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ストラテジー~知略の勇者~  作者: 鷹飛 諒
第一章
15/31

~行動開始~

どうも皆さん、鷹飛 諒でございます!

今回は少し短めになってしまいました。

では!






『戦闘開始いいいぃぃぃぃぃ!』


『うおおおおぉぉぉぉぉぉぉ‼』


 自分の魔法により大きく響くオレの声と共にジート達の野太い雄叫びがオレの声を上回る勢いで響いていく。


 いつもの模擬戦闘。だが回数を重ねるごとにジート達の試合運びに変化が見えてきた。


 まず、雄叫びとは裏腹にむやみ突っ込もうとはしなくなった。そして直線の進行より、斜めに移動しながら機会をうかがうのが増えてきた。


 だんだんと隊の軌道は上から見るとまるで円を描いているかのようになっているだろう。


 そう、ファランクスというのは左手に大盾、右手には槍を持つ隊列のために最右翼が必然的に脆くなってしまう。その対策のために一番右の列には強い兵士を置くのが一般的だ。ジート達はその弱点に気付き始めている。数をこなした成果だ。


 だから、ファランクスの攻略法と言えば右から攻めるという事。ここからの戦いは位置取りというのが勝負のカギとなる。


 この訓練を開始してからもう二週間は経つ。ジート達の訓練も形になってきてはいるが、練度がまた足りない。しかし、オーガを発見してからもう二週間たってしまった。オーガに囚われているであろう人間がいるとすれば、生存確率は著しく低い。ここらが限界か。


「ぐわああぁぁぁぁぁ‼」


 オレが思考をめぐらしている間にどうやら勝敗が決したようだ。見たところ地に伏しているのは、ジート達の隊のようだ。


「くそぉ……マルコ強くなりすぎだぜ」


 隊はリーダーをジートとマルコを中心に二つに分けている。


「でも……あまり素直に喜べないんですよね。教官が鬼すぎて」


「だな。ははははは……」


「ずいぶんと余裕じゃないか、二人とも」


 オレの声でマルコとジートは驚いて固まったまま動かない。


「今日はこれぐらいにして切り上げろ」


「…………」


「お、おい……どうしたんだよ?」


 オレが何度呼び掛けてもジート達は固まったまま動かない。


「い、いや……お前こそどうしたんだよ和人……みょ、妙に優しいじゃねぇかぁ」


「そ、そうですよ……和人らしくないですよ……」


 ジートはおろかマルコがそんなことを言うなんて……和人悲しいわ! なんちゃって。だがしかしそんな真剣な顔をされるとなんかイラっとするな。


「なら、やらせてやってもいいんだぞ……」


「い、いやそれはちょっと……というかほんと今日はどうしたんだ?」


 ははーん……ジートの奴め強引に話を変えて来たな。まぁ、いいけど。


「違うよ。お前らのファランクスも様になってきた。さらなる強化を図りたいがあの廃村も気になる。ここからはまず勝つための戦略を考えていく」


「…………」


 皆の息を呑む声が聞こえたような気がした。


 緊張、恐怖、興奮が混じり続け、ころころと変わるその表情に一番多く表れていたのは、ようやくオーガをその手でかけられるという狂気にも似た喜びだった。


「あんまり憎しみで自分の感情を満たすんじゃねぇぞ……荒れた感情ってのは冷静判断を阻害する。自分勝手な感情は集団行動の綻びになるだけだ」


「あ、ああ……」


「……お前らの隣にいる奴らは誰だ? 名前も知らない他人か? 違うだろ。戦争になった時自分の憎しみなどが先行した勝手な判断のおかげで隣にいる奴らが死んだら? それは一生自分自身の重荷となるのは分かってるんじゃないのか。いいか、お前たちは既にこれまで亡くなった人の命を背負っているのかもしれない。だけどな、今この時点でその隣にいる奴らの命を背負っていることを忘れるな。一瞬の判断が仲間の命に直結するんだ」


「…………」


 皆はオレの言葉に押し黙ってしまった。少し言い過ぎてしまったか。


「しかしまぁ、でもそんな心配はしなくていい。正直に言えばオレにはお前らの抱えている現状も思いには同情はしてやれるが完璧に理解してやれることなんて絶対にできない。でもな、お前らの命なら背負ってやれる。戦いの重圧だったら背負ってやれる。ここまで来たら一蓮托生だ。これから起こることすべてオレが背負ってやる。だからついてこい。オレがお前らを勝たせてやる」


 オレはジート達に背中を見せ、先にあの廃村へと足を向ける。


「さぁ、行動開始だ」


『うおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ‼』


 ジート達は背後で今までで一番の雄叫びを上げる。士気は上々。後はオレの腕次第。





 廃村の近くまでやってくると、オレはこれからの計画を皆に伝え始めた。


 まずやることは廃村付近の地形と敵の規模を知ること。これがなければ戦略も戦術もあったもんじゃない。要は偵察だ。


 これをやるのは元狩人であるトンパをはじめとする占めて十人の部隊。人数が多いのは短い時間で廃村の内部をできるだけ把握したいのと敵と遭遇しても多人数だったら生存の可能性が上がる。


「ということはあっしらがやらなきゃいけないことは廃村の詳しい様子とオーガの住処、規模やそこに監禁されているかもしれない人たちの調査でいいんですかい?」


 トンパが張り切ったように手のひらに拳を叩き合わせる。


「いや……」


 オレは少し迷った。これを言うべきか、言わないべきか。


「違うんですかい?」


「……監禁されている人たちは調査しなくていい、というかするな」


「っ⁉ なんでですかい?」


「監禁されている人がいたとして不用意に調査すればその人たちの生存率が低くなる。オーガにとって人質は食料か玩具、性欲のはけ口と同義だ。邪魔だと感じたら即殺す可能性がある。それに、人質を調査されていると気づかれたらこっちの弱みを見せることになる。そしてお前らは監禁されていた人たちを見つけたとして必ず助けるだろう。そうなるとこっちの生存率が低くなる。いいか、感情的になるな。お互いの生存率を上げるにはこれが最善なんだ」


 本当はこんなことは言いたくない。オレだってこんなものが最善手なんて自分で言っていても信じることができない。でも何度考えても同じ答えに行きつく。


 気づけばオレはトンパの肩に手をやり、これでもかというぐらい強く握っていた。


「……分かりやした。行ってきますぜ」


「……すまない」


 トンパたちはオレの一言を聞き届けると廃村の中へと侵入していった。


 トンパたちの姿見えなくなったのを見届けた後、オレは必死に心を静めていた。


 突然背中に衝撃が走り、後ろを向くとジートがオレの背中を叩いた後だった。そのままジートは歩いていく。ジートが行った後、マルコ、ワイリーに続いて他の皆もオレの背中を叩いて歩いて行った。


 ……まったく、かっこいいことしてくれるよ。


 オレはオレのやれることをしよう。

 


最後まで読んでいただきありがとうございます!

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