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ストラテジー~知略の勇者~  作者: 鷹飛 諒
第一章
27/31

幕間~様々な再会~

大変お待たせいたしました! どうも鷹飛 諒でございます。

長らくお休みしてすみません・・・

お詫びの代わりに今日は二話連続投稿です。

今日でストラテジー第一章は本当に完結でございます。

第二章共々これからもよろしくお願いいたします!

で・・・あっ! これからも生温かい目で読んでくださいね!

では!



「緊張するな、なんか」


「ああ、久しぶりだな、この門を見るのも」


「出ていったきりだったからね」


「やっと帰ってこれたんですね」


 呟くオレの肩を抱くジートがどこか達成感を感じた表情で門を見上げている。それを見て俺も見上げる。


 見慣れたどこか懐かしいこの荘厳な雰囲気が王都に帰って来たのだなと実感させてくれる。


 声をかけてくれる仲間が一人少ないことは寂しいが、それと同時にオレに前へと進む活力を与えてくれる。


 背後に目をやると、ここまで苦楽を共にしてきた仲間や洞窟で救った人達が涙を流しながら喜びを分かち合っている。


「マリー、帰ってこれたな」


「……はい、ありがとう、ございます‼」


 マリーに声をかけると、涙で顔をぐしゃぐしゃにさせて深くオレにお辞儀をした。


「和人、ここからだな」


 ふと隣で凛とし顔立ちに引き締めたジートが門ではなく、さらにその先にある者を見据えるかのようにジッと一点を見つめていた。


「サザラールの野郎、許せねぇ」


 ジートが呟く。


 オレは王都に帰る道中、すべてを話していた。このオーガの住む廃村の調査はおそらくグスタフの命令ではなく、オレを排除するためにサザラールが画策したものだということ。すべて憶測だが十中八九間違いないことを嘘偽りなく話した。


 まず、王からの勅命であれば訓練中ではなくしっかりと命ずるための場を用意するはずだ。ましてや、サザラールの言ったグスタフの署名の入った書状であればそれはもう軍事機密の書類で軽々しく外に持ち出していいものではない。


 そして、ジート達をオレのお供に命じたあの適当感。あれはないわ。オレのこと舐めすぎだろ、マジで。


「まぁ、今日であいつの地位は陥落するんだ……少しはマルコも浮かばれるだろう」


「……まぁな」


 そんな言葉は気晴らしにもならないことは分かっているが、そうであってほしいという願いも確かに存在していた。


 あの決意の第一歩が今日踏み出されるんだ。緊張もする。


「お待たせいたしました。手続きは完了です。よくお戻りになられました、和人様!」


「……ああ!」


 体を強張らせた緊張を吹き飛ばしたのは、門番である騎士のその一言であった。


 門が軋む甲高い音を上げながら、光を通していく。


 高鳴る鼓動と疼く体を必死に抑え、懐かしき街並みをこの目に焼き付けようと目を見開く。


 鼓動と共振して揺れる視界。潤んでいく目に最初に映ったのは、街並みでも何物でもなく、彼女だった。


「……ただいま」


「おかえりっ! 和人君!」


 オレへと一直線に駆け出す涼音をオレは無意識に受け止め抱きしめていた。触れたことのないこの感触が、漂う涼音の香りが、温もりが、とてつもなく懐かしく感じた。


――ああ、帰ってきた。


 この瞬間だけで、これまでのことが報われた気がした。


 数秒が何一〇分にも感じられる濃密な瞬間を過ごしたオレと涼音はしばらく見つめ合い、急に恥ずかしくなり、お互いの体から体を突き放した。


「…………」


「…………」


 顔が合わせられないほど真っ赤にした顔が火照って仕方がない。


 ジート達にはニヤつかれる始末だし、苛立って明日から練習量を倍にすると呟くとジート達は一気に顔が青ざめた。


「和人‼」


「和人‼」


「和人君‼」


 ジート達の表情を見て満足していると、聞き馴染みのある声が耳を貫き、たじろぎながら前を向くと既に目の前には体を宙に浮かした大樹、壮介、琴音がオレの顔面すれすれまで迫っていた。


