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夢想の瑞希  作者: 木崎 しの
瑞希編
7/66

右腕

いつものように起床し昨日のように学校へ向かった。

今日も昨日と同じような学校案内をされた。

授業は月曜から始まるらしい。


そして巣穴まで戻ってきたのはなんやかんやとしていたため午後の6時くらいだった。

昼は適当な店で済ませた。




「で、そのメモリーってのがこれなの?大丈夫?爆発しない?罠じゃない?ウイルスじゃない?で、大丈夫?頭?妹のパンツ被りすぎて頭イカレちゃった?」


昨日あの男から受け取ったメモリーを瑠璃のもとに持ってきたのだが失敗だっただろうか。酷い言われようだ


「いや、特にそんなものは入っていないと思うが、よく分からない画像と狂人が書いたらしいテキストしか入っていなかった」


「中身分かってんじゃん。私にそれ以上何させたいわけ?」


めんどくさそうな態度を少しも隠そうとせず瑠璃がそう口にする。


「いや、テキストの方はあれだが…画像の方がすごく気になった。詳しく調べてくれないか?」


「…まぁ、いいけど、暇になった時間だけだよ?それでいいならやったげるけど」


「感謝する。」


頭を下げる。


「気持ちじゃなくて金で払ってほしいわね変態パンツ」


「だから…あれはあの馬鹿が捏造した事で嘘だ」


「でも、火のないところに何とやらって言わない?あんたが寝ぼけて被ったとか」


「…否定は出来ないな」


悔しいが眠っている間のことまでは分からないため絶対にないとは言い切れない。


「そんな泣きそうな顔しないでよ…」


「そんな顔してない」


「悪かったわよ冗談よ。冗談。私が虐めてるみたいじゃない」


瑠璃が少し申し訳なさそうな顔を作った。


「で、このメモリーね。何か分かったら連絡するわ」


「恩に着る」




町のとある建物の屋上


「さて」


「さてってなんだよ。」


「じゃあこういう時は何て漏らすべきなんだよ」


「もっと、こう、最愛の女に最後の挨拶をするような感じで」


「なるほど。こうか」


隣にいる馬鹿は顔を伏せながら言葉を放つ


「…ごめんよ。僕もう帰ってこれないかもしれない…」


言うと俺の両肩を掴み顔を上げると俺の目をじっと見つめる


「ずっと好きだったよ。君のこと」


その台詞を聞いた瞬間俺の拳は勝手にこいつの頬を捉えていた


「え?」


「ごめん。なんか気持ち悪かったから」


「お前がやれって言ったんだよね?!」


「誰も俺を女に見立ててやれなど一言も言っていない」


「ぐぬぬ…」


「そんなとこで蹲っていても何も進まんぞ早く立て」


「厳しいねぇ」


こいつと仕事をせねばならんと思うと今から気も沈むな




「で、今日は何するんだっけ?」


突然そんな事を聞いてきた


「お前…何も知らずに来たんだな…」


「当たり前じゃん瑞希が知ってると思ったから」


「俺もいくら裕平でもそれくらい調べていると思って見てこなかったよ…どうすんだよ…」


「はぁ?まじで?!じゃあどうすんだよ!」


この建物の持ち主が声に気付いたらどうするのだ。それくらいの声量だった。


「馬鹿声デケェよ」


「ごめん。でもまじでどうするの?」


「冗談だよ。」


「何がだよ」


顔面を真っ青にしている馬鹿。まじでこんな嘘信じたのか?


