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シャーリーの過去と少女達の食事

小説は作業になったら終わりだと思う。

「なるほど、そういうことだったんですね……」


シャーリーに俺の事情を説明すると非常に申し訳なさそうな顔をした。

俺が異世界から女神に連れてこられたということは説明した。

その経緯もしっかりと。

ちなみにシア達魔族も俺の事情は知っている。

というか作った瞬間には知ってた。

やっぱり意思があると色々と特殊なのかな?


「……あの」


「? どうしたの?」


「そう言えばご主人様の名前を聞いていなかったなぁと思いまして……」


あぁそう言えば俺の名前を言ってなかったな。

まぁ名前を知らないと不便だしね。


「ジン、ジン・カミサトだよ。よろしくね」


「ジン様ですね! よろしくお願いします!」


……本当にどうしてこうも好感度高いんだろう。

いやまぁ何となく分かるよ?

奴隷とかいう絶望的な立場から解放して、一応人間として扱ってるし名前も付けた。

そりゃあ懐かれもするだろう。

しかしこのここまでの反応は完全に予想外。


「まぁそういう訳だからもし人間達がここに来るとまだ色々と準備もしてないからちょっと困るんだよねぇ」


「そうですか……それでどうするんですか?」


「まぁ捕まえるかな。そうしないと女神様のお仕事がこなしにくいし」


これでシャーリーがどう反応するのか。

反対するようなら……流石に情がわいてしまったので殺しはしないが奴隷には戻ってもらおう。


「分かりました! 何か手伝えることはありませんか?」


……あれ? 案外あっさりだな。


「……いいの?」


「構いません、ジン様がこの世界に来る原因も人間だったんですよね? しかも女神様に見捨てられるような人間に思うところはありません。それに私はもうジン様の物です。ジン様の命令に従います」


「親とかは心配じゃないの?」


「……私は親に売られて奴隷になったので」


「……どういうこと?」


そう言えばシャーリーが奴隷になった経緯は一切聞いていなかったな。

しかもその理由がかなり闇深そう。


「……詳しく聞いてもいい?」


「……はい、この世界では私のこの肌は悪魔が取り憑いていると言われています。その証拠のように私は魔力を扱えるのです。それがきっかけで私は実の両親に奴隷として売られたのです」


……想像よりずっと重かったんだけど。

それに悪魔ね。

残念ながらこの世界に悪魔はまだ存在しない。

いつかは作ろうとは思ってはいたがまだ作ってはないのだ。

シャーリーが魔力を操れるのは恐らく純粋に才能だろう。

見た目とたまたまあった才能のせいでその身を奴隷まで堕とすことになった。

運が悪かったと言えばそこまでだがこれは流石にあんまりだろう。


「なるほどねぇ、そりゃあ辛かっただろうに」


「えぇ最初はとても辛かったです。夜の奉仕のやり方から教えられて、なぜ教えられてもいないのに魔法が扱えるのか調べるために大量の薬を投与されたり、もう散々でした」


「……そっかぁ、こんなに可愛いのに酷いことするね」


「か、可愛いっ!?」


顔を耳まで真っ赤に染めて照れている。

なんかこうからかいたくなる雰囲気がシャーリーにはあるな。


「……ゴホン、まぁそういうことなのでもう2度と奴隷にはなりたくないのです」


「なるほどね、……そうだ! シャーリーがいた所の奴隷商人の名前とか分かる?」


「え? えっと、商人の名前は分かりませんけど商会の名前は覚えてます。確かジランド商会っていう商会でした」


ジランド商会ね。

しっかりと覚えておこう。

というか積極的に探して潰す。


「……ありがとうございます」


俺が何をしようとしているのか察したのか嬉しそうに頭を下げる。

まぁ俺がやりたいだけなのだ。

別に気にしなくてもいいのに。


まぁ感謝されて嫌なわけじゃないからいいけどね。

というか嬉しいし。

前世では何かやって感謝されるなんて妹以外にはいなかった。

なんとなく頭を撫でてあげると嬉しそうに笑うのだった。







「ただいま~」


屋敷の扉を開けてフロンがいるであろう2階の部屋に行く。

するとそこには予想通りフロンがベッドに腰掛けて本を読んでいた。


「おかえり、どうだった?」


読んでいた本をパタンと閉じてシアの方を向く。

どこで手に入れたのかメガネを掛けていた。

どことなく知的に見えるなと思いながらシアは返事を返す。


「あの子のことならお父様が引き取ったわよ。名前も付けてもらったわ。シャーリーっていう名前になったわ」


「ふーん、まぁそれはいいや。それよりもお父様は何か言ってた?」


フロンはあくまでシャーリーに興味がないらしくジンの命令を聞く。

シアも特に興味が無いならまぁいいかとジンからの命令を伝える。


「森に人間共が来るのがいつなのか詳しく調べて欲しいそうよ」


「……私達だけでも殲滅できるよ?」


「お父様の仕事を忘れたの? お父様の仕事はこの世界からエネルギーを奪い続ける人間共を止めること、別に殺すことじゃないのよ」


「殺した方が早いと思うけどなぁ」


「お父様は元々は人間なのよ。割り切れなくても仕方が無いわ」


娘に心理状態を分析されるジンであった。

事実ジンはまだあまり割り切れてはいない。

リッチになったことで人の死にも殺すことにもあまり何も思わなくはなったが完全ではない。

ジンは自分の居場所を守ろうとしているのであり女神の仕事はついでくらいに考えている。

まぁ故に自分の今の居場所であるダンジョンのある森を守ろうとしているのだが本人ですら気が付いてはいない。


「……そういうものなの?」


「そういうものよ」


「ふーん」と納得しているフロンの傍には()()()()()()()()()()()()()()()()


「この人間共は?」


「暇になったから支配の魔眼で連れてきた。まだ血は飲んでないけど眠ってもらってる。飲み比べしよう?」


こてんと首を傾げて言うフロンはとても可愛らしく見えるがその内容は人間の血を飲もうという猟奇的なセリフである。


「いいわね。なんだかんだ初めての食事だわ」


「いつもお父様が料理を用意してくれるけど別に私達の食料は人間の血だからね。別に必要ないけどまぁ美味しいし」


「そうなのよねぇ、お父様の料理はとても美味しいからついつい食べてしまうわ」


ジンが料理が上手い理由は既に両親は他界しており少しでも自分のできることを増やそうと頑張った結果である。


「じゃあ早速いただきましょうか」


そう言うとシアは転がっている人間達の1人に近づく。

そして片手で服を掴んでヒョイっと持ち上げる。

持ち上げたのは10歳前後の少年である。

そして唐突に首筋に牙を突き立てる。

そのまま血を吸い上げる。

気がつけば少年はカラカラに干からびていた。

おっと、どうやら血を吸いすぎたらしい。

加減を間違えて殺してしまったようだ。

気をつけなくては、彼らは貴重な食料()なのだから。

ふとフロンを見るとフロンも加減を間違えたのかそこには恐らく()()()()()()()()と辛うじて分かる死体があった。


「……どうだった?」


「……とても美味しかったわ。えぇ、抑えが効かないくらいには」


そう言ってシアは次の人間へと手を伸ばす。

それはどこか華美な服を着込んだ女だった。

きっと貴族か何かの娘なのかもしれない。

まぁどうでもいいことだ。

今はこの人間達の血液を貪るべきだろう。


それから小さな少女達の食事(吸血)は夜更けまで続いた。









次回もこの時間に投稿します。

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