~ファランクスと訓練~
どうも! 鷹飛 諒でございます!
今回は予定通りに更新することができてよかったです!
では!
翌日、早速訓練を開始した。
「んで何をやればいいんだ、俺達は」
ジート達の持つ武器をオレはざっと見る。
ジート達が持っているのは両刃の剣、槍、大盾の三つで元の世界での昔の重装歩兵と酷似している。
これからこいつらを鍛えていくと考えると、とてつもなく燃える。一応不謹慎とは思っている。……ごめん。
「いいか? 兵士の基本は一定水準だ。そこから秀でたものが精鋭、英雄になっていく。しかし、王都での訓練は精鋭、英雄を創り出そうと必死で他を切り捨ててその一定水準がまるでできてない。これが格闘技だったら正しい選択だ。才能ある者だけを伸ばし、育て上げればいい。しかし戦争は総合力がものをいう。一人英雄がいても戦争じゃ蟻と同義の存在だ。これからお前らには英雄じゃなく一定水準になってもらう」
「…………」
ジート達は何度も頷きながら、オレの話を聞いていた。
「それでは、私たちは何をすればいいですか?」
マルコは待ちきれない様子でオレに詰め寄る。
「マルコ、落ち着いて」
「そうですぜ、あまり急ぎすぎない方がいい」
ワイリーとトンパがオレがのけ反るほどに詰め寄ったマルコをなだめながら、マルコの肩をさする。
「お前達には隊列を組んでもらう」
「隊列ぅ?」
ニヤリと笑うオレを尻目に訝し気な視線をぶつけてくる。オタクにその視線はやめてほしいマジで。辛いから。
「隊列なんてもん戦争が始まったらぐちゃぐちゃになって乱戦になっちまうだろうが」
ジートが戦争は自分の力量だとその熱い胸板を大きく張ってみせる。
オレはそれを見て鼻で笑う。
そう、王都での模擬戦闘でも最初は隊列を組んでぶつかり合ってきたものの徐々にほぐれ、ばらばらで戦っていた。あれでは模擬でも何でもない、ただの集団のケンカだ。オレは戦術も隊列の重要性を分かってないのが一目瞭然だ。
「言ったろ、戦争は総合力だってな……いいだろう見せてやるよ。オレが言う隊列の力を」
オレはそう言うと騎士兵四〇人を集めて、ついでに魔法部隊二〇人も呼ぶ。
その後、魔法部隊の二〇人を集め騎士の大盾を持たせる。
「魔法部隊二〇人でお前ら騎士四〇人を圧倒してやるよ」
「おいおい勇者様よ、一応俺達は魔法部隊より体を作ってきた自負はあるぜ。俺達を圧倒するのはちょっと無理が――」
「お前らは好きに隊列を組め、魔法部隊の皆こっちに集まってくれ」
オレはジート達を残し魔法部隊にオレの元の世界において古代ギリシアで最強を誇った隊列を子の異世界の人間に伝授する。
「ええ、それだけで我々が勝てるんですか?」
「ああ、勝てる……見かけよりきついけどな」
太陽が真上にちょうど上った昼時の平原。
オレが仕込んだ魔法部隊とジート達の隊列が互いに離れたところで対峙している。
ジート達の隊列は攻撃しやすいように片腕を伸ばしたぐらいの間隔を四方で取って横八、縦五列の隊列を組んできた。武器は使い慣れている剣と盾で持っている手も左右ばらばらだ。
一方俺が仕込んだ魔法部隊は横四、縦五列の小さな隊で右手には槍、左手には大盾で統一されている。隊の間隔は肩を密着、それどころか肩を押し付けあう勢いで間隔を狭くし、縦も前の人の背中に自分の持った盾をくっつけるほどに密着している。
オレはというとその両脇の隊のちょうど真ん中あたりで腕を組み、立っている。
二つの隊はオレの戦闘開始の合図を今か今かと待ちわびている。
では、ここでちょっとした大発表! あれ? 矛盾してるって? そんなの気にしない。発表というのは……新しい魔法を作りました! 魔法っといってもほんとにくだらない魔法なんだけど……。その魔法とは……声を大きくする魔法です! 解説しよう、つまりオレの風魔法に声を乗せて遠くの所までに響かせることができるのだ! これを俺は《軍師の声音》と名付けた。(クリーガーシュトゥム)とまぁほんと糞みたいな魔法です。ちょっと雰囲気を出したいなってことでつくったしょうもない魔法です……それでは気を取りなおしていってみよー!
