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夢想の瑞希  作者: 木崎 しの
神父編
39/66

苦悩

夕食をとったあと部屋に戻る


「…分かりません」


悩ましいな。夏海に基礎を教えているのだが理解してくれないらしい。


「何処が分からない?説明し直すが」


人に教えたことなど当然ない。やはり教え方が下手なんだろう。


「いや、そういうんじゃなくて…いきなりそんな事言われても飲み込めない、みたいな。」


「そういうものだ。飲み込んでほしい。現に俺はできているし、お前もしてみせた。」


そうだな。例としてやってみるか、手のひらに氷の剣を作り握ってみせる。


「ほらな?そういうものだ。理屈はどうだっていい。結果こうなる。それだけ理解してくれたらいい。とりあえずイメージしてみるといい。自分が氷の剣を握る姿を」


自転車の乗り方や呼吸の仕方を説明するようなものだ。最終的には本人に感覚として分かってもらわねばならない。


「一切隙のない全能型で有名な瑞希さんにそう言われてもこまる人多いと思います」


陽菜が口を挟んでくる。


「俺もそう言われても困るのだが…もう1度説明し直すぞ。」


幻とは何なのか俺たちブレイカーとは何なのか。


「まず、超人と呼ばれる人間、何でもいい。怪力の持ち主だったり、音速で走れる奴だったり、とりあえず人間の域を超えた者達それがブレイカー。人間として生きる為に付けられた枷を壊し、人間を超越した者それがブレイカー。ここまで理解出来るか?」


「瑞希さん達みたいな人の事ですよね」


頷く。お前も、なのだが。


「で、枷というのはそのまま、枷だ。人間は普段己の力の全てを出し切れていない。まぁ俺の聞いたところによると殆ど出せていないらしい。何故出せないのか。出せば体が持たないから。

そのため無意識下で枷を付けている。火事場のバカ力という言葉を聞いたことはあるだろう?それは要は枷を外しているだけなんだ。それで秘められた力の解放を行い、普段以上の力を出せるようになるらしい。そして、これはまだ人間として死んだり壊れたりしない限度。

これ以上出せば死ぬのでやはり枷がある。普通の人間が工夫して出せる力はここまで。その程度までというわけだ。」


夏海が頷く。ここまでは理解してくれたらしい。


「だが、この程度の枷も普通の人間は自分の意識では外せない。無意識に外しているだけ。

では、意識して外せるようにするにはどうすればいいのか。お偉いさんがたが、熱心な研究の末出された答えは人間のままでは不可能。そこで編み出されたのがブレイカーと呼ばれる人間を超えた何か。こいつらは自分で己の枷を外せる。それが俺とお前。理解したか?」


「はい」


「で、ここで疑問なんだが、ブレイカーに外せて人間に枷が外せないのは何故なのか。それが幻。幻というのは簡単に言うと干渉力のようなもの。これは一応、人間は誰でも持っているのだがブレイカーはそれの量が人間に比べて文字通り桁違いに多い。それが人間とブレイカーの違い。」


