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ストラテジー~知略の勇者~  作者: 鷹飛 諒
第一章
11/31

~戦闘後と敵の正体~

どうも皆さんこんにちは!

鷹飛 諒でございます!

少し投稿が遅れてしまいましたが、今回も生温かい目で読んでやってください。

では!


 ゆらゆらとオレの目の前で炎が揺れている。


 オレはあの戦いを生きぬ――。


「やあぁったぜえぇぇぇぇぇ!」


「俺達は勝ったんだあああぁぁぁぁぁぁぁ‼」


 ……あの戦いでオレは一回り成長したと思う。


 夜空には星がいっぱいに輝き、まるでオレ達の勝利をしゅくふ――。


『うおぉぉぉっしゃああああぁぁぁぁぁぁぁ‼』


「うぅぅるせええぇぇぇぇぇぇぇぇ! さっきから後ろでごちゃごちゃうるせえぇんだよ! こっちはすこしムード良く感傷にひたってんのにごちゃごちゃと騒ぎやがって! すこしはいい気持ちにさせろよ!」


「なんだよ、連れねぇな勇者様一緒に騒ごうぜ」


 ジートが強引に肩を掴み、いつ荷物に潜り込ませたか分からない酒を思い切りラッパ飲みしている。


 まったく、こっち少しムードを作って夜空の星がとか気持ちの悪いこと言ってんのに……ぶち壊しだよ。


「でも、正直あの時の勇者様の指揮官ぶりは震えましたよ」


 マルコがほろ酔い気味にこぶしを握って興奮していた。


「そうだよ! あのおかげで僕たち生き残れたんだから! 痺れたよぉ~」


 ワイリーもふんだん温厚でおっとりとした印象だったのに今日に限っては饒舌だった。


「今日の功労者は間違いなく勇者様ですぜ」


 トンパが俺の隣にドカッと座って陽気に歌っている。


 そしてオレへの称賛の声が波紋のように広がっていく。


 恥ずかしくなってオレはそっぽを向いた。


「やっぱり勇者様は褒められ慣れていないようだね」


 ワイリー朗らかに笑う。


 馬鹿みたいに騒がしくはっちゃける奴らだが、オレはこの瞬間が心地よかった。手にはゴブリンの肉の感触が残っている。自分の采配で皆を救ったという手ごたえが残っている。


 あの戦いで自分の中の何かが変わったと確信していた。それが何なのか分からないが今はこの瞬間を喜ぶことにしよう。





 ゴブリンとグレイウルフの群れとの戦闘があった日の夜、話し合いの結果、馬の体力的なものも鑑みて馬で一日の距離を更に数日に分けて時間をかけて目的地を目指すことにした。幸い食料は森の中でとれるのでさほど困らない。


 馬で一日の距離を三日かけてオレ達はようやく目的地である村にたどり着いた。


 目的地に着いた後、少し離れたところでオレ達は馬から降り、馬が見つからないよう停めた。


 離れた茂みから村の様子を覗くと、建物も荒れ果てて瓦礫の山になっているところもあって人っ子一人いないくせに妙に生活感があるような違和感があり、不気味な雰囲気をオレは感じていた。


「どうした? 行かないのか?」


 ジートが声を潜め、聞いてきた。


「この村の現状を把握していない。今動くのは危険だ」


「なるほどな」


 ゲームでは偵察もキャラに任せきりのおかげで自分の息で草が揺れるたび緊張が走る。


 オレの喉に塊となった唾が引っかかるような気持ちの悪い感覚が落ちていく。


 刻々と時間が過ぎ、周りの連中はそわそわしだす。


 背後でどんどん増える衣擦れの音にオレはふと空を見上げる。


 先ほどまではまだ青々とした空はすでに朱焼けていた。


「今日はやめておこう」


「なにっ⁉ ここまで来たんだぞ、ただここでじっとして終わりなんてあんまりじゃねぇか――」


 オレはジートの空気を読まない馬鹿でかい声を遮るようにジートの口を手で慌ててふさいだ。


「ばか! 声がでけぇよ。敵に見つかったらどうすんだよ。まだ正体も分からないのに迂闊に飛び込んだら痛い目に合うのはこっちだぞ。しかもこれから夜になる。夜になったら視界も不十分で戦いにも影響が出る」


「んんっ……分かったよ。言う事聞きゃあいいんだろ……」


「助かる」


 オレ達はその場から即座に離れ、森の中で点在する拓けた平原に腰を落ち着けた。





「ところで勇者様よ、これからどうすんだ?」


 ジートがまたオレの隣で樽ジョッキに入った酒を煽っている。


「あのすたれた村に居ついていると思われる敵って奴を突き止める。それまでは不用意には突っ込まない」


「そこまで慎重にならなくてもよいのでは? 私たちには勇者様という最高の軍師がいるじゃないですか」


 マルコはオレが頼んだ夕飯のおかわりを鍋からよそってオレに手渡しながら弾んだ声で言った。


「それは大きな慢心だぞ、マルコ。戦争における絶対的な武器は情報だ。敵の戦力、規模、拠点の場所、弱点、または逆の強み、そのすべてを手に入れることができたらあらゆる状況でも対応が可能になる。そしてもしそのあらゆる情報を持っていないとしたら……極端に言ってしまえば槍の雨が降っていてもオレ達はなすすべなく串刺しだ。戦争は……これも極端な話になってしまうが情報さえ握ってしまえば勝てるんだよ」


