連続失踪事件捜査 二日目
「日曜の朝からお互い大変ですね」
俺は昨日の夜にいったハンバーガーショップで今度は朝食を買ってから待ち合わせ場所に来ていた。バイクに跨ってコーヒーを飲みながら話す
「いえこの街のために働けるのは私の喜びですから」
随分とまぁ素敵な思想をお持ちなようだ。俺とは正反対の人間だな。
「いつも飲んでらっしゃる気がしますけど、コーヒーお好きなんですか?」
俺の手元のコーヒーが目に入ったのだろう。問いかけてきた。
「好きという訳でも無いですね。これが無ければ締まらないって言いますか。ま、気持ちの問題ですね」
「なるほど。」
ハッシュポテトを齧る。今度はそれを見て口を開いた。
「要らぬお世話ですがジャンクフードも程々にした方がよいですよ。」
「昨日今日は食欲がなかったからこれなだけで、普段はこんなものほとんど食べませんから、安心してください」
「なら安心できますね。そういえば昨日も行方不明者が出たそうです。今朝私たちの方に連絡が来ました」
その報告に苦虫を噛んだような表情をする。言われても起きてしまったものはどうしようもない。
「なるほど。場所はどの辺ですか?」
「相変わらず人通りの少ない場所ですね。」
このままダラダラ続けても仕方ないところだ。一つ案を思いついた。
「囮作戦はどうですか。私がその辺歩きますよ」
連れればそれで終わりだ。楽な作戦だろう。
「危険じゃないですか?」
「危険でもこれが1番手っ取り早いですよ。」
いざとなれば幻を使えばいい。
にしてもこの女がいない方が遥かに捗っていた気がする。この女がいるからおちおち能力を使えない。まぁ事件の資料周りが助かったのもまた事実だが。そもそも囮作戦とは言うが、俺が歩いているだけで向こうから来てくれるものなのだろうか。
「動員人数増やせませんか?」
それか人数を増やすしかないな。ここまでくれば。そもそも二人じゃ無理なのだ。
「20か30が限界だと思います」
区画の広さに対してそれじゃ明らかに足りない気もするが。まぁ猫の手を借りたいのもまた事実。
「それ動員して貰えますか。私服で路地を見張らせましょう。何か怪しいヤツを見かけたら連絡を貰えばいい。ブラブラ歩き回るよりよっぽど現実的でしょう。」
「分かりました。手配します」
そう言って連絡を始める山城を見ながらハンバーガーに手をつける。
思ったよりめんどくさそうな仕事だ。蹴ればよかったと今更後悔してきた。
山城と共にもう一度事件の起きた場所を回る
「…」
ごみ箱の蓋を開けたり路地の隅々まで目をやっているが、相変わらず何もない。だがここまで塵一つ残さないなら余計に怪しい。そこらのチンピラやごろつき個人でこなせる範疇を軽く超えている。一か所だけならともかく全ての現場がこうなのだ。
となると
(やはり、個人ではなく、組織的な犯行と見て間違いないだろう。)
それに防犯カメラをちらっと眼をやる。
目撃者はいるはずなのだ。口を割らないだけで。
それにこの辺りは所長から聞いた話なのだが。所長の右腕だった男が管轄しているらしい。
(住人はすべてあちら側と見ておいた方がよさそうだ。)
金をちらつかせてみたが相変わらず何の成果も上がらなかった。
夜になり増員の配置も済んだ。一応傾向としては1度起きた場所では二度目以降の行方不明者が出ていなかったのでまだ行方不明者が出ておらず、事件が起こりそうな場所に人員を配置。そもそも薄汚い路地が発生位置とされているが、それは目撃者がいないためただの推測でありおおよそここで起きたのだろうという予想なので全く違うかもしれないのが問題なのだが…、まぁ仕方ない。何もしないよりましだ。
「相変わらずらしいな」
所長室に報告にきていた。こちらも相変わらず何もない部屋だ。
「えぇ、口を割りませんね。よっぽどバックが怖いのか。よく躾けられていますね」
所感を話す。二日目にして何の成果もなし。
所長が目を閉じ口を開く。
「奴らついにこっちの区域にも手を出してきた。昨日と今日で一人ずつ」
「申し訳ない」
「謝罪はいらん。結果を出せ。お前に求めているのはそれだけだ。」
「はい」
「もういい。失せろ」