「…」


少し難しそうな顔をしているがこれは理解してもらわないといけない。


「干渉力というのは読んで字の如く干渉するための力だ。本来変えられないものを変えるための力。」


そこで部屋の外から気配を感じた、声をかける。


「どうしたよ。クソ神父。入ってきていいぞ」


「クソ神父ですか。いやいや。相変わらずお口が悪いですね瑞希。」


そう言いながら入ってきたのは熱心に神を信じる神父。


「あなたの行為は神も見ていますよ。それだけ口が悪いと神罰があります。」


「そりゃあ参ったね。で、何しに来た?」


「いえいえ、この手の説明貴方は苦手でしょうと思ったので私がしに来たのですが、不要でしたか?」


夏海への説明の事を言っているのだろう。


「いや、丁度いい。変わってくれ。」


それにこいつだとこの手の話は相性がいいかもしれない。


「では、私が引き継ぎましょう。干渉力からでしたね。」


俺は神父にソファを譲りベッドに移り二人の会話を眺める。神父が対面の夏海に声をかけ始める。


「こんにちは。若き少女。私はベルリーチェ。見ての通り神父です。彼は神父と、名前で呼んではくれませんが、出来れば名前で呼んでいただきたい。愛称はベルです。」


「は、はい。私は夏海です。」


「彼は説明が下手くそなのでどうか許してあげてほしい。私が代わりに説明しますので、干渉についてですが」


神父はそこで一つ息を吸う


「ずばり信仰心です。」


「信仰心?」


夏海が首を傾げる。

無理もない。


「例えば、こういう話を聞いたことはありますか?腹痛の時は痛くないのだと思え。そうすれば本当に痛くなくなる。のように思念が現実に影響を及ぼすという話を」


「ありますね」


「要はこれはそういう話なのです。夏海さん、例えば今自分が氷の剣を握る姿を強くイメージしてくれませんか。余計な考えはせず、ただ、自分は氷の剣を握るとだけ強く。強く」


そういう神父の言葉は非常に重い。真剣そのものだ。

影響されてか夏海も真剣に聞き目を閉じる。

意識しているのだろう。

そしてしばらくしたころ、やがて夏海の右手に剣が現れ始めた。本当にうっすらとだが


「つめた!」


その一言で消えてしまったが。コツは掴めただろう。


「夏海さん、これが神のお力です。」


神父が夏海に笑顔を向ける。

俺とそう歳は変わらないくせにその異常な信仰心から神父の座についた男。流石としか言い様がない。俺の説明とほぼ変わらないはずなのに1回で説明に成功しやがった。

いや、奴の干渉力がそうさせているのかもしれない。奴はきっとこう思ったはずだ。

━━━彼女なら出来る、と。

それもあって初回で成功したのかもしれない。


「わぁ、すごい!ベルさん、ほんとに出来ました!」


満面の笑顔を神父に向ける夏海。


「神に祈りましょう。貴方の祈りも届きます。鍛錬も忘れずに。日々精進ですよ。さて瑞希さん、あとの説明はどうしましょう?」


少し考えて残りの説明項目くらいは俺でもなんとでもなるだろうと思い至る。


「いや、俺がやっておく。助かったよ神父。」


「そろそろ、名前で呼んではいただけませんか?」


「悪いな。神父が一番呼びやすいんだよ。」


微妙に悲しそうな表情を浮かべる神父。


「もしかして私は嫌われているのでしょうか」


「いいや。嫌ってはいない。好きでもないが」


素直に答えておく。人間としては好きだが神を信仰し過ぎているのははっきり言って気持ち悪い。

それに本当に神が万能な存在なのなら、あんたの悩みも解決しているだろうに、その事に気付かず、ただ祈り続けるその姿はもの悲しくもある。


「そうですか。私は貴方を愛していますよ瑞希さん。貴方に神の御加護があらんことを。では、夏海さんも陽菜さんも。今晩はこれで。それと瑞希さん。穢化が進みすぎです。私でよろしければ浄化のお手伝いを致しますので何時でも気軽に」


