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ストラテジー~知略の勇者~  作者: 鷹飛 諒
第一章
18/31

~戦いのその前に~

どうも皆さま鷹飛 諒でございます!

毎度毎度更新が遅くなり申し訳ございません。

今度こそ水曜日に挙げてみせますのでどうか生温かい目で見守ってください。

では!

 日付が変わった今日、襲撃を決め込む前にジート達は作戦の最終確認をしていた。オレが考えた作戦は一度始まってしまえばオレの指示がなくとも進むようにしてある。まぁオーガとの乱戦が始まってしまえば戦況に応じて行動を指示するだろう。だがそれまではあいつらに好き勝手やらせてやろうと思う。今度の戦いの主役はジート達でオレはその後押しをするだけ、今回はそういう戦い。


 目を閉じると涼音達の顔が思い浮かぶ。訓練も周りの人たちの風当たりも辛かったけど、あいつらがオレよりもすごい力を持っているはずなのに、驕らずただ愚直にこの異世界で暮らす人々のために強くなるんだっていう思いが伝わってきたからオレもなんとここまで頑張ってこられた。


 ただ帰りたい。


 あいつらのいる場所へ帰りたい。


 実際、涼音達と出会ってからの日がそんなに立っているわけではない。でも、それでも濃い日々送っていたためかオレには欠かせない心の拠り所になっていた。


 帰りたい場所になっていた。


 でも、そんなオレの思いも頭の片隅に追いやる。


 目的は忘れてない。一番はオーガに囚われている人たちの救出。オーガへのリベンジは二の次でそれはみんなも分かっている。


 気合も覚悟も十分。いよいよ決戦。……でも、そのまえに。


 オレは襲撃の前にマリーに声をかけた。


 あの洞窟でオーガ達にどんなことされてきたのか分からない。あえて聞きもしなかった。しかしマリーはあの場所に強い思いが残っている。それは忘れたい思いなのかもしれないが、これからのためにマリーに伝えることにした。


「マリー、ちょっといいか?」


「は、はい」


 マリーはおずおずと答える。


「これからオレ達はオーガを襲撃する。数人の警護つけるから先に王都に向かってくれ」


 オレは淡々とマリーに伝えた。


「……え? 嘘、ですよね?」


 マリーは目を見開き、ひどく戸惑った様子で愛想笑いを浮かべる。


「……本当だ」


「何を考えているんですか⁉ あなた方は何をしようとしているか本当に分かっているんですか‼」


 マリーはひどく取り乱した。というより激昂しているように見えた。


「ただの人間があんな怪物に叶うわけがないんです‼ 私の命だってあの洞窟で囚われている何人もの人たちの命でこうして生きているんです! たかが私の命の引換が多くの人たちの命なんです‼ ここまで言えばわかるでしょ⁉ あそこに行けば待っているのは死です! 絶対に殺されてしまいます‼」


 マリーはオレの腕がっしりと掴んだ。その小さな手で振りほどけないぐらいにきつく。


「行かせません。絶対に行かせません! もう、誰かが死ぬのは耐えられないんです」


 突然マリーの腰がガクンと砕け、地面にへたり込んでしまった。


 しかし、腕を掴んだマリーの手は微かに震えていた。その表情は何処か一点を見つめ、必死に何かに耐えている。


「……ああ、そうか」


 この子は本当にいい子だ。心の底から思っている。本当に誰かが死ぬのは嫌なんだ。何よりオーガの怖さ

を知っているから、だからこそオレ達のためを思って怒っているんだ。あのオーガの住処で他の人の事なんか考えられなくならないような状況の中でマリーはそれでも他の誰かを思っている。それはこの子が優しいから。


「マリー」


 でもそれはマリーの気持ちじゃない。


 オレは握られている手とは反対の手でマリーの頬にそっと触れる。


 目に涙を溜めながら叫んでいたマリーがオレに触れられて驚いたのかビクッと体を震わせ静かになった。


「君は優しい、それが善いことだと知っているから。でも君は女の子だぞ。たまに本音を言ってもいいん

だ。可愛い女の子のわがまま聞いてやるくらいなんてことないぞ」


 マリーと同じ目線になるようにオレは膝をつき、ゆっくりとマリーの顎を自分の肩に乗せるように抱きしめる。


「ほら、もう大丈夫だ。もう耐えなくていい。何がしたい? オレが、オレ達が叶えてやる」


 ジワリと肩が濡れる感じがした。


「……ぇください」


 か細いマリーの声が聞こえる。


「なんだ?」


「……けて……ください」


 オレはマリーの眼をじっと見つめ、問い直す。


「なんだ?」


 マリーは真珠よりも大きいくらいの大粒の涙を目いっぱい流しながら。


「みんなを‼ 助けてください‼」


 空に響く勢いで叫んだ。


 オレはマリーの言葉に笑いながら立ち上がる。


「おめぇら、聞いたか?」


 オレは後ろを気にしながら声をかけた。


 そこにはジート達が隊列を組んで並んで立っていた。


「ああ、しっかりとな」


「ばっちりですぜ」


「聞き逃したりなんてしないよ」


「確かに聞きました」


 ジート、トンパ、ワイリー、マルコが頷きながら微笑む。


 他の皆も頷いている。


「…………」


 マリーがいつの間にと驚いたような顔でポカンとしてオレ達を見ていた。まぁあれだけ泣き喚けば気づく

ものも気づかないよな。


「オレ達はとっくに覚悟はできてる。こんなやる気満々のオレ達を止めようとしても無駄だと思うぞ。オレ達がやりたいからオーガと戦いに行くんだ。耐える必要なんか全くない。マリーがしたいことを願っていることをそのままいえばいいんだ」


 マリーはまた瞳に涙を溜め、頭を打ち付けてしまうんじゃないかと心配になるくらいの勢いで頭を下げた。


「皆を、よろしくお願いします‼」


 オレは手を振り上げ廃村の方向を指さす。


「出陣だ‼」


「おう‼」





 


 目の前には敵の本拠地の洞窟。バカでかくて威圧感がビシバシと肌で感じる要塞のような洞窟だ。


 そこの奥に潜む食人鬼オーガを、討つ。


 この時を待つこの間の沈黙がとてつもなく辛い。皆の緊張も恐怖も全部が感じられるから自分の胃がきゅっと締め付けられる感じがする。


 辺りを見回すと全員の顔が強張っている。のんきに皆の顔色を窺っているオレもそうだ。


 緊張と恐怖が腹の底でぐるぐるとかき混ぜられ、気持ち悪さに変わって喉まで這いあがってくる。

オレはぐっと槍を持ち直し、深く息を吸って吐いた。


 大丈夫。


 作戦も決めた。


 情報もかき集めた。


 今日のための訓練もした。


 それぞれの配置にはついた。


 覚悟も決めた。


 マリーの願いを叶えるため。


 ジート達が過去を乗り越えるため。


 オレが、オレ達が王都へ帰るため。


 さぁ……決戦だ!




最後まで読んでいただきありがとうございます!

感想、誤字脱字など気軽にお書きください。



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