~戦闘開始~(1)
どうも! 鷹飛 諒でございます!
いよいよオーガとの戦闘が始まります!
生温かい目で読みながら手に汗を握ってみてください!
では!
風が肌を触れる感覚も時間の流れも感じなくなるほど、野生のように集中力を研ぎ澄ましていくオレ達の耳に洞窟の奥から微かな音が聞こえてきた。
これを聞き間違うはずがない。この音の主を倒すためオレ達はこの日まで対策を練ってきたんだ。
「来る……」
誰かが呟いた。
オレはすかさず木々の物陰から《軍師の声音》(クリーガーシュトゥム)を使い、洞窟の頂上付近に配置した魔法部隊五人にオレの声を彼らの耳元に送る。
エミリアに魔力の操作を褒められてからオレはそれを中心的に伸ばしていった。そのおかげで魔力を指定の座標に飛ばすことだけは五人の勇者の中でも一、二を争う。一位は涼音だけど……。
『魔法部隊、目標が残り一五秒でポイントに到着。詠唱準備』
オレの声に反応した五人が杖を構えたのを遠くで視認する。
『詠唱……開始』
遠目からでも五人の杖が紅く光るのを目にした。《軍師の声音》はそのままにして詠唱を聞きながらタイミングを見計らう。
『燃やせ、燃やせ、すべてを喰らえ』
洞窟からの足音が大地を揺らしていく。
今か今かと前のめりになりそうな気持を必死に抑え、その時を待つ。
『炎を顎門に変え、灼熱の牙を見せよ』
もう少し。
『業火の炎を以って、すべてを焼き尽くせ』
暗がりから緑色の巨体が姿を現していく。
圧倒的パワーで勝る向こうには正面からぶつかっても勝ち目がない。武で勝てないのなら知で勝ればいいだけの事。
「突撃いいぃぃぃぃぃ‼」
「うおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ‼」
オーガ三体の体が日の光を浴びた瞬間、オレ達は物陰から飛び出した。
「人間っ⁉」
「どこから湧いて出てきやがった‼」
「くそっ! 皆殺しだ‼」
オーガが馬鹿みたいに慌てふためく。
オレ達は頂上の魔法部隊が気づかれないよう、わざと隊列を無視してオーガ共の視界を一八〇度敵の状態になるように突撃し、視野をオレ達に限定させる。
ただでさえ狩りに出ていこうとしただけの瞬間、暗がりから明るいところに出た為の日の光による一瞬の
視界の遮断。その隙を突いた奇襲により更にオーガ達の視野が狭まる。
そしてオーガは視界いっぱいにいるオレ達で緊張と興奮が一気に上昇。体が硬直する。
そんな状態での奇襲攻撃、からの奇襲。
頭上からの炎魔法。
死ぬほど訓練させ、魔力の底上げを図ったため威力は十分。
これが第一の策。
ドンピシャリ。
『業炎牙狼‼』
オーガの頭上から五頭の狼の姿をした灼熱の炎が一瞬にしてオーガ達を飲み込んだ。
炎の熱波がこちらまで届いてきて思わず足を止めそうになる。
「~~~~~~~~~~~っ⁉」
オーガ達が叫ぼうとしても声にならずただ呻く。
瞬く間にオーガは焼き上がった炭になり、倒れると同時に体が崩れていった。
「てめぇら足止めるんじゃねぇぞ‼ このまま敵本拠地に突っ込むぞ‼ 走れ走れ! 隊列は走りながら組め!」
作戦が決まってから走りながらの整列はぎりぎりまで訓練して体に叩き込んだ。今のジート達だったら余裕だ。隊列は兵士が横五列、縦八列の深型で魔法部隊はその隊列の後ろで横二列で並ぶ形にしてある。
さっき活躍してもらった洞窟頂上の魔法部隊の五人はここからは別行動。他の仕事を任したのち、マリーと一緒に王都に向かってもらう。
「よくやった! マリーは任せたぞ‼」
「はい!」
オレは頂上の五人に声をかけ、五人に向かって親指を立てた。
オレは先頭を切って走り、いよいよ洞窟内へと突入していく。前方の様子を確認しながら、ジート達を前から鼓舞しながら全体の士気をさらに上げていく。
「進め、進めええぇぇ‼ 少女のため! 我らのため! 己の血肉を以って勝利をつかみ取れええぇぇぇぇぇ‼」
「うおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ‼」
オーガの習性だとその強固な肉体で山や丘、地中や岩場を掘り、自分たちの居住空間を形成していく。しかし、知能が低いため、洞窟内部は罠などもほとんどなく、長い一本道にどでかい居住空間だけの簡単構造だったりする。
この洞窟も同じようで長い一本道に両壁にはまばらに松明がかけられていた。
長期決戦では力に勝るオーガに分があるので、短期決戦に持ち込みたいオレ達は一秒でも早く戦いを終わらせるため全身全霊で足を動かしていく。
突如、オレの危機察知能力がけたたましいサイレンを鳴らす。
このオーガと初めて出会った時のような全身の毛が恐怖を感じ逆立つ感覚……。
「敵襲――――――――――――っ‼」
オレの声と同時に膿が混じった体を揺らしながら、目を見開き牙を剥くオーガが現れる。
数は……五体、六体、七体どんどん増えてきやがる! やっぱり外の騒ぎで嗅ぎつけてきたか。
「てめぇら下がれ下がれ、距離をとれ!」
オレの声で隊列はぞろぞろとそれでいて滑らかに素早く動いていく。
オレ達のとっておきである『ファランクス』は開けた場所では常に密集した状態で移動するため、格好の的になってしまうという弱点がある。だからできるだけ一本道であるこの間にできるだけ敵側の戦力をそぐのがこっちの絶対事項。
身体能力の差が一抹の不安だが、この一本道で相手の動きも制限されるという利点もある。下手したら体力尽きてジリ貧で全滅というリスクもあるが、ここを切り抜ければ大きな勝機にもなる。ここは絶対に気が抜けない。
「人間がお出ましだぞ! 食い殺せええぇぇぇ‼」
「ウガアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァ‼」
オーガの血走った狂気の咆哮で怯みそうになるのを必死に堪え、オーガの声と対抗してオレ達も精一杯の声をオーガ達にぶつける。
「戦ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ‼」
「うおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ‼」
オーガ共とオレ達が雄叫びを上げながらお互いがお互いに向かっていく。
「ファランクス‼」
オレが叫び、隊列は走りながらギチギチと仲間との間隔を狭めていく。盾と盾がぶつかり合い、火花を散
らせながら進むジート達の様子はまるで血に飢えた獅子のようだった。
一瞬にしてオーガとの距離が詰まり、オーガの岩よりも大きい剛腕が横薙ぎにジート達を襲う。
ガアァァァァァァン‼ と鋼と鋼がぶつかり合うような音が洞窟中に響き渡り、交錯した部分が火花で一層に光る。
オーガは自分の腕に自信があるのかニヤリと笑う。
「……こんな、もんかよ……」
しかし、笑っているのはジート達も同じだった。
同時にオレも笑う。
「なっ……どうなってんだ……」
ジート達にぶつけたオーガの剛腕が徐々に押し返され、オーガの表情から笑みがどんどん消えていく。
「ちっくしょ……こんなのありえねっがあっ⁉」
オーガの腕ははじき返され、大きく仰け反ったオーガの体をジート達の槍が鼠がえさに群がるかのような
勢いで串刺しにしていく。
行ける! 行ける! 行ける! 行ける! 行ける! 行ける! 行ける! 行ける!
オレ達の攻撃が通用する‼
オレはジート達と心と心が通じ合ったかのような感覚に陥るほど喚起し、気づけば勢い良く手を前に突き出していた
「突撃いいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ‼」
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