エビ右衛門ってさ……
<SIDE エビ美>
エビ美です。
隊長さんのご厚意により、宮島に帰ってきました。
弥山を見上げると不思議と心が落ち着きます。
でも。
これから、どうしたものでしょうか……。
エビ太さんはプーさんをどう思っていらっしゃるのでしょうか。
不安なのです。
私はただのエビです。
特別に美しい訳でも、才能がある訳でもありません。
ただのエビですから……。
「エビ美、これからどうするの?」
隊長さんに問いかけられましたが、何ともお答えしかねます。
実のところ、何も考えておりません。
その時でした。
「エビ美?! エビ美じゃないか!!」
「エビ右衛門様?!」
「いつ、こっちに帰ってきたんだ? しばらく姿が見えなくて、もしかしてタコにでも食われたのじゃないかと心配していたんだぞ」
「……」
エビ右衛門様はエビ助様(覚えている方がいらっしゃいますでしょうか?)と並ぶ、名家のご子息でいらっしゃいます。
かつて、私は彼にプロポーズ(笑)されたことがありました。
ですが。
お断りしてしまったのは、どうにもメス癖が悪い為です……。
今さら、この方には頼れません。
とか思っていたのに……。
誰? 隊長さんに問われ、私は本当のことをお答えしました。
「ふ~ん……見るからに遊びエビって感じね」
「エビ美、良い所へ連れて行ってやろう。新しいデートスポットだぞ」
「……でも……」
「そのデカい人間は、どこかへ待たせておけ」
どうしましょう?
隊長さんを見上げたら、黙って頷かれました。
「……はい、わかりました……」