「あ、ありがとうございました!」


元気よく返す夏海。


「あぁ。気が向いたら行くよ。」


俺も返事を返す。

一言も言葉を発していない陽菜にも律儀に別れを告げて神父は部屋を出ていく。

それを見送りソファに戻る。


「続きだが、えーっとそうだな。よく考えればこれで終わりだ。」


「そうなんですか?」


「そうだ。お前の中に幻がある事も分かったし使い方もお前は感覚的に知った。ならばもう終わりだ。他に何か質問はあるか?」


よく考えれば呼吸の仕方についてあれやこれやと説明できるものでもないのと同じようにこれについてもあれやこれやと説明できない。


「枷はどうやって外せばいいんですか?」


「そんな事か。もう外してるじゃん」


「?」


本当に理解してないような顔をするなこいつは。


「普通の人間は氷の剣なんて作れない。お前は枷なんてとっくに取っぱらってるんだよ」


能力を使った段階で俺たちは枷を外していると認識している。


「あ、たしかに!」


気付いていなかったのかこいつは


「じゃ、身体能力の強化はどうすれば?」


「同じだ。ただ自分が強くなるといったイメージをすればそれで強化出来る。慣れるまでは難しいかもしれないが。不安なら訓練に俺も付き合おう」


「じゃあまたやりたくなったらお願いしますね。それと穢化というのは?」


「お前は知らなくていい」


「教えてください」


そんな真剣な目で見るなよ。


「…魂が穢れること。穢れるのは俺や神父のような特別な人間だけだ。気にするな。尤も神父は自分が穢れている事に気付いていないがな。」


「どうして穢れるんですか?」


「お前には関係の無いことだ。知りたいのなら神父にでも聞くといい。尤もあいつも答えてくれないだろうがな」


これで説明は終わりだ。

立ち上がる。


「何処か行くんですか?」


「神父のところだ。少し話がある。」


「私も行きたいです。」


「辞めておけ。」


陽菜に少し視線を送ると察してくれたようだ。


「夏海さんには仕事がありますのでそれを終わらせてください」


黙っていた陽菜が夏海に声をかける


「分かりました。それなら仕方ないですね」


すんなり引いてくれたようだ。そのうちにさっさと外へ出る。


「あっ…」


廊下に出たところ見知った顔に出会う。


「どこ行くつもりだ瑞希」


そこにいたのは恋夜。


「クソ神父のとこだよ。お前はどう?にしても偶然だなこんなところで出会うとは」


いや、偶然じゃないのかもな


「その件だよ。さっきそのクソ神父様とすれ違ってな。あの聖人様が『恋夜さん貴方も愛していますよ』とか抜かしやがるから文句の一つでも垂れてやろうと向かってたわけよ。」


なるほど。話は理解した。


「じゃあ一緒に行こうか」


「あぁ、いいよ」





「邪魔するぞ。クソボケ神父」


恋夜が部屋につくなり強引に扉を開けて先にズンズンと進んでいく。


「お待ちしておりましたよ。瑞希さん。恋夜さんはどのようなご要件でしょうか?」


そんな失礼な入室を咎めもせずいつもの笑顔で応対する神父


「いやなに、神父様の有難い御高説を賜りに来たんだよ。どうやったらそんなに万人を愛せるのか、とかよ」


ドカッと上質そうなソファに腰掛けながら話す恋夜。


「それはそれは恋夜さん。貴方にも理解して頂ける日が来るとは、どうぞ聞いていってください」


恋夜の明らかな皮肉に対して神父は丁寧に返す。いや、この神父もしかしたら皮肉というものを知らないのかもしれない。

対する神父も対面のソファに腰掛ける。

俺は恋夜の横に座ることにした


「瑞希さんは浄化の依頼ですか?」


「いや。別件で俺はあんたに話があってきた。長くなるから恋夜から話せばいい。」


「だとよ。神父さん。さぁて御高説、話してくれや」


目の前のローテーブルに足を投げ出す恋夜。


「恋夜さん余り雑に扱わないでいただきたい。彼らにも心はあるのですよ。今彼は痛いと言いました」


流石に目に余ったのか神父が咎める。


「物に口があって堪るかよ。いい加減頭の病気だ。瑠璃のアホにでも見てもらえよ。いや、そうしたらもっと頭がおかしくなるかな」


悪いが今回は俺も恋夜に同意だ。この神父余りにも頭がおかしい


「恋夜さん、とりあえず足を下ろしてはいただけませんか?彼らは無辜な存在」


それでも優しく願う神父。


「俺は下ろさねぇよ。丁度いい高さの机なんだ。むしろテーブルも足置いてもらえて喜んでるよ。それにあんたもティーカップを置いてるじゃないか。俺の足とティーカップじゃ何が違うんだ?まさか俺の足が汚いとでも?」


