ハードボイルドエビ太
僕の名前はエビエビ太。
広島県警刑事部鑑識課所属の警察エビ。
僕の仕事は、刑事さん達がヤクザ屋さん達からかすめと……押収してきた麻薬の成分検査を行うこと。
クスリの純度で身体の色が変化するっていうね、もう何が何だかよくわからない……っていう、そこのあなた、それ正解。
……何だよ、警察エビって……。
「ねぇ、エビ太ぁ~」
と、僕に話しかけてきたのは鑑識一筋3年間、筋金入りの歴女じゃなくて、リケジョである平林郁美ちゃん。
僕の相棒なんだよ。
っていうか、指で目をつつくのヤメテ。怖いから。
「あれから結局、どうなったのよ?! うちの班長ったら、和泉さんとのデートをセッティングしてくれるって言っておきながら、あれからなしのつぶてじゃない!!」
彼女は現在、片想い中の相手がいるんだよね。
和泉さんっていう、捜査1課の刑事さん。
でもね……お互いに仕事が忙しいんだよね、とにかく。
奥手な郁美ちゃんってば、よりによって直属の上司に『好きな彼とデートしたいからチャンスを作って!!』 なんてお願いしたんだけど……。
まぁ、実現してないわけだ。
だから僕は言ってやったのさ。
「……郁美ちゃんが自分で計画立てて、直接、彼を誘ったら?」
「な、何言ってんのよ?! そんな、女の方からデートに誘うなんて……ドン引きされるじゃない!!」
いや、エビの握り鮨と会話してる時点で既にドン引きだからさ。
「でもさぁ……待ってるだけじゃ多分、何も始まらないよ?」
「う~……」
「とりあえず、初めの一歩を踏み出してごらんよ。そうすればきっと……」
と、その時。
「待たせたな! 郁美君!!」
鑑識課の班長がやってきた。
この人、旧土曜ワイド劇場でやってた【京都南署鑑識シリーズ】での小○ 稔侍さんがやってた役の真似をして彼女のことを『郁美君』って呼ぶんだよね。
「和泉とのデート、なんとか取りつけてやったぞ?! 明日の夜、何も言わずにこの店へ行け!!」
「はんちょおぉぉぉぉぉ~~~~~~!! ありがとうぅぅぅぅ~~~!!」
続く……みたい。
あ、でも僕……もうオチわかっちゃったな。
「じゃ、エビ太。行って来るわね」
郁美ちゃん、ものすごく気合い入ってるなぁ~……。
そりゃ、憧れの彼と初デートだもんね。
「頑張ってね」
僕も自分のことみたいに嬉しいよ。
なんだけど。
ふと僕を見ていた彼女が言いだした。
「あら……? エビ太、なんだか顔色(?)が悪いわ」
実は、確かに身体の色がいつもと違う。(水分さん、ネタにさせてもらいました笑)
調子の良い時は普通のオレンジなんだけど、
今は……。
「大丈夫だよ」
実はおめーのせいだよ!! とは、大人な僕は言わない。
この子、機嫌の悪い時とやたらにハイテンションな時って、極端な量の麻薬の試液を飲ませてくるんだよね。
殺す気か?!って、何度危機を覚えたことか……。
今日もそのパターン。
さすがに、ちょっとヤバいかも。
「僕なら大丈夫。早くしないと、約束の時間に遅れちゃうよ?」
「でも……」
「いいから行け!! 僕にかまうな!!」
「エビ太……!!」
「男を待たせていいのは、晴れて両想いになれてからだぜ……?」
か、どうかは知らないけど。
「成功を祈る」
ぐっ! ……ぱた。
その時。
ぴろぴろりーん。
あ、班長から電話だ。郁美ちゃんの顔が強張る。
「……はい?」
『すまん……コロシだ。至急、流川1丁目に臨場してくれ』
あーあ……やっぱりこのオチか。
「嘘でしょ……?」
「で、でも郁美ちゃん! 考えようによっては現場で和泉さんと会えるよ?!」
「そ、そうよね!……って、そんなの嬉しくないわよ、バカ~っ!!」
「ちょ、ちょっと、シャリからネタを剥がすのやめて!! 死ぬ……!! エビぃぃぃぃぃぃぃぃ~~~っ!!」