プロローグ
新作です!
今回も駄作臭が臭いますが楽しんでいってください!
……は?
目の前にあるのは岩の壁と青白く輝き宙に浮かぶ水晶だった。
俺はさっきまで屋上にいたのに。
何故ここに?
意味がわからない。
「呼ばれてないけどジャジャジャジャーン!」
いつの間にか銀髪で薄い青色のワンピースを着た少女がいた。
かなりハイテンションだな。
「大丈夫? お姉さんの名前わかる?」
自分を指差しながら少女が微笑む。
「いや分かるわけないだろ。初対面だし」
「ざんね〜ん! 初対面じゃないんだよねぇ」
「知ってるか? お互いに会ったことの無い相手同士は初対面って言うんだぞ?」
「知ってるわ! 舐めんな!」
ぎゃあぎゃあうるさいなぁ。
でも反応が楽しいからまぁいいや。
「うーん転生のショックで記憶が飛んでるのかな? まぁ話進まないから思い出してね!」
そう言って少女は俺の頭に手を当てる。
あれ? でも感触がないな?
なんでだろう?
というか今こいつ転生って言ったか? 割と病院に連れていった方がいいんじゃ……
そこまで考えたが突然やってきた尋常じゃない頭痛に思考を中断することになった。
「痛ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
あぁ思い出した。
俺は……
♢♢♢♢♢
「上里! 一体何度言ったら仕事を覚えるんだ!」
「……すみません」
「同じ時期に入ったやつはしっかりとやってるぞ! なんでお前だけできないんだよ!」
周りからくすくすと笑う声が聞こえてくる。
俺こと上里 仁は大学を出てすぐに会社に就職した。
しかしそこがとんでもなくブラック企業で2、3日帰れないこともザラだった。
そして俺は運悪く上司に目を付けられて仕事を大量に押し付けられる日々。
結果としてまだ仕事に慣れてない新入社員とは思えない大量の仕事。
それによるミスの連発。
俺は既に使えないやつというレッテルを貼られていた。
「もういい! 邪魔だ! さっさと仕事に戻れ!」
蚊を追い払うように部屋を追い出される。
周りからの侮蔑の視線が突き刺さる。
時計を見ると既に8時を回っていた。
流石にこのまま仕事をやる気は起きないな……
コーヒーでも買うか。
廊下にある自販機に金を入れてブラックコーヒーを購入する。
そのまま屋上に上がりカシュッと音を立ててコーヒーを開ける。
あぁなんでこんな目に……
部下に仕事を押し付けて合コンに行くクソ上司、分かっていながらそれを見て笑う同僚。
はぁ……もう辞めようかな……
でもまだ入ってから2ヶ月も経ってない。
ここで辞めたら次の就職に響く予感しかしない。
世の中うまくいかないなぁ。
まぁとにかく今日を乗り切ろうかな。
コーヒーを捨てるためにゴミ箱に向かって歩き出した瞬間。
ブチッっなにかが切れる音が聞こえた。
疑問に思う間もなくドッっと前のめりに倒れ込む。
あ、これやばい。
ほんとにクソみたいな人生だったな……桜、ごめんな……
「ほら起きろ! 仕事の時間だよ!」
……あれ? おかしいな。
今の流れは確実に死ぬ流れだったと思うんだけど。
でも眠いし……仕事とか言ってるし。
起きたくないなぁ。
「起きろって言ってんでしょ!」
耳元で叫ばれたことにより図らずもはね起きることとなってしまった。ちくしょう。
「やっと起きたか! 全くさっさと起きろってのに……」
そこには銀髪の長い髪を真っ直ぐ腰まで伸ばし、薄い青色のワンピースを着た幼女と言ってもなにも問題ない少女がいた。
そしていつの間にかなにもない真っ白な空間にいた。
「まぁ理解できないだと思うけどあなたは死にました! ご愁傷さまです!」
ビシッという擬音が聞こえそうなほど見事な敬礼をする。
……なんだろう、とても残念な子感が半端ない。
「誰が残念な子か!」
痛った! え? なにこいつ、子供とは思えない力で殴られたんだが?
「子供じゃねぇよ! 私はあんたより年上だからだから!」
「……へーそうなんだー凄いねー」
「棒読みやめろ! 全くほんとにこいつで大丈夫か?」
「こらこら、目上の人に対してこいつはないだろう?」
「私の方が目上だわ!」
肩で息をする銀髪の少女とそれを見下ろす男。
はたから見たらやばいのでは?
面白いからつい弄ってしまう。
「はぁ……はぁ……もういいや、話を進めるよ?」
「あぁそうしてくれ。ここは一体どこなんだ?」
「ここ? あの世的な場所だと思ってくれていいよ」
「は? あの世って……」
やっぱりこの子病院に連れて行ったほうがいいと思う。
頭の。
「そこ! 失礼なこと考えない!」
別になにを考えようと俺の自由だと思うんだが……ってちょっと待て。
俺がいつ口に出した?
「声には出してないよ。勝手に心を読んだだけだから」
………え?
今なんて?
