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夢想の瑞希  作者: 木崎 しの
瑞希編
15/66

瑞希の一日

「ふあー」


設定した時間に起きた。ジャストだ。

疲れは完全に取れているし体もスベスベだ。

カプセルから出て下を見ると零亜と陽菜の二人が寝ていた。二人とも向かいあうようにねむっているからなんだかんだ仲はいいのかもしれない。


「こうして見ると可愛い顔してるんだがな」


陽菜の頬をつつく。人間だよな?柔らかな頬が人間そのものだが人間よりできた機械かもしれない。いや人間かな。人間だろう。

頬を引っ張ってうにうにして遊んでみる。柔らかい。

綺麗なサラサラした金髪に触れる。綺麗な地毛の金髪だ。染められたような違和感のあるものではない。


「作られた人間か…」


組織によってこと細かく調整され生まれた人間。そんな奴らがこの組織には腐る程いる。陽菜はそんなのではなく完全純粋な天然の人間らしいが。もう一度頬を引っ張って遊んでみる


「先程からどうかしましたか」


「いや、お前の可愛い顔を見ているとつい手を出してしまってな。今朝も掛け布団に潜ってお前のパンツの柄を見てしまった」


「…お戯れも程々に」


渾身の嘘も華麗にスルーされる。取り付く島もない。


「お飲み物は何に致しますか?」


「お前から出る邪なる聖水で」


「分かりました。」


おいおい、何を分かったんだお前は、何を理解したんだお前は。


「言った俺も分からんのだが何が分かったんだお前」


「コーヒーで宜しいですか?」


「宜しいです」


「お待ちを」


流しに向かう陽菜。

どうにかしてあの態度を崩せないだろうか。初めてこの部屋に来た時はビビりまくっていたのに。


「愛してるぞ陽菜」


言いながら後ろから抱きついてみる。


「あ、ありがとうございます」


お、効いたか?


「ママ…」


「私は貴方の母ではありませんよ。」


「なぁ」


「何ですか?」


「顔舐めていい?」


「ど、どうぞ」


「なぁ」


「何ですか」


「お前に恋をした…結婚してくれ」


「…私で宜しいのですか?」


「陽菜が良かったら。それと俺のことはこれからみぃくんって呼んでくれたら俺は嬉しい」


「み、みぃくん…」


「陽菜ママ…」


「母ではありません」


やべぇ。さっきからいい匂いし過ぎで鼻血出てきた。陽菜から離れて鼻に丸めたティッシュを詰める。そのあいだに陽菜はコーヒーを入れていた。とりあえず小さなちゃぶ台を組み立てて座る。

