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ストラテジー~知略の勇者~  作者: 鷹飛 諒
第二章
31/31

~戦前会議~

皆さまお久しぶりです。鷹飛 諒でございます。

いやぁ~自分の不定期加減にはほとほと困っております。改善しなければ……。

また今回も生温かい目で読んでやってください。

では!



 オレが涼音たちを連れてきたのは十人以上が囲んで座れそうなほど大きい円卓がある部屋だった。


 バカでかい円卓のせいか、部屋は少し手狭に感じる。


 そこには既に国王であるグスタフ、騎士団長のアレク、軍事の文官が入り口側の椅子を空けて、奥の方へと固まって座っていた。


 いつもよりも荘厳な雰囲気に自然と涼音達は息を呑む。

 

 オレとしては同じような雰囲気で何度もあいつらとは話を交わしてきたせいか、いつもの雰囲気で反って今から涼音達に話を切り出す緊張がまぎれたようで一息ついた。

 

 部屋の奥で厳しい表情で机を見つめるようにグスタフは俯いていた。

 

 そのグスタフが重々しく口を開く。


「ついに、その日が来てしまったか……」


 その真意に気付いているアレク達もたちまち顔を歪めた厳しい表情を浮かべた。


「……ああ」


 グスタフの真意に内心感謝の気持ちを吐露しながら、しかしこれから告げるべき事実に少し憂鬱な気分になる。


「話すのだな……和人よ」


「ああ」


「……和人君?」


 オレとグスタフの暗いやり取りに、不安げな表情の涼音が横からさりげなくオレの表情を伺ている。


「相、分かった。……始めよう」


 グスタフはしばらく悩み、押し黙った後、その重い腰を上げた。


「涼音殿、大樹殿、壮介殿、琴音殿、さぁ中へ」


 何かを噛みしめるように勇者一人一人の名前を呼び、中へと招き、座るよう促す。


 オレはそれに応え、一人円卓へと進み、腰を落ち着ける。涼音達も互いの顔を見合わせた後、オレの後を追うように各々椅子を引き、神妙な面持ちで座る。


 グスタフはオレ達が座るまで待つと、アレク達と目を合わせた後で腰をおろす。


「此度は急な申し出にかかわらず、よくぞ集まってくれた。厚く礼を申し上げる。今日集まってもらったのは他でもない……魔族との戦争についてじゃ」


 涼音達は目を見開いた後、互いに目を合わせている。覚悟していたことではあるだろうがやはり実際に現実を突きつけられては狼狽えるのも仕方ないだろう。


「今日は今このバルカ王国と魔族間の状況とこの先の展望について話すから、少し長くなるとは思うがまぁ聞いてほしい」


 グスタフの声に半ば被せるようにオレが話を進め、涼音達もオレの声に応え頷いてくれた。


 オレはグスタフにも目を合わせ、グスタフも首を縦に振る。


「現在、バルカ王国と魔族との戦争は一年前の戦争最後に膠着状態が続いている。だが、今になって国民をさらってその死体を送り付けるなど、戦争の火種は既にいくつもついていて、少しでも火が触れれば一気にその惨状は王都中に、そして王国の後ろに位置する諸王国に広がってしまう」


「そこで起こるのは、さらなる混沌じゃ。それは絶対に阻止せねばならん」


「ここが、人類の言わば最後砦だ。改めて君たちに頼もう。――勇者達よ、力を貸してほしい」


 アレクの言葉でグスタフ、文官が立ち上がる。


 オレも椅子からすっと立ち上がり、アレク達の横に並ぶ。呆けた顔をしている涼音達に苦笑しながら、アレク達に合わせて頭を下げた。


「え……和人も勇者、だよな?」


「オレもこちら側の人間になる。最も、勇者として呼ばれても人並み以下の力しか持ち合わせていないからなぁ……戦闘に関しては、オレは使えないさ。オレは軍事面でお前たちをバックアップする。もちろんオレはグスタフたちに協力するつもりだ。みんなは、どうする」


