~決戦前夜~
どうも鷹飛 諒でございます!
今回も遅くなりましたがどうか生温かい目で読んでやってください。
では!
ここからオレ達はオーガ達の監視を行った。
オレ達は二人一組に分かれ、オーガ達の動向を監視する。少人数にしてばれにくくするのと多方面からの細かい監視を行うためでもある。
オレはというとマルコと組み、洞窟を張っていた。
「私たち……本当に勝てますかね……」
マルコが呟く。
うーん……。マルコの言葉を受け、久しぶりに勝つという事に対して考えさせられた。思い返すのはスマホとにらめっこしてる瞬間だけだ。……ごめんね、マルコ……オレ、ゲームしかやったことないんだ。
それでも、オレはマルコの問いに精一杯答える。
「……勝てるって思っても勝てない時があるし、負けるって思えば負けるほうに分がある。どちらになってもきっと勝てないんだよ」
「…………」
「どっちにも必ず欠点があるんだ。勝てるって思ってるときは慢心があるし、負けるって思ってるときは恐怖で頭がいっぱいになってるんだ。でも戦うときにはどちらも重要な要素なんだよ。心に余裕がないと一杯一杯になって思うように体は動かないし、ある程度の恐怖心がないと引き際を見誤る。どっちが書けてもダメなんだ」
オレはマルコに微笑みかける。
「だから、今のマルコが一番勝ちに近いと思う。負けるかもしれないと思っているけれども勝てるかって聞いてるから少し勝つ自信も残ってる。慢心はしていないし恐怖心も程よく感じている。いい緊張状態だ。勝てるさ絶対。オレがいるんだからな」
「ふっ……そうですね」
「ああ、そうだ。ほらしっかり監視するぞ」
オレ達は木々の根に体を密着させ、洞窟とは離れた位置からオーガが出てくるのを待つ。ここに滞在してからかれこれ四時間は経っているような気がする。
オレ達のほかに洞窟の真上の方に一組。廃村からの遠距離の位置に一組の計三組でオーガの監視を行っている。その他はオレの発案した作戦をもとに必要な情報を集めるために動いてもらっている。
今この瞬間にでも刻一刻と過ぎていく時間。この息の詰まるこのオーガが出てくるか出てこないか分からない時間に耐え兼ね、大きくため息を吐こうとした瞬間、地面から微かな揺れを感じ、咄嗟に息を呑みこんだ。
その揺れはどんどんと大きくなり、音の正体は徐々に姿を現した。
――出てきた。
洞窟の大きな穴から出てきたのは相変わらず、緑色の膿の混じった誰が見ても嫌悪しか抱かない肌と仰々しい面構えのオーガだった。
洞窟から出てきたのは三体。
「三体ですか……最低でも一八体はいますね」
オーガは見かけによらず群れで活動する。通常オーガは六体から一〇体で一つの群れを形成する。そしてしばしば群れ同士と組んでさらに大きな群れを形成することがあるらしい。オレ達は洞窟の大きさを鑑みて後者の群れだと断定した。
そしてオーガの習性で食生活が狩りでとれた動物が基本で、狩りは群れの中で一体のみが担当するらしい。しかもオーガは狩り以外ではもっぱら住処に籠るから洞窟から出てきたオーガの数で大体の数を予想することができる。でも……。
「最高三〇体か……覚悟はしてたけど多いな……」
オレは予想を立てた数におもわず歯噛みする。
しかし、今はオーガを監視するのが最重要、余計な考えは捨てよう。
オーガの体臭がこちらに顏って来るまでにオーガ達が近づいてくる。改めて臭いを感じると鼻が曲がりそうだ。やべぇ……気持ち悪くなってきた。
オーガ達がオレとマルコの前を横切ろうとしている。
瞬間、オレは急激な寒気を感じた。血の気が引くこの感じ。
『ああっ⁉ 人間くせぇ気がするぞ』
やばい‼ オーガに気付かれるっ⁉
『てめぇの勘違いじゃねぇのか? それか昨日逃げたガキの匂いが残っているんだろ』
『あのガキのせいでひでぇ目に遭っちまったぜ……今日こそ見つけ出して食い殺そうぜ』
『だな、しかしまだ人間くせぇぞ……このあたりか?』
やばいやばいやばい‼ くそっ……やっぱり土をかぶって体臭をカムフラージュしてもこれだけ近ければばれるか……。
オレは心を落ち着けるため、オーガにばれないぐらいに深呼吸をする。
「……大丈夫、この展開は予想していた。落ち着けば切り抜けられる」
自分に言い聞かせるように呟いた後、オレはマルコと目を合わせ、息を合わせる。
その間にもオーガの足音がこちらに近づいてくる。
それに呼応するかのようにオレの鼓動も早くなる。
もう一度、深呼吸して、緊張を吐き出すように眺めに息を吐く。……よし。
オレとマルコの間でカウントダウンが始まる。
――三
――二
――一
――〇‼
合図と同時にマルコが瓶を樹に目がけて投げ、オレがその方向に風の魔法を繰り出す。
マルコが投げたものは鹿の血が入った瓶、オーガは血の臭いに敏感なので本能的に食いつくはずだ。その瓶が割れた瞬間、オレが風の魔法で瓶から飛び散った血を草木に擦り付け、あたかも手負いの動物が通ったように偽装。
『鹿の匂いだ! それも手負いだぞ‼ 追え!』
『がっはっはっはっは! ぜってぇに狩ってやる!』
『追え追え追え追えぇぇぇ‼』
オーガ地鳴りしているかと思うほど迫力ある声で歓喜の雄叫びを上げながら、森の奥へと消えていった。
「今の内だ! 走れ!」
オレ達はオーガの姿が見えなくなったのを見届けた後、その場を離れた。
「いやぁ……さすがにあれは焦りましたね」
「でもうまくいってよかったよ」
オレ達は力が抜け、尻もちをついた。
偵察は中断してしまったが、オーガのおよそ規模は把握した。他の組の調査次第で勝ちへと導くための材料が手に入る。そうすれば、皆の生存率を底上げできる。
しばらくすると、他の組も調査を終え、ぞろぞろと集まってきた。
日が傾き始めるころには全員が調査を終え、テントを張ったこの草原に集まっていた。
「よし、調査結果の報告を頼む」
オレの前にはトンパ達が作ってくれた廃村周辺の地図が地面に広げられており、ジート達はその地図を囲むようにしゃがんで集まっている。
「和人の言う通りあそこの岩は動かせたよ。まぁ人間の俺達には到底動かせないけどな」
「和人の言う通りに洞窟の周りにある岩に魔法をかけておきました」
次々とジート達はこれまで調べ上げた情報を一つ残らず言いあげた。
ジート達が命がけで集めた情報を噛みしめるようにオレは聞いていた。
「…………皆ここまでよくやってくれた。感謝してもしきれない。
……戦いの日が近づいている。オレも含めて緊張と恐怖が徐々に自分にのしかかって震えてると思う。でも……」
オレはゆっくりと立ち上がり、歯を見せて笑う。
「本当は武者震い、だろ?」
ジート達が笑顔を見せた。
「もう遠慮はいらねぇ。てめぇらの過去と決着つけてこい」
ジート達が覚悟を固めたように一人と、また一人と次々と立ち上がっていく。
オレは皆の顔を一人一人確認し、その覚悟をしっかりと見届けた。
「明日、オーガ潜む廃村奥の洞窟を襲撃する‼」
「おう‼」
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