奴隷少女の名前
書くのだのじぃぃぃぃイイ!
「落ち着いた?」
「ひっく……はい……すみません……」
余程嬉しかったのか数分間泣き続けた少女の目は真っ赤に染まっていた。
「まぁ色々とあったんだろうけどそれは後でね。シアから色々と詳しく聞かないとね」
「はい……大丈夫です。本当にありがとうございます」
少女は瞳を潤ませて頬を上気させていた。
あれぇ? この反応は予想外なんだけど?
すっと立ち上がった少女は部屋の壁際に移動する。
色々と気になることはあるけどまぁいいか。
「とりあえず聞きたいのは奴隷ってどういうこと?」
「何か統一戦争とかいう戦争の負けた国の国民を奴隷にしているらしいわ。奴隷になると自由意志も名前も人権も無くなるんですって」
「……そりゃあまた」
人間って世界が違ってもやることは変わらないのか。
しかもこの世界には魔法というあの世界にない手段もある。
もうなんというか救いようがないな。
彼女を助けたのは正解かもしれない。
「……まぁそれで、いつ来るかとかは分かる?」
「まだ分からないわ。ただこの森が王子とかいうやつに狙われているらしいってことをシャドウキャットから聞いたの」
王子か……ほんとにめんどくさいなぁ。
そいつにこの森を荒らされると色々と困る。
一応神様にはこの世界のことを任されたしな。
「じゃあさっき作った獣人の出番かな。森の中ならかなり強いと思うよ」
「流石ねお父様!」
もうここまで忠誠心があると何言っても肯定されそうな気がする。
まぁ今回凄いのは獣人達だと思うのだがわざわざ言わなくてもいいだろう。
長くなるし。
「じゃあそういうことだから頼めるかな?」
「任せてください! 我らが見事人間共を捕まえてみせましょう!」
狼人族の青年がそう宣言する。
確かに狼人族と熊人族は多少好戦的に設定してけどここまでとは予想してなかった。
魔族を作ると意思があるせいか多少俺の想像と誤差があるのかな?
グレヴィルとかまさにそれだよね。
「シア達が出かけてる間に新しい魔族を何体か作ったんだけどね。獣人はその内の一種なんだよ」
「そうだったのね。じゃあ他の子にも今度会ってみたいわ」
「それがいいね」
そう言ってから俺は視線を部屋の壁際にいる少女に向ける。
まだ名前を付けてなかったからね。
さてどういう名前がいいのか。
魔物に名前を付ける経験はそれなりにあるけど人間の少女に名前を付けたことはない。
「……名前に希望とかある?」
「……あなたに付けて欲しいです。……駄目ですか?」
涙目で上目遣い、とても可愛く見えるのはなぜなのだろうか?
というかこの短時間でかなり懐かれたな。
しかしこの子に似合う名前か……
色々と考える。
そして数10秒経ってようやく納得のいく名前を思いつく。
「『シャーリー』なんてどうかな?」
白い草原を意味する言葉だが彼女の純粋さにこの名前が相応しいと思った。
「シャーリー……ありがとうございますっ! ずっと大事にします!」
「名前を大事にするって分からんけどね。まぁ気に入ってくれたならよかったよ」
シャーリーは嬉しかったのか瞳をキラキラと光らせて俺の手を握る。
シアの瞳がギラリと輝くが俺が視線で押し留める。
シアは不満そうではあったが見守ることにしてくれたようだ。
というかシャーリー、もう俺の見た目に慣れたのか?
いや、これは嬉しさで全く気になってないだけか。
早く慣れてもらおう。
「じゃあシャーリーはこの後色々と説明するから覚えてね。シアは1度フロン達の所に戻ってもう少し詳しい情報を調べて欲しい。獣人達は戦闘の準備を、あぁそう言えば狐人族はもう魔法は使える?」
俺がそう聞くと和服を着た狐耳の美女が前に出て答える。
ちなみに獣人達も最初は全裸で現れた。
まぁ服を着るように指示すると魔力を集めて服を作ったのだがベースになる動物によって服の種類が変わるのは興味深い。
「うちは今見てたので使えます」
「分かった。じゃあそろそろシアは食事も必要だろう? 行っておいで」
「分かったわお父様」
そう言ってシアは霧になった。
相変わらず便利な能力だよな。
「霧になれるなんて凄い魔法ですね……羨ましいです」
あ~まぁ魔法に見えるよなぁ。
気持ちは凄い分かる。
「あれは魔法じゃないけどね」
「え? でも今霧に……」
「まぁその説明は後でね。じゃあとりあえず森に出て慣れておいてくれ」
「「「「「はいっ!」」」」」
その返事を聞いて獣人達を1回層に移動させる。
「また消えました!」
「まぁ初めて見たら驚くか……じゃあ説明しようか。まずは俺の立場から……」
こうして1度目の悲劇は近づいてくる。
人間達の終わりと始まりはもうすぐそこまで来ている。
シャーリーちゃん可愛い(シャーリーちゃん可愛い)
明日もこの時間投稿します。