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ストラテジー~知略の勇者~  作者: 鷹飛 諒
第一章
14/31

幕間~四人の勇者たちは~

皆さんどうも! 鷹飛 諒でございます!

今回は和人遠征中の間のほか四人の勇者たちを涼音の視点で書いてみました。

いつも更新が遅れてしまってすみません……

どうか今回も生温かい目で読んでやってください。

では!

 私、天木涼音は少し気になっている人物がいる。


 彼は何処か飄々としていて少し図々しくて子供には優しくて、顔立ちはあまり目立つほどでもないのに優しい笑顔と時折見せる鋭い顔になぜか心が疼いてしまう。


「おい涼音! そっちにサラマンドラが行ったぞ!」


 思考の途中、大樹の野太い声が聞こえ、そちらの方へ向くと象くらいの大きさはある獰猛な蜥蜴の鋭い牙がこちらを噛み切ろうと迫っていた。


「轟け……」


 私は流れるような所作で足を開きしっかりと大地を踏みしめ、動くたびに揺れる私の髪は徐々に電気を帯びていき、特注で造ってもらった日本刀の切っ先をサラマンドラに向ける。


「雷光ッ‼」


 刀を突き出すと同時に鋭い雷がサラマンドラの額に向かってその刀から飛び出していく。


「グギャアア……」


 サラマンドラは空中で力を失い、身体を壊れた人形のようにうねらせながら勢いよく地面に激突した。


「涼音、大丈夫ですか?」


 壮介が心配した様子で駆け寄ってくると、他の大樹や琴音も一緒に駆け寄ってくる。


「今日はらしくないですね。何かありましたか?」


「いや、ただ最近和人君の風当たりが強い気がしてね」


「それはみんなが気にしていることです。それに今は戦闘の真っ最中です。他の事にかまけたらこっちがやられます」


「……そうだな、すまない」


 私は少し気落ちし、今度は先頭を切って城の方へと戻っていった。





 城の大きな扉をくぐり、目の前に弧を描いた二つの階段と大きなグスタフ国王の肖像画が私たちを出迎え

てくれた。


 ふと、目の端に気配を感じ視線を向けるとサザラールがこちらを見ながら待ち構えており、わざとらしく今気付いたようなふりをしながらこちらに近寄ってきた。


「おお、これはこれは我らが英雄になりし四人の勇者様方、無事の帰還を大変嬉しく思っております」


 サザラールがどうも芝居がかった動きで更に近寄ってくる。


「特に女性のお二方、その華奢なお身体でこの国を救おうとしてくださるお姿に感謝と尊敬の威をここに表したいと思います」


 するとサザラールは慣れた手つきで琴音、私の順に手を取ると、その手の甲に口づけをした。


「……っ!」


「……」


 琴音は怯えた様子で精一杯体を後ろへ反らしながら、顔を歪ませる。


 私はというと顔は無表情を貫いたものの背筋を走る寒気というものを感じていた。一言でいえば嫌悪感。この隠しもしないサザラールの性格には怒りすら覚える。


「おい、サザラールさん。離れてくれねぇか……琴音が怖がってる」


「…………」


 琴音の前に大樹、そして私の前に壮介がサザラールとの間に割って入った。


「これはこれは……申し訳ございません。少々差し出がましいことをしました」


 サザラールは琴音に眼をやりながら、わざとらしい恭しいお辞儀を見せた。


「……そういえばサザラールさん、最近和人君の姿が見えないのですが、サザラールさんは何かご存知ですか?」


 私は気持ちの悪い感じがしながらも表情を変えないよう努めながら、話を変える。だが、気にはなっていたことだ。


「ああ、和人様ですか…………申し訳ございません!」


 サザラールがいきなり頭を地面にぶつけると思ったほどの勢いで深々と下げてきた。


「…………」


 サザラールの行動に私たちは唖然としていると、サザラールはゆっくりと語りだした。


「和人様は……今は魔族領となってしまった村の調査に向かってしまいましたっ‼」


「「「「ええっ‼」」」」


「私は止めました! ですが……和人様は自分も国のため、民のために何かしたいと……涼音様方の足手まといにはなりたくないと仰って、数十人の騎士を率いて五日前に出て行ってしまわれたっ‼」


「そんな……」


「嘘だろ……」


「なぜ……」


「嘘だっ‼」


 私は無意識にそう叫んでしまった。


 嘘だ。嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だっ‼ 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だっ ‼ありえない……和人君が? そんなはずない‼


「そんなはずない‼ 和人君は頭が切れる人だ。そんな勝算も何もないことをするはずが――」


「それだけ! ……勇者という身分が重圧だったのでしょう。我々はそれに気づくことができなかった……ですが和人様がいない今、そんなことを言っていても仕方がありません。我々は和人様が無事に戻ってくることを祈るしかございません……信じましょう、和人様は涼音様方と同じ勇者。奇跡を起こし、ここにまた戻ってきます」


