エビ太、接待ゴルフにお供する。
前回までのあらすじ。
隊長さんが留守なのをいいことに、エビ太を熱湯風呂に突っ込もうとしたエビえもん。
しかし。
県警本部長の登場により、その企みは阻止されたのであった。
こんにちは、エビ太だよ。
さっきはほんとに危なかったよ……。
本部長さんが助けてくれるなんて。
県警本部長(以下、本部長)は当然だけど、昔で言うところのお殿様なんだよ。
この人が白いものを黒と言ったら黒、それだけの権威があるから、皆怖がってるんだよね。
でもね。
逆を言えば、気に入ってもらえるとものすごいメリットが……。
「エビ太きゅ~ん♪ お迎えに来たでちゅよ~!!」
本部長さんだ。
「今日は接待ゴルフじゃけんね、日差しが強いから気をつけんといけんよ?」
なんと。本部長さんにゴルフにまで連れて行ってもらえるようになった僕。
ということで、あれから。
僕に対するエビえもんの態度がちょっと、ううん、かなり変わった。
「エビ太様、お茶をお持ちしますか?」
「エビ太様、どうぞ日当たりの良い場所へ……」
わかりやすいな、こいつ。
そんなある日。
僕は壁にかかっている習字が、ふと気になった。
「エビえも~ん、これなんて書いてあるの?」
「こちらは『しゅうそうれつじつ』と書いてございます」
「どういう意味えび?」
「刑罰・権威・意志などが非常にきびしく、またおごそかであることのたとえでございます」
「【けいばつ】って、なにー?」
「……悪いことをした人には、罰を与えるという……」
「悪いこと……エビえもんが今まで、僕にした数々の……?」
「え、エビ太様!! そのような殺生なことを仰らないでください!!」
「3階から落っことそうとしたり、ラップ巻いて窒息させようとしたり、熱湯風呂に入れようとしたり……」
「その都度、エビ太様の大好きな隊長さんから、死ぬような目に遭わされてます!!」
よく生きてるよね……。
「エビ太様、過去の過ちはさらっと水に流して仲良くしましょう? ね?」
……。
それから、エビえもんが僕をイジめなくなった。
なんかつまんない……。
やだ、どうして涙なんか……?
(……エビ太は完全におかしくなっている……)
「それではエビ太様、私はこれにて失礼いたします」
とある日の夕方。
「待って、エビえもん!!」
「いかがなさいました?」
「お腹空いてない? 僕の顔を食べなよ」
あ、間違えた!!!!!
「そうじゃなくて、あの……えっと……」
どうしよう。
上手く言葉にならない。
「あのね……」
「特に御用がなければ、私はこれにて」
エビパ~ンチっ!!
「ちょっと、何するんだよ!? こないだクリーニングに出したばっかり……!!」
「エビえも~ん!!」
「エビ太君、どうしたの?」
「エビえもんはいつも通りがいい、いつものエビえもんじゃなきゃやだーっ!! エビぃぃぃぃぃぃぃぃぃ~!!!」
ぐすん。
「僕が本部長さんに気に入られてから、なんか……敬語で話すし……全然イジめてこないし……」
「エビ太君……」
何言ってるんだろう、僕。
「わかったよ、エビ太君」
え?
「たとえウサギに囲まれる生活になっても、僕は今まで通りにする。なんだったらいっそ、猫を連れ込んでウサギと掛け合わせて、新しい生命体をさえ作りだしてみせる……」
「エビえもん!!」
「そうと決まったら、行こう!!」
どこへ?
コンビニ→給湯室再び。
ぐつぐつぐつ……。
「いや~、今日からおでん10円引きセールやってるんだってこと、思い出したよ」
だから僕「上島★兵」でも、「ダチョウ倶楽■」でもないって言ってんだろうがぁああああ~~~?!!!
助けて、隊長さ~んっ!!
(扉が)ばぁーんっ!!
「やっときたわね、アタシの出番……」
「隊長さん!!」
あー、やっぱりいつものパターンが一番落ち着くなぁ……。
……って、今回は釘バットだぁ。
「覚悟はできてるかしら?」
ひっ、とエビえもんが息をのむ。
「大久野島まで飛んで行け」
バイバイ、エビえもん。
どうせまた、すぐに戻ってくるよね?




