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ストラテジー~知略の勇者~  作者: 鷹飛 諒
第一章
21/31

~最終決戦~(1)

どうも皆さんこんにちは!

あまり約束を守らない作者、鷹飛 諒でございます。

毎週投稿と言っておきながらまた日にちが開いてしまいました。

読んでくださっている皆さんに感謝しながら、この作品が生温かい目で読まれているのを祈っています。

では!




 |《軍師の咆哮》《クリーガーブレン》で戦闘不能になったオーガの喉元を槍で突き刺しながら、漏れがないよう数を数えながら奥へと進んでいく。


 槍にはべっとりとオーガの血が刺し殺すたびに纏わりつき、最後のオーガの止めを刺すと俺は手拭いで血をふき取った。


「これで最後か……」


 充満する血の匂いで眩暈が起きそうだ。


 倒したオーガは全部で二二体。振り返るとオーガの死体の行列がただ静かに並んでいる。聞こえるのは入り口から吹く風が洞窟の壁を撫でる音だけ。早く先へ進めと言われているかのように、体に受ける風に妙な圧迫感を感じる。


「先を急ごう……」


「おう」


 ジート達と目配せをして、体力の回復とオーガの残党をまたこの細長い通路で迎え撃てれば俺たちが有利な状態で戦況を動かすことができる可能性もあるため少し歩く速さを落とし、先を目指すことにした。