押し黙る神父。攻めには弱いらしい。と思ったその時だ。


「彼が嫌だと言っています。下ろしてください」


「おいおい、瑞希、頭の病気だぞこの神父」


俺に振るな。その様子を見かね俺も恋夜を注意する。


「恋夜、下ろせ。ここは神父の部屋だ。お前の部屋じゃない。神父の言うことに従った方がいいと思うが。」


じゃないと話が進まない。いや恋夜に話があるのか、どうか知らないが。文句を言いたいだけだと言っていたな。


「分かったよ。下ろせばいいんだろ」


恋夜が漸く足を下ろす。素直だな。


「恋夜さん。貴方の改心を神もご覧になっています。貴方にも神の御加護があらんことを。」


「お、そりゃ有難いね。一夜でもいい、とびきりの絵に書いたような美女が相手でもしてくれんのか」


全く信じていないらしい恋夜。当然だ。神の加護なんぞないと思うのが普通だ。


「それは神のみぞ知ります。」


やっぱり神にも出来ることと出来ないことがあるらしい。

恋夜が目で合図を送ってくる。俺はもういい。お前が話せと。

本題に入ろう。


「神父さん。あんた人を殺したことはあるか?」


「何故、そのような事を?」


訝しる神父。


「答えてくれ」


真剣な視線を送る。冗談でも何でもない。


「ありませんよ。」


「なるほど。分かったよ。」


「話はそれだけですか?」


「いや、まだある。ここじゃ場所が悪い。今から時間あるか?上に出たいんだが」


地上を指さす。


「構いませんよ。」


「そうか。少ししたあとあいつの墓の前で。恋夜は外してもらえると助かる」


それだけ伝えると部屋をあとにする。





「おまたせしました。瑞希さん」


「いや、呼び出したのは俺だ。気にするな。」


「いったいなんの話でしょうか?」


「あんた、前にここで俺に死者に会いたいかと訊ねたことがあったな?」


「はい。」


「今度は俺から質問だ。あんたはどうだ?」


「愚問ですね。会いたくない人間がいるのでしょうか。」


肩を竦めながらそう言う神父。


「さてな。そこは個人の考え方だ知らんよ。」


「それもそうですね。」


「次の質問だ。あんたの信じる宗教に死者を蘇生させるような手法はあるか?」


神父の顔が珍しく厳しくなる。


「貴方、いったい何を考えていらっしゃるのですか?」


「ただの世間話だ。実際に実行するわけじゃない。どうなんだ?」


「言い伝えだけはあります。真偽は分かりませんが」


「どんな手順なのか。教えて欲しい」


「やめておきなさい。死者の蘇生など。」


諭すように神父が言う。


「何故だ?」


「貴方の狙いはわかります。彼女を蘇生させたいのでしょう?」


「だとしたらどうしたのだ」


「貴方がやろうとしていることは彼女への冒涜にほかならない。貴方は彼女の最期を覚えてはいないのですか?むしろ貴方が一番知っていると思っていましたが。彼女が何を思って犠牲になったのか。貴方はその決断を踏みにじるのか?文字通り命を賭した最後の決断を。」


神父が真正面から俺を見つめる。


「まさか。あんたからそんな否定の言葉が聞けるとはな。俺は感激だよ。」


「瑞希さん。私は貴方を愛していますが、何でもかんでも頷くのが愛だとは私は思いません。もう一度よく考え直して頂きたい。貴方がそれをして彼女が満足するのか。一度死んだ人間を蘇生させるということの意味をもう一度考えてほしい。」


「考える必要などない。教えろ」


なんにせよ、だって蘇生できるのなら誰だって蘇生したいだろう。

神父は頭をガリガリとかいてから語り出す。


「10の人間を集めてください。それをとある方法で向こう側に落としますと、貴方の願った彼女は生き返ります。」


向こう側とは死者の国だろう。


「簡単なことだな。そんなことでいいのか?」


欠伸が出そうだ。


「はい。ですが、先程も言いましたが真偽は分かりません。誰も試したことがないのです。蘇るかも分からないのに生きた人間10人を殺すなど並の精神では行えません。それに行うと確実に穢化が進みますよ。」


その言葉を笑い飛ばす。


「構うものか。もとより腐りきった身だ。で渡し方は?」


「不明です。」


肝心のそれが不明なのか。ならば手探りで進むしかない。


「そうか。」


「瑞希さん。もう一度言います。やめた方がいい。」


「聞き飽きた。それにさっきも言ったが本当でやろうとしているわけじゃない。参考程度だよ」


「その言葉が嘘でないことを祈りますよ。」


「あぁ、嘘じゃない。信じられないか?」


「私は信じていますが一般的には信じられないでしょう。貴方は必要があれば躊躇なく何かを切り捨てる人間。その気になれば恋夜さんや竜馬さんも切り捨てるでしょう。貴方のあり方は狂っている。そのようなあり方はやめた方が宜しいかと。そのうち何かを失います」


