姑息な主人公
前回までのあらすじ。
エビえもんは何とかして、エビ太をこの割烹から追い出したかった。
ただ、それだけ。
僕の名前はエビえもん。
いや、それは本名じゃないんだけど……この際、置いておこう。
この小憎たらしいエビを、どうにかギャフンと言わせることはできないか。
そう考えた末、名案を思いついた。
「いいね~、そうそう。もうちょっと尻尾上げてみようか?」
「にっこり笑って、にっこり。ちょっと上目遣いで。そう、いい感じ」
ぱしゃぱしゃ。
「ねぇ~……まだぁ?」
「もうすぐ終わるから」
よし、これぐらいでいいだろう。良いのが撮れた♪
僕が何を考えているか……?
それはもちろん。
これだ↓
【里親募集!!】
世にも珍しい、しゃべるエビです。
名前は【エビ太】っていいます。
性格は素直でおとなしいです。
なんだったら宙にも浮きます。
ストレス社会なこの時代、あなたもエビ太に癒されてみませんか?
それとこれ↓
【○○オークションサイト】
『エビの握り鮨』
¥108~(平日99円~)
(多少の傷、汚れあり)
即日配達可。
エビ太の写真を撮りまくったのはつまり、こういう訳なんだよ。
ネット上にエビ太を晒したら、世界のどこかにいるはずの【物好き】が、きっと欲しがるに違いない!!
※※※会社の備品を里子に出したり、オークションにかけたりするのは犯罪です。真似しないでね※※※
しばらくして。
「あ、もう問い合わせがきた!! ……え? 何これ、アラビア文字か何か……?」
なんて書いてあるんだろう?
「なんてプリティでキュートなシュリンプだろう……金に糸目はつけないって書いてあるわ」
「へ~、随分気前の良いことを言う人がいるんです……ね……?」
おそるおそる、振り返ると……。
た、た、隊長さん!!?」
「楽しそうね~、エビえもん。エビ太からいろいろ聞いたわよ?」
「い、いや、これはその……!!」
「こんな写真撮りまくって、何に使うのかと思えば……手を出しなさい」
「な、なんでです?」
「いいから出しなさい」
掌に【六文銭】
「……覚悟はできてるかしら?」
にっこり。
「で、できてません……」
「よし、逝ってこい!!」←聞いてない。
「いやぁああああああ~~~っ!!」
「待って、隊長さん!!」
「エビ太……?」
「お願い、エビえもんを許してあげて。彼もかわいそうな人なんだよ」
「……」
「だって考えてもみて。シリーズ通して主人公のはずのエビえもんより、最近は僕の方が知名度上がっちゃったんだもん。それにね、実はエビえもんに本名があるってこと知ってるの、ごく一部の人くらいだよ?」
「……」
「僕、嫉妬されてるんだよ……だから僕のこと、追い出そうと……」
「……」
「でもいいんだ。僕、エビえもんのこと大好きだから」
エビえもん(人間:男)はエビ太(エビ:オス)に哀れみをかけられ、同情された!!
「わ、わかったわ……あんたがそう言うんなら。ここは、大目に見て……うぷぷぷっ!!」
隊長さん、爆笑。
「あーはははははっ、ひーっ、エビに、エビに憐れみかけられてるーっ?! きゃーははははははっっっ!!!」
こうしてエビにより、主人公としても男としてもプライドを粉々にされたエビえもん。
……おのれエビ太!!
絶対、絶対に許さないんだから!!
コノママデハスマサンゾー!!
……以下次号!!
≪次回予告≫
隊長さんのネクタイに色を塗り忘れたことに、たった今、気が付いた!!
そんなことはまぁいい。
このままでは絶対に済ませない。
何とかしてエビ太をどうにかしてやる(?)
次回こそ「エビえもん~三原漁港ナビタイム~」




