十一月一日は色々ある日。
「相馬君。今日は紅茶の日らしいのですが、寿司の日でもあるらしいのですよ。あと、わんわんわんという事で犬の日でもあるらしいです」
「ふーん」
陽菜が張り切って淹れてくれた紅茶が美味しくて、上の空の反応になってしまった。
台所を覗いてみれば、乃安が酢飯の準備をしている。
「紅茶と寿司が合わないのが残念な所だな。寿司にはやはり緑茶だろう」
「そうですね……ところで、何で寿司の日なのですかね」
「……確かに……寿司。すーしー。花金座銀でシース―?」
「古い言い回しを知っていますね」
「……わからんな」
陽菜のふとした疑問が頭に引っかかって離れない。
何故だ。
「何かお悩みですか?」
乃安が台所から出てきた。
「何故今日が寿司の日かって、乃安は知ってる?」
「知りませんね。日本人らしく語呂合わせ……何も思いつきませんね」
十一月一日、寿司。どうにも繋がらない。
気が付けば腕を組んでうんうん唸っていた。陽菜も、テーブルを拭く手がどこか疎かに、乃安も少し手際が悪くなっている。
ここで答えを出さなければ、どうしたものか。
さっきまで勉強に使っていたノートを開いて、十一月一日と書いてみる。
「……ん?」
その下に、寿司と書いてみる。
「んん?!」
あれ、これ、もしや。
「おぉ! これは!」
「何かわかったのですか? 相馬君!}
「十一月一日を分解して組みなおすと、寿司になるんだよ、これ」
「……本当ですね! 大発見です。なるほど、これが由来ですか」
「そうですね、しっくりきます」
二人にも納得してもらえた。
あぁ、すっきりした。少し冷めてしまった紅茶が美味しく感じる。
それから、ようやく文明人らしく、スマホに手を伸ばして調べてみた結果、ちゃんと歴史的由来があって、ため息を吐いた。