心外だなそんな風に思われていたなんて。だが


「…一番狂っているあんたには言われたくないな」


「はて、私の何処が狂っているのでしょうか?」


神父は首を傾げる。やはり自覚していないのだな


「何でもかんでも愛そうとするところだ。あんたみたいな人間、俺は他に知らない」


「私は神に仕える人間なので、全てを愛せ。それが全てですよ。」


さも当然のことであるように目の前の神父は語る。

だがこれだけは確認しておきたい


「やはりあんたでも一番愛しているものってのはあるものだろう?」


神父は首を横に振る。


「いいえ、全てに愛を」


「建前じゃなくあんたの本心が知りたい。」


「いいえ、本心ですよ」


「それが本当だとすると、やはりあんたのあり方の方が狂っている。」


「どうしてですか?」


「あんたの中に特別がいないから。人は特別な存在を持つ生き物だ。そういった意味ではあんたは人間としてやはり狂っている。」


誰とてそうだろう恋人と知らない人間が人質に取られ、どちらかしか助けられないといった状況で赤の他人なんて救わない。

まだ分かっていなさそうな神父。


「こいつが嫌い、でもこいつは好き、だから好きな方を贔屓しよう。これが普通の人間。あんたの場合はこいつは好きこいつも好き。だから両方贔屓しよう。これであんたは愛しているつもりかもしれない。だが全員に平等に与えるものを愛と呼べるか?俺は呼べないと思う。あんたを狂っていると言った意味分かったか?

あんたは特別な存在を持っていない。あんたは全てを愛しているつもりなだけで、その実一人も愛していないんだよ。まぁもっとも俺が狂っていると思っているだけだが。」


俺から見た神父は少なくともこうだ。


「つまりあなたから見た私は愛しているつもりになっているだけだと」


「そうだ。全員を愛するなど絵空事。」


「なるほど。それは困りましたね。ではどうしたらよいのでしょう」


「それを考えるのはあんた。それに俺の感想だ。今まで通りあんたの愛とやらを貫くのもよし。新しい道を探すのもよし。だがなもう一つ言うと俺はあんたの愛とやらを感じたこと今までに一度もない。」


それはやはり紛れもない事実。ほかの他者を捨ててまで自らに何かをされた時、人は愛という特別なものを注がれている実感を感じるのではないのだろうか。俺はそういう意味ではこの神父の愛というものを感じたことがない。これではただの自己満足だ。


「これで話は終わりだ神父さん。呼び出して悪かったな」


「いいえ、貴方と話せて充実しましたよ瑞希さん。」


2人で地下に戻る。


「瑞希君〜」


廊下を歩いていたその時余り聞かない声が背後から聞こえてきた。この声は、そうだ彩華か。そっちに振り返りつつ答える


「どうした?何か用か?」


「用ってほどでもないんだけど」


俺の隣に立つ神父に顔を向ける彩華。


「彩華さんこんばんは」


にっこりと微笑みかける神父。本当に誰にでもこうだなこいつは。


「こんばんは神父さん。」


「誰もベルと呼んでくれませんね」


神父は少し気を落とした動作をする。


「神父もベルも変わらんだろうよ」


「変わりますよ!」


怒ってはいないが叫んできた。その表情は少し寂しそうだ。


「いいですか?瑞希さん。名前とはただの記号ではなく、文字列でもなく…」


一人語り出した。長くなりそうだ。


「で、彩華は何しに来たんだ?」


「瑞希君と話に」


「俺と話してもつまらんだろう」


「確かにつまんないね」


彼女は笑ながら言う。地味に傷つく。


「でも、何故かそのつまらなさが安心出来るんだよね」


「そうなのか。俺にはよく分からんな。ここで立ち話もなんだし、俺の部屋に来るか?」


何も出せないが。


「うん。行く」


未だに何かを熱く語っている神父をその場に捨て置き俺は彼女を連れ部屋へ戻る。





何とか一話投稿です…

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