 少し恥ずかしさを見せながら頭を掻いてみせるが、この重たい空気を和ませようするにはいささか物足りないようだ。


 オレは涼音たちを見つめる。


 涼音と目が合い、オレの真意を探ろうとする気持ちが揺れ動いているのを感じる。その目は少し訝しげだが、やがては観念したように、いや初めから決めていたかのように凛々しい笑顔をこちらに向ける。


「私たちの気持ちは前から変わっていません。覚悟は既にしてきたつもりです。この国のため、人類のため、協力させてください」


 大樹達は無言の肯定で俺たちを見つめ返す。


「――感謝する」


 感慨深げに頷くグスタフ。


「それじゃ、ここからは本題も本題これからについて話し合おう」


 オレは涼音達に席につくよう促し、いよいよ本題を切り出す。


「今日話すのは、魔族との戦争に向けた対策についてだ」


「ここからは私が話しましょう」


 文官が立ち上がり、手元の資料を基に話を切り出した。


「お初に、いや公式の場では何度かお会いしておりますな、軍事文官のベクター・デュレットと申します。何分我が国も忙しい状況故、なかなかお話しする機会はございませんでしたがこれからは何かと関わる機会は増えるかと思います。よろしくお願いいたします」


 ベクターが深々と礼をするが、涼音達の視線は厳しいものだった。


 まぁ無理はない。軍事文官はサザラールの直属の上司にあたる存在だ。あの糞野郎の上司ってだけで受ける印象はあまりいいものではないだろう。


 それはベクター本人も重々承知していることだ。その表情にはどんな避難受ける覚悟を籠っていた。


「勇者様方のお気持ちは分かっているつもりです。サザラールが起こした不祥事については言い訳の余地もございません。和人殿、勇者の皆様方、本当に申し訳ございませんでした」


 ベクターは深く頭を下げた。その時間は長く、その姿に涼音達も少し困った様子だ。


「はぁ、ベクターさん。オレは気にしていません。あなたが責任を感じる必要もないですし、あなたは有能な文官です。サザラールを憎みはしても、サザラールの為に頭を下げる必要性は全くない」


 話の進まないこの空気にため息を漏らしながら、ベクターへと向き直る。


 その姿を涼音達は戸惑ったように見つめる。


「あの出来事は既にもう終わったことだ。ここで立ち止まってたらこれまで犠牲になった人たちが浮かばれない……オレ達はやるべきことをやるだけだ」


「…………」


「心配してくれてうれしいよ、みんな」


「……君には敵わないな、時間を取ってすまない。続けてください」


 涼音が苦笑したかと思うとキリッと表情を引き締め、ベクターに簡単に謝辞を送る。


「かしこまりました」


 ベクターも少しほっとした様子で話を切り出す。


「我々の兵力は各国の兵をかき集めても七〇〇〇、かろうじて八〇〇〇を超えるかどうかの瀬戸際です。協力を要請している諸外国の国々も立て続けの敗戦に渋っている状況です」


 眉を顰めるベクターの資料を握る手に力が入る。しわが付いていく紙を見つめながら事の重大さに息をのむ涼音達。


「しかし、我々騎士団と友好的な関係を結んでいる一部の騎士団とは協力の意向を示していただいております。各国の騎士団に協力を仰げば兵達の士気を高めることができるでしょう」


「じゃが……難しいであろうな。魔族の恐ろしいところは絶対的な力もあるが驚異的なのはその数じゃ、どう生み出しているのかは分からないがその兵力は人類をはるかに超える。士気、だけでは超えられない壁であろうな」


