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地獄の予兆 6

今回のが終わったら主人公に戻ります。

目を開ける。どうやら俺は眠っていたらしい。傍らには変わらず妹の死骸が転がっている。エルドはこのことを知っていたはずだ。

知っていて俺をここに連れてきた。悪趣味なやつだな。……もしリーリアを殺したのがあいつなら俺はエルドを許すことはないだろう。


だがもし違うならエルドには感謝しなければならない。こうしてリーリアに合わせてくれたのだから。一応の感謝はしなければならないな。


……さぁ戻ろう。シアが待っている。妹を、リーリアを取り戻すためにシアの父親に合わなくては。

シアの記憶を見た時にシアの父親についても少し見えた。シアの父親、神に言われて世界の救済を命じられて死を超越した存在。

魔物という神罰の代行者を生み出した奇跡の王。

彼ならばきっと、リーリアを救ってくれるだろう。そうであってくれなくては困る。だってそうじゃないとリーリアはここで終わることになってしまう。

リーリアはまだ7歳、なのにこんな終わり方は悲しすぎる。

人間の終わり方には意味があるべきなのだ。俺はこの意味のない死を認めない。理由と意味と大義があってこその死。それがないものを死とは認められない。認めてたまるものか。だってそれはリーリアの存在を否定するのと同じだ。

俺にとってはリーリアが全て、他はどうでもいい。

貧民街(スラム)では油断したやつから死んでいく。殺し合いと病が蔓延する最悪の場所。だがそんな場所にも秩序はある。

だが意味のない死は世界に蔓延している。ならば俺はそれをなくそう。子供の妄言に聞こえるかもしれないが俺は本気だ。リーリアに死は早すぎる。

だから俺はそれを覆そう。それがきっと正しいのだから。


「やぁ元気かねギンくん?」


「……エルドか。俺に何か用か?」


いつの間にか階段のところにエルドが笑みを浮かべて立っていた。吸血鬼になって強化された俺の感覚を無視してだ。はっきり言って異常なことだ。


だがなぜかこの男なら納得できてしまう。不思議なことだがこの男はそう思わせる独特な雰囲気を持っている。


「まぁね。……どうやらそれが君の妹だったのかな?」


「あぁそうだが……分かってなかったのか?」


「これだけ死体が合ったらどれが君の妹かなんて分からないさ」


確かにこの地下室には大量の死体がゴロゴロと転がっている。この状況ならどれが誰の死体かなんて分かるはずがないか。


「まぁここに来たのは君にお客さんを連れてきたからだよ」


「客? 俺に?」


「元気かしらギン?」


「ッ! シア!? どうしてここに?」


「結末を見届けに来たのよ。……そう、それがあなたの妹なのね?」


「あぁそうだよ。これが俺の妹だ……なぁシア、1つだけ頼みがあるんだ」


「何かしら? 実はかなり機嫌がいいからなんでも聞いてあげるわよ?」


「シアの父親ならリーリアを生き返らせるか?」


「……なるほどねぇ、まぁそれなりに犠牲と時間がかかるけどお父様ならできる気がするわね」


「……確証はあるのか?」


「ないわよ? でもお父様ならきっとできるわ」


「そうか……なぁシア」


「なぁに?」


シアはにっこりと微笑んでギンの言葉を待つ。その笑顔はまるで全てを分かっているのだと言いたげに見える。いや、シアなら分かっているのかもしれない。

だが俺にはもうこの手しかない。


「なんでも言うことを聞く、だからリーリアを生き返らせてくれ」


「……いいでしょう。お父様には私から伝えてあげるわ。これからよろしくね、ギン?」


「あぁ頼む」


これが悪魔との取引だとは分かっている。なにせ俺からそうなるような条件を提示したのだから。だが後悔はしていない。

だってこれがリーリアを幸せにするための最良の手段なのだから。


「……安心しなさい、お父様に従うなら悪いようにはしないわ」


その言葉を信じるしかない。


「ふむ、ではシア殿? 私の件もお願いしますよ?」


「えぇ任せておきなさい。上手くやるわ」


「エルドがどうかしたのか?」


「あぁ彼は人間を裏切って私達につくそうよ。かなり面白いしお父様に逆らえないように色々と制限はつけるけどね?」


「まぁそれはしょうがない。なにせ私は完全な部外者。信用しろというほうが難しいだろうからね」


「まぁそういうわけだから準備しなさい。そろそろ人間達が森に来る頃だからね」


あぁそう言えばそうだったな。忘れていた。だが俺にとってそれはかなりの大仕事になるだろう。だがそれでもやるのだ。俺は全てをシアに、そしてシアの父親に預けたのだから。


まぁ俺にできることなんてたかが知れてる。せいぜいがシアの援護だろう。


あぁだがやっぱり人間なんて大っ嫌いだ。あいつらを殺すなんて今では全く心が痛まない。


今の俺をリーリアが見たらなんと言うだろうか? 軽蔑でもされるのだろうか? それとも優しく慰めてくれるのだろうか? 俺には分からない。


だが俺は止まらない。

リーリアのために突き進む。それだけだ。








ギンくんは若干ブラックに染っちゃった。

最初はこんな予定なかったんだけどなぁ。


明日もこの時間に投稿します!

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