「それは、よくわかっていますが……」


 歯切れの悪いマルコ。あまり納得いっていない様子だ。


「例えば、相手が火だという情報を手に入れたとしよう。さぁオレ達は何を用意する?」


「水、かな?」


「水だな」


「そう、普通水を用意するな。水をかけて火を消す。でも、オレは風を用意して火を吹き飛ばす」


「な、なんでですかい?」


「相手の同盟国に雷がいたから」


 そう言うといろんな所から「それはずりぃぞ!」とか「きたねぇぞ!」とかヤジが飛んできた。


「それはあんまりじゃないですか! そんなものは――」


 堪らずマルコも吠える。


「知らなかったから、だろ?」


「っ!」


 オレの言葉でマルコだけでなく他の者も息を呑む。


「いくら水をかけたって雷に直撃してしまえば蒸発してしまうかもしれない。でも風だったら関係ない。もしかしたら火だけじゃなく、雷のおおもとの雲だって吹き飛ばしてくれるかもしれない。

 ずるいって言われるかもしれないが、知っていないと雷にやられていたかもしれない。逆に知っていたらオレみたいに雷も戦闘に参加するかもしれないと予測して最善手を撃つことができる」


「……しかしその情報が偽物ってこともありますよね」


「そう、それが情報戦の奥の深さだ。何重にも重なっている情報の罠を取捨選択でかいくぐりながらこっち側に有利な情報を決定していくんだ」


「…………」


 オレがひとしきり話し終わると、なぜか皆オレの顔をじっと見ながら目を見開いていた。


「……どうしたんだよ、お前ら」


「あんた……ホントに何者だよ」


「何がだよ?」


「いや、あんたまだ一七だろ? 一七でそんな戦争に詳しい奴は見たことねぇぞ……」


「やっぱり勇者様は呼ばれるべくして呼ばれた勇者様ですぜ!」


「やっぱり五人の勇者の一人なんだねぇ」


「さすがです。御見それいたしました」


 やめてくれ、ジートもトンパもワイリーもマルコもそれ以上は褒めないでくれ。もうオレの体力ゲージは〇に近いよ。言えない……ゲームというお遊戯をより楽しむために軽い気持ちで身に着けた知識とかスキルなだけでそんな高尚なものじゃないんだっ‼


 その間にも尊敬に近い眼差しがオレの体中に突き刺さり、むずがゆいような恥ずか死ぬような気持ちになってしまう。


「ああ! もう! とりあえず今日はこれでお開きなっ。明日また偵察に行くぞ!」


 オレは半ば強引に話を切り、そそくさと地に敷かれた布に横になって毛布にくるまった。


 オレの背後からはくすくすと堪えているような小さな笑い声がぽつぽつとそこかしこで起きる。


「やっぱり、勇者様は褒められ慣れていないようだね」


 ワイリーの声がなぜかはっきりと耳に残った。


 …………うるせ。





 日を超えてオレ達はまた村へと向かい、昨日と同じように離れた茂みの所で村の様子をうかがっていた。


「う~ん、やっぱり無人なのかな?」


 オレは呟くように唸っているとジートが隣で真剣な表情で村のあちらこちらに目を向けながら探っていた。


 オレはその横顔を少しニヤニヤとしながら見つめていると、ジートがオレの視線に気づき軽く睨んでいた。


「……なんだよ」


「なんでも……」


 オレは適当にはぐらかし、また村の様子を探る。


 今日の天気はひどく快晴で額から汗がにじみ出てはそれを拭うことに腕を忙しくさせていた。


 風なんかは数時間に吹くか吹かないかと言ってもいいぐらいに感じることなく、汗をかくのを更に助長させていた。


「なかなか敵も村の様子も分かりませんね」


 トンパのようにぽつぽつと不満も出始めた頃、今まで一番強い風が吹き、至福の瞬間だと思わず頬を緩めようとした瞬間、オレ達はほぼ同時に顔を強張らせた。


 風が吹いて一瞬間が開いたとき、突然風と共に強烈な臭いに襲われた。


 咄嗟に鼻と口を塞ぐほどのそれは獣が持つ特有のものではなく人が何年も風呂に入っていないような、唾液を身体に塗りたくったような誰もが嫌がる腐ったような臭いだった。


 その臭いは風が吹くごとに強烈さを増していき、それがピークに達した時、オレ達は全身の毛を逆立たせる勢いの悪寒に襲われた。


 必死で今にも叫びだしそうな声を必死に抑えて自分達の真横を歩いているその臭いの正体はオレ達の目を釘付けにさせていた。


 それは一番身近で決して出会いたくない緑色の怪物。


――オーガ……。


最後まで読んでいただきありがとうございます!

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