鍛錬を積む
令和記念で新作を作ってる黒猫さんです笑懲りねぇなぁ。
「…………」
一心不乱に刀を振るう。もうかれこれ1時間は刀を振っているが一向に成長した気がしない。しかし俺はリッチなのでどれだけ刀を振っても疲れることは無い。そこら辺はかなり便利であると言えるだろう。
まぁ練習相手がいないからな。実感ができない。そこら辺は今度捕まえた人間相手に実験でもしようか。
死んだらゾンビにすればいいし無駄にはならない。
というか考えたら俺に刀の扱いを教えてくれる師匠的な存在が必要だと思うんだけど。
独学で刀を使えるようになる訳がないよな。でもそもそもこの世界に刀ってあるのか? 説明文にも地球を覗いて作ったって書いてあったしこの世界に刀は無いと考えた方がいいだろう。
じゃあやっぱり実戦で覚えていくしかないな。早速行ってみよう。
♢♢♢♢♢
「やぁドラゴンさん。こんにちは」
「……こんにちは神様。今日も実験?」
「まぁな。でも今日はスキルじゃなくて刀の練習だけどね」
「……そうなの? まぁでも見てみたい」
「じゃあ1人貰ってくよ」
そう言って人間達に目を向けると全員が既に気絶していた。恐らく俺が前回やったことが原因で恐怖が振り切れたのだろう。
まぁ俺が彼らの立場だったら同じように気絶すると思う。
中には失禁している人間もいる。
でも今回は俺と戦ってもらわないと実験にならない。
という訳なので強制的に起きてもらおうか。
とりあえずそれなりに強そうなやつに火球を叩きつける。威力はかなり手加減しているがそれでもかなり痛かったらしく男は悶絶していた。
「おはよう、早速だけどチャンスをやるよ。これから剣で俺と殺しあえ、もし勝てたらここから出してやるよ」
「何!? ……やってやるよ。俺はまだ死ねないんだ!」
そんなこと言われてもなぁ。元はと言えばこの世界のエネルギーを勝手に持ち出したお前ら人間が悪いんだから。
俺としてもせっかく手に入れた第2の人生を邪魔されたくない。
「ならとりあえず出てこい。話はそれからだ」
牢屋の鍵を開けると男はそこから出てきて俺を睨みつけた。
「剣をよこせ」
「分かってるよ。これでいいよな?」
事前に持ってきていた兵士達から没収した剣の1本を男に向かって投げ渡す。
男はそれを受け取ると鞘を投げ捨てて俺を鋭い眼光で睨む。
「約束は守ってもらうぞ!」
「ルールは魔法無しの剣のみでの殺し合い、俺が死んだら君を解放しよう。そして君が死んだらゾンビになって働いてもらう。さぁどうする? やるか?」
「……やるに決まってるだろ! 俺はあの国を、グランポス統一国を守るんだ!」
へぇ、あの国グランポス統一国っていう名前の国なのか。正直興味もなかったし報告にも上がってなかったから知らなかったなぁ。
「じゃあかかってこい」
「おおおぉぉぉぉぉぉぉ!!」
男は雄叫びとともに俺へと斬りかかってくるが俺は迎え撃つように刀を剣に振り下ろす。すると甲高い金属音と共に火花が散り、一時的に刀と剣が鍔迫り合う。
しかしそれは簡単に均衡を崩す。
徐々に男の剣が俺を押し始める。やはり使い方も分からないのに1時間刀を振っていただけでは上達などするはずがなく、呆気なく力負けしている。
そもそも骨しかない俺が刀を十全に扱うことが既に難しいことだったのだ。見るからに非力だからな。とはいえこの勝負に男の勝ちはないけどな。
生命力∞の俺に勝てるはずがないだろうに、この男はそれを知らずにもう少しで俺に勝てると勘違いして笑っているのだろうな。
「どうだ化け物め! 俺は貴様を殺して地上に出るぞ!」
そしてついに俺の刀が押し切られる。そして男の剣は俺の肩へと直撃する。
「勝ったぞ化け物ぉぉぉぉぉぉ!!!」
しかし男の剣はそれ以上進むこともなくそこでピタリと動かなくなる。そのことに怪訝そうな表情を浮かべると次の瞬間にはその顔を憤怒へと染め上げる。
「約束はどうした化け物! 魔法は使わないはずだろ!」
「使ってないが?」
「そんなはずがないだろうが! ならばなぜ俺の剣が通らない!」
そればかりは分からない。生命力=硬さだとでもいうのか?まぁこれも後でしっかり調べないとな。
そして俺は反撃とばかりに刀を振り下ろす。素人目に見てもかなり拙い剣だった。そして男に弾かれて再度斬りつけられる。しかし男の剣はまたしても俺を傷つけることはなかった。
「何でだよ! 何でだよちくしょォォォォォ!!」
男は剣を無茶苦茶に振り回す。俺はそれを何度か防ぐことに成功したがそれでもやはりかなりの数の剣撃が俺に当たる。しかしそれでも俺の身体が傷つくことはない。
そしてそのまましばらくするとなんとなく無茶苦茶な剣撃に慣れてきて、かなりの数を捌けるようになってきた。もはや避けられないのは10回に1回くらいか。
「ああああああああぁぁぁ!」
がむしゃらに剣を振っているがそれでは俺には当たることはない。
しかしこれはいいな。かなり練習になる。刀の振り方がだいぶ理解できてきた。
さっきまで男は弾いて斬る、という単純な動作を繰り返していた。
それくらいなら俺でもできるかもしれない。
という訳で実践しよう。
無茶苦茶に飛んでくる斬撃を弾いてそのまま返す刃で、男の胸を横一線に斬り裂く。
「ぁぁぁぁぁぁああああああああ!?!?」
激痛ゆえにか壮絶な悲鳴をあげる。
「隊長! しっかりしてください!」
「隊長ぉぉぉぉぉ!!」
あれ? こいつ隊長だったのか? ならこいつを倒せば他の騎士達の心を折ることができるかもしれないな。
今度は男の右腕を切り落とす。
「ぐぁぁぁぁぁああああっっ!!??」
腕と一緒に剣を落としたがまぁ正直どうでもいい。しかしそうだな、非常にうるさい。
のどを突き刺して横へと薙ぐ、すると当然首が中心から横へと斬り裂かれ、呼吸も満足にできない様子だった。
空気が漏れ出るようなか細い呼吸音が虚しく聞こえてくる。
そしてトドメに心臓を貫く。
男は血を吐いて己の身体を刀へと預けた。刀を抜くと大量の血を吹き出し倒れ込む。これなら多少刀を扱えたと言えるんじゃないだろうか。
「……神様、お疲れ」
「ん? あぁありがとう。まぁもっと上手く扱えるようにならないとね。という訳で実験を続行するぞ。次は誰がいい?」
そう聞くと兵士達は絶叫し命乞いを始めたが、俺は刀の練習をしたいだけであり俺の平穏を脅かす彼らのことを考慮するつもりは一切ないのだが……
まぁやる気になってくれるならいくらでも脅すし、偽りの希望も見せてやろう。俺は本来平穏に暮らせればそれでいいのだから。
じゃあ実験を続けようか。
さらに刀を構えると絶叫が大きくなるがそれと対称的に刀が喜んでいるような気がした。