というより俺は何をしているのだ。スグそこにまだ零亜が寝ているというのに


「み、みぃくん。どうぞ」


同じくらいのタイミングで陽菜がグラスを持ってきた


「悪いね。ひぃにゃんありがとう」


「ひぃにゃん?」


「ごめん。噛んだ。ひぃちゃん。お前の渾名」


「なるほど」


それきり気まずい空気が流れる。俺は本当に何をしているんだか。疲れているんだろう。

何度目かコーヒーを口にした時口を開く。


「…さっきまでの言動全部忘れてくれ。どうかしてたわ」


「…分かりました」


零亜が起きてきた。

そして30分かけて説教された。




「おらっ!」


竜馬のシュートが炸裂していた

それを見ながら咎められない程度にチンたらと歩いてプレイしているように見せる俺


「すげぇな!竜馬!」


「へへっ。ありがとな」


そんな会話が聞こえてきた。

すっかり人気者の竜馬。

俺とは大違いだな。

サッカーなんてそもそもルールすら知らないんだよな俺

その時バシィみたいな音が鳴り響く。視線を向けるとどうやら俺の方にボールが飛んできているらしい。少し距離がある


「そっちいったぞ!東條」


誰かがそう叫ぶ。分かってるよ。ったく


「誰だよ蹴ったの、めんどくせぇな」


ボヤキ追いかける。


「よっと」


飛んできたボールの勢いを靴の横で殺しドリブルして運ぶ。

後ろから敵が追いかけてくるのが分かる。さて誰にパスしようか。


「おっと瑞希ちゃん。俺を無視すんなよ。本気だそうや」


俺の前に竜馬が立ちはだかった


「うるせぇな」


竜馬を躱してから素早く流し目で全体を見回す。フリーかつゴールに近い。あいつだ。名前が分からん


「5番」


背番号を叫びパスを出す

そいつは無言で受け取るとそのままゴールへシュートした。




「やるじゃねぇか瑞希ちゃん」


帰り道竜馬が声をかけてきた。


「見様見真似でやっただけだ。」


「それでも充分すげぇよ。」


「そう褒めるなよ照れる」


「でよ。このあと少し遊びに行かないか。どうせ任務の場所もこの辺りなんだしよ。飯食ってそれから取り掛かろうぜ」


「どこで遊ぶのだ」


「カラオケでもいこうぜ」


少し考えどうせすることも無いことを思い出し頷いた




「全てを〜切り裂き〜」


意外と竜馬の歌は上手い。

ジュースを飲みながら聞く。


「へいへいへいへい!」


室内にあったタンバリンを手に取り盛り上げてみる。


「ありがとな!」


曲が終わり決まったと言わんばかりにポーズを決めている竜馬。


「いや、お見逸れしたよ。歌上手いんだな」


「そ、そうか。次瑞希ちゃんだぜ」


「任せろ」


マイクを持ち電源を入れる。曲は適当に入れた。室内を満たすしんみりとした音楽


「何だこれ」


「しんみりとした歌」


「何だそれ。」


聞かれるがもう始まりそうだ。


「君は泣いていたね。その日僕は何も出来ずにいて…」


出てくる歌詞を読み上げる




「瑞希ちゃん。」


「何だ」


「下手過ぎだろ」


「嘘つけ。上手いだろ。陽菜も惚れ惚れすると言っていたぞ。しかも見ろよ50点だぞ普通だろ」


画面に表示される点数は51点。半分は取れているはずだ。アドバイス欄には感情が感じられません。心を込めて歌いましょうといったことが書かれていた。


「それ50点以下はどう足掻いても出ないことになってんの。」


「はぁ?嘘つけよ。実質1点だって言いたいのか?!」


「残念ながら実質1点だ」


「まじかよ…」


流石にショックを隠しきれない


「ま、まぁ歌下手で困ることなんてないからさ」


竜馬が慰めてくれる


「うん…」


「それに楽しめたらいいんだよ!楽しめたら!」


「そうだよな。」


「で、でもよ。そろそろいい時間だし今日のとこは切り上げようぜ」




次に向かったのはチェーンのイタリアンレストラン。

すんなりと席に座れたのでよしとしよう。


「初めて食ったけど美味いな」


ドリアとやらを突っつきながらそう呟く


「看板メニューだろここの。」


安いからこれにしたのだがそうだったのか


「そうなのか。」


竜馬はよく分からんスパゲティとピザにハンバーグ、ライスを食べていた。


「にしても良く食うなお前。」


「瑞希ちゃんが少食過ぎるんだよ。」


「俺は普通だぞ」


「なわけない。零亜ちゃんや唯でももう少し食うわ」


「あいつらが大食らいなだけだ。俺は至って普通なんだよ」


「流石にねぇぜ。そうそう。あれしようぜ」


「どれだよ」


竜馬はテーブルにある数ある瓶の内一つを手に取る。


「タバスコゲーム」


「何だよそれ」


「ジャンケンして負けたヤツが飲む」


「やりたいなら一人でしろ」


「一人じゃ出来ねぇじゃん。そう冷たいこと言うなよなぁ」


そう言ったあと竜馬は表情を変えるクソムカつく表情だ。


「負けるのが怖いんだろ」


「そこまで言われちゃ黙ってられんな」


