初恋の日
「ねぇ、相馬くん、私の初恋って何だろうね」
「いきなりどうした」
ぼんやりとしていた時の不意打ちの質問に、少しだけ意識がはっきりとする。
二人きりの生徒会室。僕は窓の外の夕焼けに染まる雲を眺め、夏樹は黙々と書類作成をしている。
「んー、ほら、私お兄ちゃんこと好きだったじゃん。そして、相馬くんに偽物の恋をして、そして、本当に恋をして、今付き合っているわけじゃん」
「あぁ」
「ありゃりゃ、少し不機嫌? ちゃんと聞いてね。ねぇ、私の初恋って、どこだと思う?」
「……わからん」
窓の外に向いていた視線を、夏樹に向ける。頬杖をついて、どこかアンニュイな雰囲気を纏って、夏樹は僕を見ていた。真っ直ぐに。
「少なくとも、今夏樹が僕の事を好きなのはわかる」
「ずるいよ、その答え方」
「それ以外は、さっぱりだ」
「相馬くんの初恋は、陽菜ちゃんでしょ」
「どうだろ」
「曖昧だなぁ。陽菜ちゃんと私が怒るよ」
もう一度、窓の外を見る。野球ボールが飛んできたから、窓を開けてキャッチして、投げ返しておく。
「さらっと凄い事しないでよ」
「多分、初恋だった」
「ん?」
「確かに、陽菜に、初恋してた」
僕は、ちゃんと夏樹の目を見て言った。
「よく言えました」
ふんわりと夏樹は微笑む。
「じゃあ、私は三番目だね。一緒かも」
「なんで?」
「乃安ちゃんにも、ちゃんと恋、してたでしょ」
「……してた」
「だってよ。良かったね、二人とも」
夏樹はぴょんぴょんと跳ねるように歩いて扉を開けた。
「相馬君。その、初恋を捧げていただき、ありがとうございます」
「わ、私も、二番目で、嬉しいです」
「……いたのか」
僕は少しだけ、正直に答えたことを後悔した。




