潜入はお手の物
ちなみにフロンはお姉ちゃん大好きっ子です。(ここ重要)
「支配の魔眼は受け継げなかったか……まぁ霧化は受け継げたしいいか」
支配の魔眼が受け継がれなかったからか少し残念そうにしているが吸血鬼になった時点で確実にギンの妹を助けることをできるだろう。
「じゃああなたの妹は早く救出しないとね。私達に巻き込まれて殺されかねないわ」
「あ~そりゃあそうだよな。人間達が森に攻め込んだら反撃はするよな」
その発言からギンが精神的にもこっち側についていることが分かる。初めての眷属に離反されたら地味にショックだったので私としてはとても嬉しい。
あとはフロンをどう説得するかだが……フロンはお父様の役に立つからと言えばなんだかんだ納得してくれると思う。
「3日で吸血鬼としての力を使いこなしなさい。使えない力ほど邪魔なものはないわ。もしできないようなら私だけで妹を救出してあげるけど?」
少し挑発的に聞いてみると即座に瞳をやる気に輝かせ立ち上がった。
「待ってろよ! すぐに使いこなしてやるからな!」
「血を飲むことにも慣れておきなさい。まぁ吸血鬼になったから血は美味しく感じると思うけどね。あと鍛練は地下でやりなさい」
「分かった! ありがとな!」
そう言うとギンはドタドタと足音を屋敷に響かせてどこかへ走っていった。
まだ地下室の位置も教えてないのだけれど……まぁ使用人に聞けば分かるし大丈夫でしょう。
「……もう行ったわよ。いい加減出てきたら?」
「…………」
フロンが天井の隙間から霧になって出てきた。
ずっと天井裏にいたのは気配で分かっていたがフロンの気持ちを察してスルーしていた。とはいえ流石にもういいだろう。
そう思って声を掛けたがその顔には明確に不機嫌の色がはっきりと刻まれていた。
「……本当に眷属にしたんだね」
「まぁね、面白そうだったしきっとお父様のお役にも立てることでしょう」
「……私も眷属候補探して来ようかな」
「ふふっ行ってらっしゃい」
フロンは再度霧になり窓から飛び出し夜の街へと消えていく。
相変わらず素直じゃないんだから。
羨ましくなったから私も眷属が欲しいと言えば言いのに。まぁ素直じゃないところも可愛いからいいのだけれど。
それより私はお父様に情報を伝えなくては。この情報があればある程度は役に立つだろう。
しかしまぁ裏は取らなくてはならない。
私はギンから情報を聞いただけ。ギンに嘘を伝えたつもりがなくてもどこか情報に違うところがあるとのちのち大変なことになりかねない。
そういったことは避けていこう。
私はとにかく情報が聞き出せそうな領主の屋敷へと向かった。
領主の屋敷に到着するとたまたま空いていた窓からするりと入り込み周囲を探索する。するとメイドがこっちに向かって歩いて来るのが見えた。
なので気付かれないように天井に近づいてやり過ごす。ここは屋敷の中、霧が発生するはずがないので怪しまれないようになるべく人間には近づかない方がいいかもしれない。
メイドが通り過ぎるのを待ってから入れ替わる形で移動する。
……と思っていたがこのメイドを支配してしまえば色々と便利かもしれない。この屋敷のメイドなら色々と知ってることもあるかもしれない。
うん、そうしよう。
霧化を解除してメイドの背後にふわりと着地する。
「ねぇ領主の部屋はどこ?」
「え!? 誰!?」
私の方を振り向いてそう言った。
まぁつまりは私と目を合わせてしまったというわけである。
目を合わせたメイドの瞳が一瞬紅く輝きまるで石像になったかのように動きを停止させた。
その結果に満足してメイドに質問を開始する。
「領主の部屋はどこ?」
「2階の一番奥の部屋にあります」
「そう、ありがとう。じゃあ私を見なかったことにして普段通りに仕事をしなさい」
「はい」
私の命令に従って仕事を再開する。
今更だが私の支配の魔眼はかなり便利なスキルだと思う。瞳さえ合わせればいくらでも便利な奴隷を確保することができてしまう。
そしてメイドの言う通りに2階の一番奥の部屋にたどり着くと中から人の気配を感知することができた。恐らくこれが領主なのだろう。
まぁとりあえずこの領主を支配しよう。
扉の隙間から侵入しそのまま領主の背後に周り霧化を解除する。背後に私が現れたことに気が付いていない。
「初めまして」
「な!? 誰だ貴様!」
声を掛けたことでようやく私の存在に気が付いたのか魔力を急激に手に収束させ出した。
しかし振り向いたことにより私と目が合い一瞬にして支配下に置かれた。
「ふふっ、あなたには色々と聞きたいことがあるの。答えてもらうわよ?」
「はい、なんなりとお聞きください」
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