「調べてないって話だよちゃんと調べてきている」


「良かったぁ脅かすなよ」


目的だけ伝える事にした


「あの家の主人の暗殺だ」


「へーいへい。さぁてじゃあ気合入れますかねぇ、で?殺し方は?」


「全て任されている」


「任されてるんじゃなくて押し付けられてんだよそれって。責任取りたくねぇしな上も。ミスはぜーんぶ末端の責任、かぁぁぁ、辛いねぇ。で、プランは?」


「ゲートを使おうかと考えている」


「ま、それが一番楽だわな。座標は分かってんの?それと相手はパンピーか?」


「あぁ、分かっているし一般人だと聞いている。適当にザッと調べたところこちらの動きに感づける人間もいない」


「ならゲートで繋げて狙撃すれば終わるな。簡単な仕事じゃん」


まるで終わったら教えてくれとでも言わんような態度で後ろに下がり地面に胡座をかき始めた


「終わったら教えて」


…何と言うか。

俺が無言で右手を横にかざすとその空間はぐにゃっと歪んだようになる。

入口の完成だ。後は出口を先程調べた座標で設定する。これでゲートは完成だ。


「なぁ、瑞希?」


「なんだ」


「前から思ってたけどお前が作るゲートってなんか歪んでるよな。あと、近くで見てると酔いそうになるわ。もう少し綺麗に作れんのか」


「綺麗にしようとしたこともあるが全然直らない」


「そりゃご愁傷さまで」


懐から銃を取り出す。ハンドガンだ。銘は忘れたが何だかと聞いたことがある。

弾から始まり、銃身も何もかもが組織の特注品である。

それをゲートに向けて構える。狙うはターゲットのこめかみ。

俺は狙いを定め引き金を引いた。





「おい、瑞希夜はまだまだだぜ?」


巣穴に帰った後も裕平はまとわりついてくる


「そうだな」


適当に返事を返す。


「酒とかどうよ。安いのだけどな」


「悪いが、弱い体質でな。というよりお前知ってるだろ?」


「まぁ、そう言うなって。1人じゃ寂しいだろ?」


「その辺の女でも引っ掛けりゃいいだろ」


「あ、僕そんな男じゃないから。一途な男だぜ?」


「酒を飲むだけだろ。一途もクソもあるか」


「酒を飲むと酔うだろ?僕のあれも元気になるんだよ。そうしたら僕はよく知りもしない女を歯牙にかけるだろ?浮気はしないんだよ僕は」


付き合ってられん

語り出した裕平を放置して歩き去る





「所長、今日は何の用ですか。」


この人はいつ寝ているのだろうか。いつも起きているイメージがある。


「用がなければ呼び出さん」


ご尤もで。


「俺の右腕だった男の話はしたことあるか?」


いきなり言われても。あんたの過去なんて全部知らん、むしろあんたの事俺は名前しか知らないぞ。それも記憶が曖昧だ。


「いえ、ないです」


「使えねぇな。何で知らねぇんだよ。出来損ない」


「すみません」


「今から話してやる。そこそこ重要な事だ。覚えておけ。名前は忘れたが数年前まで俺の右腕がいてな。かなり優秀な男だった」


右腕とまで評した男の名前を忘れるか?普通。それより


「数年前?今はいないんですか?」


「あぁ。現在は行方不明だ。離反された。当時まだ職員にはタグの装着を義務付けていなかったからな。逃げようと思えば簡単に逃げられた。逃げる奴はそんなにいなかったが。その際に何人か任せていたブレイカーを連れていかれてな。100程だった覚えがある。」


「ごっそりいかれましたね。にしても何故それは離反したんですか」


「俺のやり方では効率が悪いと言っていてな。普段から反抗してくる生意気なやつだった。優秀だから傍に置いていたが。

最近まで野垂れ死んだのだろうと思っていたがどうも違うらしくてな。新たな組織を立ち上げているとの情報が入ってきた。それもこちらと張り合えるぐらいに力を付けているらしい。」


「潰せ、と」


「あぁ。力を付けているとは言えあれが連れていったブレイカーはそう多くない。あれから5年ほどだと思うが、多めに見積もって現在の数は300、それくらいだろう。これ以上成長する前に潰せ。と言いたいのだが何処に本部があるかまでは分かっていなくてな。頼むのはまだ先になりそうだ。とりあえずそういう依頼をするかもしれないということは覚えておけ。」


「はい。」


「用はない。失せろ」


所長は忙しそうにまた新たな資料に目を通し始めた。俺は極力音を立てないようにその部屋をあとにした。

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