「…………」


「ええ、兵力については今後の交渉次第。しかし、いつ戦争が始まるのか分からない状態で兵力を差し向けていただけるか……」


「それは、オレに任せてほしい」


『え……』


 オレの一言で、場の空気が止まる。


「か、和人殿……それはどういう――」


「あちら側はもう戦争の火種をあちこちに残してくれてるんだ。火種に火をつけて風と木片を与えてやったら一気に燃え上がる」


「和人よ、説明しなさい」


 グスタフが一点を見つめながら、呟いた。


「……オレが秘密裏に立ち上げた組織で魔族や奪われた土地について調べてもらっている。戦争を起こすための工作も頼んでる」


 今度はアレクが勢いよく立ち上がり、叫ぶ。


「なぜ、そんなことを……一歩間違えればそいつらやお前も殺されてしまうぞ‼」


「じゃあ、オレ達をなぜこんな世界に呼び出したんだ‼」


 記憶の限りではおそらく初めて見せるオレの声を大にして反抗した様子に全員が驚いた表情にこちらに向けている。


「一歩間違えれば? 笑わせんな、()()()()()()()()()()んだろうが」


「……っ!」


「ここは最後の砦だ。そこで一歩でも間違えて負けたら、それこそお前らの言うこの世の終わりだぞ。その最前線で戦ってきたあんたが何でそんな甘い考えなのか分からねぇ。こっちは命張ってんだぞ。命を懸ける気がねぇんだったら、騎士団団長の座を退けアレク」


「なっ……」


「お前はいったい何者なんだ?」


 ベクター、アレクまでもが気圧されたようによろめく。


「はぁ? とうとう馬鹿になったか、つまんねぇこと言うなよ。続けるぞ」


 呆けたままのアレク、ベクターそして涼音達を置いて、俺は話を続けた。


「三か月だ」


「え?」


 またもや、周りからとぼけた声が湧く。


「三か月後、魔族と戦争を始める」


「三か月、早すぎはしないですか?」


 壮介が眉を顰めオレを見つめる。


「三か月がギリギリのラインだ。それ以上引き延ばせば魔族側も何らかの対抗策を練ってくる可能性もある。悠長なことは言ってられない」


「…………」


 オレの言葉に皆が押し黙る。分かっているのだ。戦いの日がオレの帰還を皮切りに、刻一刻と迫っていることを心のどこかで分かっているのだ。それでもその現実を突き付けられると立ち止まる。


「……オレの目の前で、仲間が死んだ」


「…………」


「オレの目の前で、仲間が悲しんだ」


「和人君……」


「そんな姿はもう見たくねぇ、こんな戦いは一刻も早く終わらせてぇ。だから、オレは、オレ達は進むんだ。だから力を貸してほしい、頼む」


 精一杯の祈り、願いを込めて頭を下げる。


「……だから、何度も言って分からないのか君は」


「え?」


 今度はオレが呆ける番だった。


「君のことはまだ短い付き合いだけれども、どんな思いを抱えてきたか、どんなに自分と向き合ってきたか、この世界にいる人たちよりも近くで見てきたつもりだ」


 涼音が安心させるような微笑みでオレを見つめている。


「君の思いを知っている。受け止めている。元より覚悟もできている」


 涼音は言葉を重ねる。一言一言、オレの胸に届くように。


「戦うよ、君と……一緒に戦おう!」


 涼音の言葉に呼応するように大樹、壮介、琴音もオレを涼音に並んで見つめる。


 オレは頭を上げることができなかった。


 頭を下げるオレの耳元に椅子を引きずる荘厳な音が聞こえる。


「グスタフ……」


「和人よ……一つ其方に問う」


「ああ」


「戦争を終結させる、それが其方の真の願いか?」


「ああ」


「できるのだな?」


「ああ」


 オレはグスタフに向き直り、瞳を逸らさず言い放つ。


 グスタフと見つめ合うその数舜。一国の王に信頼に足るべきか、見定められているのだ。自然と拳に込められる力が増す。


「……っ!」


 オレは息を飲んだ。


 グスタフが、一国の王が頭を下げたのだ。


「其方に、託そう」


 礼を述べる際の頭を垂れる行為とは決定的に違う。


 オレを信頼に足ると判断し、国の命運を託すと言ったのだ、重圧が一手に背中へと圧し掛かる。


「……上等だ」


「うむ、話がそれてしまったな……済まない」


 グスタフは厳粛な雰囲気をすぐさま軟化させ、腰を落ち着けた。


「兵を集める話な、それはオレに考えがある」


「考え?」


 涼音が首をかしげる。


 オレはニヤッと笑い、行儀が悪いとは思うが涼音達を指さす。


「みんなの力が必要だ」





最後まで読んでいただきありがとうございます。

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