。手に持っているのは分かるがまるで小石を握っているかのような重量。

 重さで斬るタイプの刀ではなく、速度と技術で斬るための上級者向けの刀。

 これでは俺は上手く使えない。とはいえ重すぎても全く扱えないだろう。ならばこの刀に必要なのは持ち主に合わせて()()()()()()()()

 重さとはそれ即ち質量と重力。そして自由に重量を操作できるようにするためには確実に重量を操れなければならない。

 しかし俺には重力を操る魔法は使えない。だから別の方法を探さなきゃならないんだけど……そもそもの問題はこの刀が軽すぎること。ならば重量を変えるように調節すればいいだけ。

 魔法を使わずに重量を調節できるものを刀に組み込む必要がある。

 ……改造してやるなんて息巻いて宣言したけどこれは今すぐには無理だな。材料集めから始めなきゃならないとかしんどいなぁ。


 「という訳でお前に使う素材を探しに行くぞ。すまんな」


 気にしないでいいという感情が刀から帰ってくる。……下手したらこいつ人間なんかよりもずっと良心的なやつなのでは? 前世の上司とは比べ物にならないんだけど。いや、比べるのすら失礼か。ゴメンな?


 じゃあ早速出発! いざ鉱石系特殊階層、64階層の“灰色の神殿“へ!


♢♢♢♢♢


 64階層──灰色の神殿

 ここは魔物が一体しかいないという、他の階層と比べると異常な程攻略が簡単な階層になっている。

 この階層はいわゆる採掘場、レアな鉱石からどこでも取れるような鉱石まで何でもある階層。特に罠がある訳でもなく、このダンジョンにおいてもっとも攻略しやすい階層、それがこの64階層である。


 そしてこの階層に住み着くたった一体しかいない魔物、その存在こそが64階層で最重要となっている。なにせやつは──


 「よぉ旦那! 酒でも持ってきてくれたのか? ヒック!」


 そこにいたのは小柄でずんぐりとした男で、そして立派な髭に、酒壺をそばに大量に転がしている男だった。

 彼こそがこの階層の階層主、ドワーフのニッケル。

 とりあえず事情を説明してみるか。


 「ニッケル、この階層に重量を調節できる鉱石とかないか?」


 「あるぞ」


 「あんの!?」


 「ほれ、これじゃよ」


 「……これはまた長く見ていたくはない鉱石だな」


 ニッケルから手渡された鉱石は青の混じった灰色をしており、その表面がほの暗く輝いていた。しかも不思議なことに重さが一定ではないのだ。魔力を込めれば重さが変化した。

 これは凄いな。これならちょうどいいかもしれない。あとはあの虹色の魔石を使ってこの石と刀を道具合成で組み合わせる。そうすればかなり便利な刀が完成するはずだ。


 「あぁ重力石を持っていくのかい? ならついでに酒でも持っていけ~ヒック」


 どうやらこの不思議な鉱石は重力石という名前の鉱石らしい。まぁ鉱石の名前は正直どうでもいい。問題はついでとばかりに渡された酒、近づけただけで涙が出てくるんだが?

 どんだけ強い酒なんだよ。というか酒なんてどこで手に入れたんだ? 俺が渡したことなんてないし、つまりこいつ自分で作ったのか? でも作り方なんて教えてないぞ?


 不思議に思って聞いてみると普通に答えが帰ってきた。


「旦那が俺達の種族を酒好きに設定したからだろうなぁ。作られた時には酒の作り方は知ってたぞ?」


知らなかったんだけど。まぁ確かに酒がないのに酒好きは無理があったか。でもやっぱりドワーフといえば酒と鍛冶だと思う。そこは譲れない。


「まぁそういう訳だから旦那も持って行ってくれ。最近だとグレヴィルさんも酒を飲みに来るんだ。たまには旦那も来てくれや」


何やってんのグレヴィル……酒は個人の自由だし、竜人のグレヴィルなら酒には強いと思うから特に心配はしてないけどな。仕事に支障がなければ息抜きぐらいいくらでもしてくれ。


「あぁそうだ旦那。他にも見せたいもんがあるんだ。ちょっと着いてきてくれ」


……まぁ急ぎの用事がある訳じゃないし、別にいいか。大人しく着いていこう。


ニッケルに案内されて64階層を歩く。

正直この階層は中々来ることがないからこの際、色々と見学して行くのもいいかもしれんな。


「着いたぜ旦那」


「……何だこれ」


俺の目の前には薄い緑色の輝きを放つ透明な巨岩が転がっていた。

というか本当にデカすぎじゃね? よく掘ったな。


「これはこの間見つけた不思議な鉱石でな。魔力を通してみると、透過して触れられないじゃ。全くとんでもない鉱石だわい」


確かにそれはとんでもないな。透過、それはつまりこの世界に存在しないということに近しい。幽霊体(アストラルボディ)の魔物は作ったし、その過程でこの世界とは別に、天国や地獄、そして魔界があることも確認できた。

しかしこれは魔力を通すことでこの世界に存在しなくなるという特殊過ぎる伝説と言ってもいいであろうレベルの鉱石だ。

何とかして活用したい。


「ニッケル、この鉱石と重力石の生成条件は分かってるか?」


「重力石は魔力濃度が1000よりも上の土地で魔石エルドライト鉱石が結びつくと生成される見てぇだな。こっちのやつは……悪ぃが全く分からねぇ」


エルドライト鉱石とは人間達が40年程前に見つけたらしい鉱石の名前で、鈍く輝くエメラルド色をしている。さらには発見されている中でもっとも硬い鉱石であることから、“深緑の硬石“なんて呼ばれている。

さらにこの鉱石は熱にも強く、最近では防具などに加工されることが増えたらしい。俺が見た訳じゃなくてシアとフロンからの報告だから実際はどれだけの硬度があるのかは知らない。


というかこの階層は日によって取れる鉱石が変化する。当然のように元々レアであるエルドライト鉱石がこのダンジョンでも希少であるのは分かりきったことだろう。


「そうか……ならとりあえずこの透過する鉱石を幽幻石と名付けることにする。名前がないと不便だからな」


「おぉ! そりゃあその通りだな!」


ちなみに名前を付けたが、正直、こういう時に昔の不治の病(中二病)が再発しそうで何とも言えない気分になる。

ネーミングセンスを俺に問わないで欲しい。


「そんじゃあ好きに持って行ってくれや旦那。ついでに酒もな!」


「分かったってば……というか俺骨なのに食事できるの何でなんだろうな?」


「さぁ? 知るわけなかろうよ」


「だろうな。じゃあ貰ってくぞ」


これで刀をかなり強化してやることができる。これでもう失敗作なんて言わせるものかよ。





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