 ゆっくり歩くことで自分の足音が聞こえてくる。


 無我夢中でここまで突き進んで、たまたま有利な状況状態で事が進められたけれど、この俺たちが歩くその先に敵が待っていると思うと足がすくんで思うように動いてくれない。


 戦闘がひと段落して、気分が落ち着き、冷静になれる時間が意図せずともできてしまい自分の今の状況が手に取るようにわかってしまう。膝が震えているのが目で見える。


「てめぇは一人じゃねぇぞ。お前が俺達の思いを背負ってくれんなら、お前の思いを俺たちが背負ってやるよ」


 ジートがオレの背中をたたく。


 不思議と足の震えも収まっていた。


「上から目線だな、なんか」


「一応年上だぞ、俺は」


 ジートと目を合わせオレは苦笑した。


 穏やかなひと時もつかの間、頬に柔らかな光が当たる。


 松明の光のようだ。


 オレも含めジート達皆も少しリラックスした表情を引き締めた。


「ここからが本番だぞ」


 これまでの戦闘はこの時のための事前作業に過ぎない。


「いよいよ大詰めだな」


 ジート達が槍を握りなおす。


「まだ始まってないだろ……」


 オレは先陣を切り、光の方へと突き進む。


「最後の戦い、絶対勝つぞ!」


「おう!」









 光の先にはだだっ広い円形の空間。


「想像していたけど、想像以上だな……」


 その広さは二〇体以上のオーガが生活するためだけあってコロッセオを彷彿とさせる。いや知らんけど……。


 俺の瞳の先には大きな黒い点が二つ。雰囲気でわかる。正真正銘あれが敵だ。


「ウーの野郎がやられちまったようだな」


「まぁ、仕方ねぇだろうよあのバカ野郎じゃ荷が重すぎたんだろうよ」


「…………」


 姿があらわになったオーガ二人は細道で倒したオークの長とは比べ物にならないほどの風格で高くそびえる不動の山を見ているかのようだった。


 西洋の甲冑のような上位の魔物の骨が使われたであろうオーガの骨装備は身に着けた本人の風格をさらに引き上げる。


 さらにはオーガ二体がその手にもつ棍棒は一つの骨を細工した竜の顎のような風貌だ。


 見たところオレ達の真正面でふんぞり返ってるオーガがこの洞窟のリーダーで一歩後ろでこちらを睨みつけているのが子分ってとこか……。


 しかし、改めて見ると迫力がすげぇな。


「こりゃあ、どうやって切り崩すかねぇ」


 オレは笑みを浮かべながら舌で口を舐める。


 だんだんオレもイカれてきたなぁ。この状況で難しい状況をどう打開するかゲームと同じで困難な状況こそ燃えるこの性格は血生臭いこの時には心強い味方だ。


「こんな状況で笑ってられるのは何とも心強いですね」


 マルコが冷や汗を流しながら苦笑いを浮かべている。


「さすがはあっしらの勇者様ですぜ」


「頼もしいね」


「覚悟ならいつでもできているぜ」


 トンパ、ワイリー、ジートが思い思いの言葉を吐きながらオーガを見据える。


 どうやら油断はない。いい集中状態だ。


「みんな、勝つぞ」


『おう‼』


 再び士気を上げるため言葉をかけるが、オーガの渇いた笑い声が洞窟内で木霊した。


「ガッハハハハハハハハ‼ 家畜がほざくな……下っ端とウーをぶっ殺したぐらいで調子づくんじゃねぇよ、家畜はどうなっても家畜なんだよ」


「ウー? あああのちょっとばかし見た目が派手だったオーガか……でもその家畜ごときにお前らはここまで追い詰められてるんだぞ」


 オレはすました顔でオーガを煽る。


「減らず口を……」


「…………」


 オレは不敵な笑みを繕ってオーガを睨む。


「殺されてぇみてぇだなお前……」


 オーガは手に持った棍棒を地面に叩きおろし、埃を巻き上げ、地面を揺らしながら小さなクレーターを作る。


 その表情は殺意に満ちており、今にでもこっちに突っ込んできそうな雰囲気だ。


 それでも、やめない。


「おいおい、怖い顔すんなよオーガさんよぉ……優しい顔しねぇと家畜が逃げちまうぞぉ」


「てめぇ……」


「あのオーガ、ウーだっけか? お前らにも名前があるんだろ、死ぬ前に聞いといてやるよ」


「調子に乗るなよ家畜の――」


「落ち着け、ウル」


「だ、だけどよウルク」


 一歩後ろでこちらを睨んでいたオーガ、ウルが牙を爛々と輝かせながら棍棒を振りかざす。


 それを止めたのは意外にも隣にいるオーガ、ウルクだった。


「へぇ、ウルクとウルか……覚えておいてやるよ」


「本当に生意気な家畜だな」


 ウルクは歯をむき出しに笑う。


「はっ……その家畜はお前に――っ!」


「殺すぞ」


 挑発を続けていると足元から熱を奪われていく感覚がオレを襲う。


 ウルクから放たれる殺気は凍てつく寒さと上から押し付けられるような重圧でオレ達を圧倒している。


 こんな奴と戦わなきゃいけないのか……しかも勝利が絶対条件。思わず腰を自分から引きたくなる。


「くそ……化け物め」


「俺達ならやれるさ、そうだろ和人」


「今の私たちの全力を見せつけてやりましょう」


「僕たちだってやればできるんだよ」


「勝ちますぜ、あっしらは」


 ジート達はオレを通り過ぎ、オーガに槍を構える。


 それに続き、みんなも次々と隊列を組んでいく。これまでにない美しいファランクスだ。やる気は十分ってことか……見せつけてくれる。


「はっやる気満々って感じだなぁ家畜ごときが」


 ウルクはその丸太のように太い腕に血管を浮き上がらせながら、棍棒を振り回す。


「調子に乗るんじゃねぇぞ糞野郎がぁ‼」


 激情しているウルは今にでもオレ達に仕掛けてきそうな雰囲気だ。


 それを見て、オレはウルにターゲットを絞る。


「おいおいどうしたぁ、ウルちゃんよぉウルクの後ろじゃねぇと威嚇も満足にできねぇのか、あ? そんなだとすぐ家畜に殺されても無理ねぇわな」


「なんだと‼」


「ウルクにしっぽ振るのは楽しいかよ、なぁ? ワン公」


「て、てめぇ……」


「おい、ウル」


「うるせぇ‼ てめぇは黙ってろウルク‼」


 ウルの頭上から湯気が見える幻を見たかと思うほど、激昂しているのが手に取るようによく分かる。


 あともう少し。


「逃げるなら今だぞワン公……さっさとキャンキャン言いながら消えろ糞野郎」


「ガアアアアアアアアアアアアァァァァァァァ‼」


 突如、怒りの頂点に達したのか洞窟内が揺れるほどの雄叫びが轟いた。


 洞窟が揺れた反動で砂埃や小石がオレ達の頭上目がけて降ってくる。


 ウルの方から棍棒を握りしめる音が離れたオレ達の所まで聞こえてくる。ギチギチと鳴るその音は今にでもあの仰々しい棍棒を粉砕しそうだ。


「ぶっ殺す」


 ウルがウルクを押しのけオレ達に鋭い牙と棍棒を向けながらこちらに向かってくる。


「よっしゃ、挑発に乗ってきたぞ。てめぇら気ぃ抜くなよ!」


「オーガ相手にすげぇな、全くさすが勇者様だぜ」


「勇者様より悪魔様の方が近いみたいですけど」


 ジートやマルコに散々な言われようのオレだがその間にもウルが人食い鬼にふさわしいまさしく鬼の形相でこちらへと向かってくる。


「さあ、いよいよ最終決戦だ。勝って皆と一緒に王都に帰るぞ!」


『おう!』


 オレの声にこたえてくれる仲間たちがいる。


 ならオレは仲間たちが勝てる道筋を与えてやるのがオレの仕事だ。


「奮い立て! 屈強な戦士たちよ! 今こそあの鬼の喉元を食いちぎれえぇぇ‼」


『おおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ‼』








最後まで読んでいただきありがとうございます。

感想、誤字脱字など気軽にお書きください。

和人たちの戦いもいよいよ最終決戦! これからも作品ともども作者の応援よろしくお願いします!

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