 サザラールがひどくまともなことを言っているが私は確かに見た。サザラールの眼は笑っていた。狐のように眼を細くして。


「がっ⁉」


 私はカーっとなっていつの間にかサザラールを殴り飛ばしていた。


 サザラールはそのたるんだ体を転がしながら地べたを突っ伏す。


「何を笑っているっ‼ なぜそんな無責任なことは言えるんだ‼」


「何をしてるんですか! 涼音ちょっとおかしいですよ! 落ち着いて、くださいっ‼」


 壮介が私の体を後ろから必死に抑え、私はそれを必死に振りほどこうとしている。


「おい、落ち着けって涼音!」


 大和は私の肩を押し、私を食い止めようとしている。


「だめだよっ! 涼音ちゃん!」


 琴音はどうしたらいいか分からないようで、私をなだめながらもオロオロしていた。


「涼音様のお気に何か触れたようなのであれば、このサザラール即刻謝罪いたします。ですがこのサザラー

ルたとえ和人様の身に何かが起ころうとも、その悲劇にも耐えうる強さが勇者様方に備わっていることを私は、信じております」


 頭を下げ言うサザラールの顔は笑っていた。


「この……」


「下衆がっ……」


 私を含め、全員が確信した。和人君は自ら志願して行ったんじゃない。こいつ(・・・)に(・)行かされたん(・・・・・・)だ(・)。


「お前がっ! 和人を無理やり行かせたのか……」


 大樹がサザラールに詰め寄り、胸倉を掴み、顔を近づけた。


「何のことでしょうか? ……私は和人様が行くと仰ったのをしっかりと、この耳で、聞きました。この国に、私に、仕えることが何より幸せだと……申しておりましたぁ」


 サザラールは渇いた笑いを上げながら、その充血した蛇のような眼で大樹を見つめていた。


――この、下衆があぁ‼


 その瞬間私の体から紫の雷が迸り、髪は宙を漂うように揺れ、その雷は地面へと伝播していく。


「ひいいぃぃ!」


 サザラールは私の雷に中てられ、大樹の手を振り払い尻もちをついて後ずさる。


「どうなされましたか⁉」


 騒ぎを聞きつけ騎士はおろか文官、グスタフ国王までが駆けつけてきた。


「どうかしたかの、勇者たちよ」


「国王陛下! サザラールの話はほ――」


「陛下あぁぁ‼ 申し訳ございません! ただいま和人様のことをお話ししておりました」


 私の声を遮るようにサザラールが声を被せて来たかと思うと、またもやあの芝居がかった口調と身振りで今度は神妙な面持ちでその口を開いた。


「勇者和人の事か……よもやあの少年があれほど悩んでおったとは……それに気づいてやれず本当に情けない」


 グスタフ国王が目の間にしわを寄せながら重々しく下を向いた。



 なぜだ? なぜ気づいてない? これはサザラールの狂言なんだ‼ それなのに……。


「勇者涼音よ。悲しい、辛い、信じられない、信じたくない、そなたの中にはこういった暗い感情が迸る稲

妻のように駆け巡っているであろう。しかし、これは変えることのできない事実なのじゃ。これは主らの責任ではない。主らをここに召喚したわしらの責任じゃ。今は信じよう、彼の帰還を」


 私の気持ちなどつゆ知らず、グスタフ国王は私の肩に手をかけながら、優しく声をかける。


「はい……すみ、ません」


 私は優しく見つめるグスタフ国王の目に何も言えず、ただ謝ることしかできなかった。


「少し気を落ち着けなさい……わしらは戻っておるよ」


 私の肩を何度か優しくたたくとグスタフ国王は文官と騎士を率いて階段を上っていった。


「くそ……」


 大樹はこぶしを握り、歯を食いしばっている。


 壮介、琴音も声は出していないものの、どちらも納得のいっている表情ではないのは確かだと思う。


「まぁまぁ、そんなに気落ちせずに前を向きましょう勇者様方。過去は変わらない。しかし未来は、明日は

その様子は無限大なのです。どうか和人様の死を無駄にしないでください」


「勝手な想像はやめてくださいサザラールさん……それ以上喋ったら殺してしまいそうになる」


 サザラールの気持ちの悪いねっとりとした口調に私は心底腹が立った。しかもまるで和人君がすでに死んでいるような物言いが私の殺意に火をつけるのはとても容易だった。


「おやおや怖い怖い。それでは私は少々出かけてまいります。では」


 余裕のある声音で私たちに声をかけ、私たちの間を通り、扉へと向かっていく。


「ああ、そうだ。一つ言い忘れていたことがありました。涼音様、琴音様」


 ふとサザラールが立ち止まり、こちらに振り返って私と琴音に近づき、小声で、


「仲間を失われてさぞお辛いでしょう。もしよろしければ私の体で慰めて差し上げますよ」


「いい加減にしろ‼」


 壮介がいつもとは比べ物にならないほどの激昂を見せ、サザラールに手のひらを向けながら自分の周りに限界までとがらせた氷の柱を出現させた。


「っ⁉」


 壮介は突然後ろから肩を掴まれたようで、集中の切れた壮介の氷の柱は霧散した。


 壮介の後ろに目をやるとアレクさんが厳しい面持ちで荘厳な騎士甲冑を纏った手で壮介の肩をしっかりと握っていた。


「壮介、今は我慢しろ」


「離してください! アレク!」


「今ここで問題を起こしたら、サザラールに弱みを見せることになるぞ!」


 アレクは壮介の肩を離そうとせず、ただ無言で首を横に振っていた。


「…………」


 サザラールは何食わぬ表情で服装を正すと、今度こそ扉をくぐり、外へと出ていった。


「すまない、今は我慢してくれ。今あいつの汚職を必死に調査している。それが解決するまで我慢してくれ」


 サザラールが出て行った後、アレクは深く頭を下げ私たちに頼んできた。


「もうおせぇよ。もう和人がいなくなっちまった……くそ」


 大樹は吐き捨てるように言うと、こちらには顔を見せずにこの場から立ち去っていった。その後に壮介、琴音と順にここからいなくなっていく。


 最後には私も頭を下げ続けるアレクさんを置いて自分の部屋へと戻っていった。





 夜も更け、部屋でランプ一つで過ごしていた私は眠れずにいた。


 頭から今日のことがどうしても離れない。


 私は両手を握り続け、ただただ祈っていた。


「帰ってきて、和人君」



最後まで読んでいただきありがとうございます!

感想、誤字脱字など気軽にお書きください。

次回はまた本編を書いていきますのでよろしくお願いします!

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