『戦闘、開始いいぃぃぃぃ‼』
『うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ‼』
ジート達がお互い見据える先の相手へと突進していく。
「うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!」
ジート達が剣を振り上げ、盾を突き出す。
「うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!」
オレが仕込んだ魔法部隊は依然くっついたまま歩幅乱れぬほどに隊が崩れずに低い姿勢のままに突進していく。
オレの目の前で火花が散る三秒前。
――三。
――二。
「ここ!」
オレはうっすら笑みを浮かべ、勝負の行く末を見守る。
ジート達からの攻撃の衝撃が隊全体に広がっていく。衝撃は体を伝い、その威力を弱めながら最後列へと伝わり、地を踏みしめ、前へと進む。その時、オレの隊はまるで一つの生き物ように爆発的な力は最後列から最前列へと波のように流れ、ジート達の喉元へと突然噛みつくように襲う。
「んなっ⁉ ばか……なぁ‼」
ジート達は体勢を崩し、まるでドミノ倒しのように次々と後ろへと吹き飛ばされていく。
オレはこいつらの成長への断片を目の当たりにして、思わず口角を上げてしまう。
そう、これが古代ギリシアで最強を誇ったスパルタの勝利への礎、人と人との絆と団結力が純粋な力に変わる。
「ファランクス」
砂埃が呟くオレの目の前で巻き上がり、砂煙が晴れ、ジート達の顔が伺える。まさに面食らったって感じだな。
「わかったか、これがオレの元いた世界の古代において無類の強さを誇った隊列。そしてお前らがこれから習得する必殺技だ」
今度は皆に聞こえるよう、オレはこの隊列の名を口にする。
「見たか? 体験したか? これが、ファランクスだ」
「ファランクス……」
ジート達は何度もその言葉を反芻している。
「これは数とどれだけ息があっているかで力は何倍にもなる。練度を上げれば上げるほどそれに見合った結果がついてくるんだ。どうだ? これがお前たちの力となるんだ。燃えてきただろ?」
オレはわざと煽るように言ってみた。
それは効果覿面でジート達の方から熱いものが沸々伝わってくる。
「やるに決まってるだろ! これでオーガと渡り合えるんだよな!」
「この威力を知ってはやらないとは言えないですね」
「元からついていくつもりですぜ」
「当然だね」
ジート達はお互いの顔を見合わせながら、精一杯の声で、
「お願いします!」
オレはにたぁっと笑い、
「なら訓練開始だ」
『ぎゃああああぁぁぁぁぁぁあぁぁぁ‼』
ジート達の苦悶の声が森中に木霊する。
そりゃあ当然だろう。戦争にかけては世界一であるオレの訓練を受けるんだから厳しいに決まっているではないか。ハハハハハ! まぁゲームだけど。
「おい、和人! 俺達いつまでこんなことやらなきゃいけねぇんだ⁉」
ちなみに今ジート達がやっている訓練はというと魔法部隊は騎士部隊に身体能力向上の魔法を永遠とかけ続けてもらい魔力の底上げを狙う。騎士部隊は身体能力と精神力、魔力の底上げをするために人数を半分に分け、自分でも身体能力を上げる魔法を自身でかけながらファランクスの姿勢を三〇分間維持した後、模擬戦闘をし、負けた方は勝った方の攻撃を五分間ひたすら盾で耐える。その後全員でファランクスの姿勢を三〇分間維持……っていうのひたすら繰り返す簡単な訓練です。
あ、ちなみに今は五周目で休憩の時間で皆さんお疲れのようです。お日様は……まぁ! 落ちかけているわ! なんという事でしょう! もう終わりにしなければ……なーんてな。
「え? そりゃあ、お前らが完全に意識なくすぐらいにぶっ倒れるまでに決まってるだろ」
「……え?」
「それにしてもよぉ~ジート……お前はまだ元気そうだなぁ。……なら、もう五周ぐらいやれるよなぁ!」
『あ……悪魔だぁあああぁぁぁぁぁぁぁ‼』
どうも、悪魔です。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
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次回はあまり触れられなかったほか四人の勇者たちのお話を更新するつもりです。
次回もよろしくお願いします!