「それでこそ瑞希ちゃん」


「言うね。後で吠え面かくなよ?」


黙って引くのも尺だ。、手を机上に出す。


「それはこっちのセリフだぜ?ジャンケン。ポン」


俺はパー。対する竜馬はグー


「なぁ、もう1回頼むわ。今のは本調子じゃなかったわ。練習だ」


「へぇ?」


流石に不意をつかれた。心の底から変な声が出た


「いや、意味わかんないから。言い出しっぺだろ飲めよ」


「宗教上の問題で飲めねぇんだよ。許して」


「お前が何かに縋るわけねぇよ。早く飲めよ。お前よく人のこと煽れたな」


「てへっ忘れてっ」


「忘れるかよ。」


タバスコをスプーンに取って適当に垂らしそれを渡す。


「ほらよ。飲めよ。」


音を鳴らして首を横に降っている。ここまで首を振るやつは初めて見た。


「…はぁ…」


興醒めだ。スプーンを食べ終えたドリアの器に置く。


「お、なんだ許してくれるのか流石だな」


「急に面倒になっただけだ」


「そゆとこ優しいよな瑞希ちゃん」


「あぁ、良かったな俺が優しくて」


「全くだ。んじゃ混んできたみたいだし次行くか。」


確かに先程から人が増え始めている


「そうだな」





二人肩を並べて夜の街を歩く。


「こうして歩いてるといつもと違うものも見えてきそうだな」


竜馬の呟き

よく意味は理解できない


「お、今の子可愛かったな」


竜馬はすれ違った女生徒を目で追う。


「通報されるぞ。辞めとけ」


「イケメンな俺はそんな事でされねぇから安心しろ」


「どうだかな」


その時俺の端末が音楽と共に振動した。

ポケットから取り出し確認すると電話のようだ。操作し耳に当てる。相手は零亜だった


「どうしたよ」


「今何処にいるんですか!」


なんて声が聞こえてきた。

黙って通話を切る。


「いいのかよ」


隣の竜馬が訪ねてきた

その時また振動と共に着信音がなるが電源を切ってから適当に頷く。


「じゃ、そろそろ行くか」


「あぁ。」


頷き脇道に逸れる。

奥へ奥へ人目の少ない通路を目指す。


「ここならいいな。」


十分に人目が少なくなった場所で身体を強化し一気にジャンプする。

俺たちの体は悠に何十メートルも跳び高層ビルの屋上に着地する


「さてと目標の建物は…」


呟いて周りを見渡す。

綺麗な空だ。こういう夜は茶でも飲みながら月でも見ていたいものだが。


「あれじゃね。」


先に見つけた竜馬が声をかけてきた。


「…あれだな」


それは風俗街にある一つの建物。距離かなり遠い。

表向きは普通の風俗らしいが裏の顔は臓器販売とかしているらしい。まぁ今日はそこで違法薬物の取引が行われるらしいのでそれを調査するというのが仕事の内容だ。

視力を強化する。まるで望遠鏡のように成り果てる俺の目。勿論望遠鏡どころかそれを超越している。俺の目の前には壁など意味をなさない。透かして見ることができるからだ。

おかげで。街の細部まで見える。その建物の1室。黒服の男が二人と一人の中年男がソファに座っている。その対面には似たような構成の人物がもう1組。


「ターゲットは6だな。」


竜馬に伝える


「やっぱりそういう店なのか?」


「表向きはな。他の部屋では表向きのお風呂というサービスを提供していたよ。」


見たものをそのまま伝える。


「今度あの街に遊びに行かねぇか?」


「女なら巣穴で引っ掛ければいいだろ」


回廊を武器庫に繋げ超遠距離射撃用のライフルを取り出す。不要だが一応最終調整し構える。


「やっぱプロは違うだろうしなぁ」


俺が淡々と仕事を進める横で竜馬はまだ喋っていた。


「でも高ぇだろ」


言いながらスコープを覗き込む。超高倍率で何の問題もなく視界に情報が入り込む。窓がないため透視は続行している


「まぁ質を考えればそんなもんじゃないのか?」


人数と配置を確認する。


「さぁね」


一応盗聴用にあちらに極小の幻を飛ばす。

こちらには専用の回廊を表しそこから会話内容を聞き取る


「ビンゴだな。」


呟き引き金に指をかける。薬がどうのと話をしている

狙いを定める。一瞬でカタをつける


「…」


狙撃音はほぼ鳴らない。弾丸が銃口から飛び出る。1発目は壁に穴を穿つ用。二発目で仕留める。都合6人分の12回引き金を引く。一瞬のうちに。


「ふぅ…」


回廊からは何も聞こえない閑散とした場になっていた。数秒後壁を穿った音は聞こえたのかほかの部屋から来た人間で場は騒がしくなるが


「さて、帰るか」


銃を武器庫に繋げた回廊に放り込みつつ隣でサボっている竜馬に声をかける


「ん、あぁ。相変わらず仕事が早いな」


「普通だよ。」


ビルの屋上から二人で飛び降りると地面に着地し先ほどと逆の手順で歩く。












また設定集の作成を忘れていた…

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