永遠を求める者
今回はジンでもシア視点でもありません。
そこを理解してお読みください。
「はぁ……全くハズレくじを引かされたなぁ」
「そう言うなよソロモンのおっさん。上手く行けば美味しい仕事じゃねぇか」
とある1団が開拓のために街へと移動していた。皆一様に顔を引き締める中、3人の男はダラダラと物見遊山のように歩いていた。
そしてソロモンと呼ばれた男は髭を生やし、灰色の杖を持った一目で魔法使いだと分かるものだった。
「しかしのぉダグラスよ。儂はもう歳じゃぞ? このような重労働は流石に堪えるわい。それに儂の専門は不老不死についてじゃ、このような護衛などには向いてないのじゃがのぉ」
「不老に不死人間か……そんなものが本当に存在するのかねぇ」
「見つけてみせるとも、それは儂の悲願なのだから」
そう語る老人の瞳からは確固たる意思が感じられた。
「……枯渇病だったか?」
「……あぁその通りじゃ。儂はなんとしても枯渇病の治療法を見つけなくてはならないのじゃ」
枯渇病は魔力を扱うことはできるが自分の力で魔力を生成することができないという魔法使いにとっては致命的とも言える病気だ。老人、ソロモンはその枯渇病にかかっておりその実力は今や衰退するばかり。
しかしソロモンは全く諦めてはいなかった。今まで一切の治療法が見つかっていない枯渇病は、魔石などから魔力を直接摂取することで魔力を補うことが唯一の対策となっている。
だが残念なことにそれでは全く足りない。ソロモンは若い頃天才と言われたほどの才能を持っていた。
しかし30歳で枯渇病を発症。この病気の恐ろしところは前触れなどの前兆が一切ないことだ。
それからソロモンは堕ちた天才なんていう蔑称で呼ばれるようになる。まぁその名で呼んだ者は1人残らずソロモンが殺している。
ソロモンはそれから自らの枯渇病をなんとか治療しようと躍起になるが分かったことと言えば発症時期は総じて30代であることだけ。
だがソロモンは根気強く研究を続けた。しかしそれ以上のことは分からず研究は行き詰まる。
常人ならばここで諦めるのだろう。しかしソロモンはとびきり諦めが悪かった。ソロモンは枯渇病の治療法の発見には長い時間が必要になることを悟り、そして当然のようにその時間を欲した。
いくつか方法を思いついたがその中でも比較的簡単だと判断したのが不老不死。
常人が聞けば呆れるか鼻で笑うかの2択だがソロモンはどこまでも本気だった。
ならばどうやるのかと聞かれることは多々あったがソロモンは全く答えなかった。
その様子に人々はやはり老人の戯言だったと彼から離れていったが実際はそうではない。
ソロモンは不老不死への到達方法を見つけていた。
しかしその方法故に言えば確実に邪魔が入ると弟子や家族にすらも秘匿していた。
まぁそれは問題視していない。ソロモンにとって弟子は都合のいい道具であり家族は自分の才能を引き継がせるための装置に過ぎないのだから。
「全くソロモンのおっさんも不幸だよなぁ。まさか俺達があの“帰らずの森“に連れ出されるなんてよ」
「全くじゃ。なにも儂らでなくともよかったじゃろうに……」
これは紛れもなくソロモンの本心である。“帰らずの森“に行った調査隊がほとんど全滅したことは今では誰もが知っている。だから皆が噂するのだ。あの森には恐ろしい悪魔がいると。
これからそこに連れていかれるのかと思うと気が気じゃない。
いっそのこと投げ出してしまおうかとも思ったがこの仕事を達成したなら不老不死の研究の研究費を出してやると言われている。
まぁそれならばと承諾したが今となっては後悔している。
「はっ! ビビってんのかお前ら? ならそこら辺で震えてろよ。この仕事はこのモーガン様がしっかりこなしてやるからよ!」
「……あぁ? 若いのがあんまり調子に乗んなよ? 捻り潰すぞ?」
「……何だと? もういっぺん言ってみろよジジイ」
ライオスともう1人の金髪の青年が睨み合う。モーガンは若くして剣の天才と呼ばれているがその素行に問題ありと言われている。それさえなければ完璧だとも言われているが彼はそれを才能を持たない者の僻みだと気にもとめない。
本当にこのチームで大丈夫なのか? まぁいざとなればこの2人を殺してでも……
だが彼らは知らない。自分達が自ら地獄へと歩いていることに。
自らの行動がとある者達を激怒させているなどと想像してもいなかった。蹂躙の時は近い。
明日もこの時間に投稿します!