「だから! 心を読んだの! 1回で理解しなさいよ!」
……生麦生米生卵。
「いきなり早口言葉とか頭大丈夫?」
あぁこれまじもんだわ。
当てずっぽうで当たるわけないし。
ということは俺は既に死んだのか。
……そうだ!
「桜はどうなった!」
「あぁ妹さん? 親戚の家に引き取られることになるそうだよ」
あぁよかった。
桜はこの間高校生になったばかりの俺の妹だ。俺達の両親は幼い頃に事故で死んでしまった。それからはおじさんに引き取られそこで今まで生活していた。
俺が就職してからは俺は一人暮らしだったが凛はおじさんの家で今でも暮らしている。
最初は俺に着いていくとごねていたがせめて生活が安定してからと、それまではおじさんの家でお世話になることになった。
「落ち着いたかな? じゃあ自己紹介でもしようか。私の名前は◼◼◼◼◼。よろしくね」
「は?」
なんだ今の。
そこだけ声にノイズがかかったように聞こえなかったぞ。
「あぁごめんごめん! 人間の君には聞こえなかったね。えっと私の名前はアテルナ! これで聞こえた?」
「あ、あぁ聞こえたよ。それであんたは何者なんだ? 俺になんの用がある?」
「私はとある世界を管理する神様で君にやって欲しいことは転生だね」
「神様……転生?
「いやぁ実はね? 私が管理してる世界が造ってまだ100年ちょっとなのにもう滅びかけててさ。まぁ地球と同じで知的生命体は人間しかいないんだけどさ。でも違うのは魔法があることなんだよね。それでついこの間大きな戦争が起こってね、結果として全ての国がひとつの国になるっていうことによりなってね。それは別にいいんだよ。私達神の役目は世界の維持。気に入ったやつは加護を上げたりするけど人間そのものには興味ないんだよね。問題だったのは世界にエネルギーを勝手に持ち出したことなんだよ。世界のエネルギーだよ? 当然このままだと世界が滅ぶからこれ以上持ち出すなって言ったのに無視するからさぁ。このままじゃ不味いってことでなんとかしようと思ってね。で、どうしようか考えてたら君の世界を見つけちゃってさ、その時に読んだえっと、ラノベだっけ? あれに出てくる魔物とかいいなぁとか思ったわけ。でも楽しかったけど自分でやるのは難しそうだったから君の世界の誰かに頼もうと思って、ちょうどその時に君が死んじゃってさ。これはいけると思ってここに連れてきました!」
なるほど。
確かに納得できる。
でもひとつ言わせてくれ。
「説明がなげぇんだよ! 簡潔にまとめてから喋れ!」
「ひゃい!? え〜と……まぁつまり私の世界の人間が調子に乗り過ぎたからお灸を据えたくて君を呼んだ! 魔物とか亜人とかも面白そうだし君もラノベとか好きだったでしょ? まぁそういうのを作れるようにしてあげるから世界を救って欲しいんだよ! とはいえ何事もバランスは大事だよ? 人間が滅びるとそれはそれで面倒だからね。まぁバランス保った上で滅びるならそれはしょうがないね。人間が弱すぎたってことで」
キラキラと期待たっぷりの目を俺に向けてくる。
まぁこうしてここにいられるのもこいつのおかげだしなぁ。
というか俺も自己中は嫌いだ。
まぁいいか。
「ありがとう!」
「心を読むな! まぁでも条件がある」
「条件? いいけど内容次第かな」
こてんと可愛らしく首をかしげる。
あざといな。
「転生特典ください。せっかく異世界行くんだから楽しみたい」
そういうとアテルナはニッコリと笑い頷いた。
「3つまでならいいよ! なにが欲しい?」
意外と叶えてくれるな。
じゃあ遠慮なく。
「まず不老不死で」
「お! いいね! 割と定番。次は?」
「魔法が使えるようにして下さい」
「だよねぇ。いいよ。最後は?」
最後の願いは決まっている。
「桜をお願いします!」
「へ……?」
「桜には色々苦労をかけましたから。もう幸せになって欲しいんですよ」
そういうとアテルナはふっと柔らかい笑顔を浮かべた。
「任せておいてよ。じゃあ私の世界をお願いね」
「分かった。本当にありがとう!」
「気にしないで。お互い様だし」
そこで俺の身体が光の粒になって薄れ始めた。
少し怖かったが何故か大丈夫だろうと理解できた。
♢♢♢♢♢
「思い出したかい?」
「えぇ思い出しました」
俺は死んだ。
しかし生き返ったのだ。
今はもう感謝しかない。
「じゃあ頑張ってね! ちなみに死なない身体を1から作ることはできなかったから君の死体を利用させてもらったよ! じゃあダンジョン運営頑張ってね!」
……は?
そこで気がつく。
今の俺の身体に。
なんと骨だけだったのだ!
「ちょっと待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「ぐえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
襟をひっつかんで引き留める。
「ダンジョンとか聞いてないぞ! というかなんだこの身体は! 説明していけ!」
「分かったから離してぇ!? 中身出ちゃうから!」
こうして俺の波乱万丈な2回目の人生が幕を開けてしまった。