「ぐあああぁぁぁ⁉」


 オレが悲鳴を上げたころには、三人の体がオレに覆いかぶさり、頭を打つ勢いで倒されてしまった。


「この野郎、いつまでほっつき歩いてやがったんだ‼」


「よく戻ってきました‼」


「よかったですううぅぅぅぅぅぅうぅ‼」


 目から盛大に涙を流しながら、オレの気持ちなんかお構いなしにもみくちゃにしてくる。


 ああ、この感じだ……。この暖かい心地をずっと望んでいた。涼音と抱き合った時とはまた違う。体にしみこむような優しいこの心地を、ずっと感じたかった。


 気づけば大樹、壮介、琴音、三人丸ごと強く抱きしめていた。


「みんなも……ただいま‼」


「おかえり、和人‼」


 まぶしいくらいの三人の笑顔を見ていると、急に気恥しくなって少し顔を背けながら差し伸べられた手を取る。


「私は置き去りか?」


 涼音は少し呆れたように勝手に盛り上がったオレ達を上目で眉を八の字にして見つめていた。


「何ふてくされてんだよ、涼音」


「一人で勝手に先走って一番早く和人に抱き着いてたくせに」


「みみみみていたのか⁉ あ、あれは特別なものではなくて、ややややっぱり友達が無事に帰ってきたら舞い上がるのは仕方ないだろう‼」


 友達という言葉は少し、心に来るものがあったがあんなにうろたえる涼音は初めてで少し新鮮だった。


「ふふ、涼音ちゃん、可愛い」


「琴音っ!」


 琴音にいじられる涼音とはなんと珍しい……いいものを見せてもらった気分だ。


 長い間待ち望んでいた四人との会話をオレは楽しんでいた。


 オレ達の帰りを聞きつけたジート達の家族や仲間が一斉に門まで押しかけ、門前は軽くお祭り状態だ。


「…………っ‼ ……けええぇぇぇぇぇ‼」


 人ごみのその奥、遠く離れた所から人々の声に埋もれながらも聞き覚えのある声が聞こえてきた。


 その声は徐々にオレ達の方へと近づいていき、忘れもしない忌々しい姿がオレの目に映る。


「……サザラール」


――糞デブ狸ジジイめ……。


 心の声が音量一杯で頭の中に鳴り響く。見てろよこの野郎、今日がお前の最後の日だ。


 サザラールは顔を、特に顎を真っ赤にして、人込みを強引にかき分けながら屈強な騎士を引き連れてオレ達、いやオレを真っ直ぐに睨んでいる。


「どけぇ! どけえええぇぇぇぇぇ‼」


 サザラールがすごい剣幕で詰め寄ってくる。


 オレの前に立とうとして、守ろうとしてくれる。オレはその頼もしい仲間のありがたみを身体一身に受け止めてなお、オレはみんなをかき分け正面切ってサザラールと対峙する。


「き、貴様――」


「これはこれは、サザラール様……勇者和人、ただいま帰還いたしました」


 オレはサザラールに向かって恭しく礼をした。


 さりげなく人々に目をやる。


「…………」


 サザラールはわなわなと顔を震わせ、額には汚らしい脂汗が滲んでいた。


 その顔をオレは笑みを浮かべながら見つめる。


――さぁ……反撃開始だ。


 オレはサザラールをただ見つめる。


「お久しぶりですね、か、和人殿……よく、戻ってこられました……」


「ええ、お久しぶりですサザラール殿。では早速国王にご報告を――」


「こ、国王は……今お忙しい身でございます。今すぐは難しいかと」


「今は一刻を争う状況です! ここは押し通らせていただきます!」


「な、なりませぬ‼」


 オレは抵抗するサザラールを押しのけ、王城へと進む。


「く、取り押さえろ!」


 ひどく慌てたように、つばをまき散らしながら叫びだすサザラール。声に反応した騎士が一斉に剣を構え、オレに飛び掛かる。


「和人君‼」


 涼音達が各々の腰に下げた木製の武器を掴み、踏み出そうとした瞬間、両脇から突風と共に何かが通り過ぎていく。


「「ぐあああぁぁぁ‼」」


 突風の直後に悲鳴が聞こえたかと思うと、オレに襲い掛かった騎士が吹き飛ばされ地に伏していた。


「大丈夫か? 和人」


「和人はいつもどこか危なっかしいよね」


 ジートとワイリーが盾と剣を構え、剣の切っ先を倒れた騎士の喉元に突き付けていた。


「さすがだな」


「危ない真似はすんなよ……寿命が縮む」


「でも……守ってくれるだろ」


「…………」


 ジートは呆れてため息をつき、ワイリーは苦笑いを浮かべていた。


 サザラールは何が起こったのか分からないといったかのように啞然とした表情を浮かべている。


 お祭り騒ぎだった門のあたりは既に静寂に包まれていた。


 静寂の中、空を切るようにぞろぞろとオレの元へトンパを先頭に仲間たちが集まってきた。


 再開の挨拶はもう済んでいるようで、全員が戦士の表情を浮かべ、堂々と胸を張っていた。準備は万端のようだ。


「さぁてと……凱旋だ」





最後まで読んでいただきありがとうございます。

感想、誤字脱字などお気軽にお書きください。

連続投稿をお楽しみに。

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