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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第三章

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望まぬ謁見

 雪斗達が転移したという事実に加え、アレイスが姿を現した。しかもその目的はジークに会うこと――あまりの展開に城側も処理が追いつかず、どうすべきか重臣達も悩み始めた。

 ただ、ジークとしては民を犠牲にすべきではないと思っているはず――下手をすれば町中で暴れ出す状況である以上、放っておくことはできない。


 よって、ジーク自身は会うことに決めたのだが、当然ながら重臣達は反対した。城で何をしでかすかわからない。そもそも彼の影響によって操られたディーン卿が一度城へ入り込んでいる。他に何か策があってもおかしくない――


「しかし、現状では止める手立てもない。もし実力行使に出られたら、無駄な犠牲を増やすだけだ」


 そこでジークは告げる。重臣達は押し黙り、やむなくアレイスを城へ招くことにした。


「――そういう経緯であるため、厳戒態勢の中で謁見という形になる」


 レーネが翠芭へと事情を伝える。場所は城内。クラスメイト達はまだ町中に残っており、ひとまず待機という形を取っている。


 アレイスが城へ来る以上、戻ってくることは危険であるためこのような処置となった。翠芭以外には貴臣が城へと戻っており、他のメンバーについてはひとまず他のクラスメイトと共に待機してもらっている。もし魔物などが現われても対応できるように、というのがその理由だ。


「正直、アレイスがどのようなことをするのかまったく読めない。よって、王の傍には霊具を解放したシェリス様が付き従うことになる……加え、近くでスイハとタカオミの二人は待機していてもらう。もしもの場合……戦闘になったら、援護して欲しい」


 本当なら、聖剣を握る以上は自分が矢面に立つべきでは――そう翠芭は心の中で呟いたのだが、レーネはそうした心の声を認識したか、首を左右に振った。


「スイハが思い悩む必要はない……ともかく、ユキト達が戻ってくるまでの辛抱だ。なんとしてもこの局面を乗り切る」


 レーネは厳しい表情で語る。敵の総大将が王と会う以上、どういう展開になるかまったく読むことができない。

 ただ、翠芭は一つ確信していることがある。レーネを始め城の人間達は聖剣を握る翠芭に対しても厳しい視線を投げることはなかった。それは「慌てなくて良い」という感情を大いに含み、翠芭自身に負担を掛けないようにと配慮した結果なわけだが、現状ではそんなことも言っていられない。場合によっては否が応でも戦うことになる。


(覚悟はしておくべきか……)


 先日、城内における戦いである程度経験を積んだことは間違いない。だがそれでも、敵の総大将となれば力不足は否めない。少なくとも、アレイスに挑めるレベルに至っていないことだけは確かだった。


(いや、そもそも相手が待ってくれるはずがないか)


 敵からすれば、時間が経てば経つほど聖剣所持者の力が増すわけで、何かしらチャンスがあれば仕掛けたいところだったはずだ。そこへ雪斗達を町から離すことのできる機会が生まれた――敵としてはこれを狙うのは当然だったはずだ。


(今のところ、まだクラスメイトには犠牲者が出ていない……けれど)


 今回の騒動で身にしみたことは、例え町中であっても、決して気を緩めてはいけないということ。様々な要因により起こってしまった出来事。翠芭としてはどうすることもできなかったかもしれない事象であっても、そうした気概が他のクラスメイトに伝わっていれば、騒動が起こることなく対処はできたかもしれない――


「気に病むな、スイハ」


 そんな時、レーネから声を掛けられた。


「聖剣を握ったからといって、全てを背負う必要性はどこにもない。まして、今回の一件はスイハにとっては何も過失がない以上、変に考えてしまったら相手の思うつぼになる」

「それは、そうかもしれませんが……」

「気を遣う性格は、スイハ本来の気質かもしれないが……そうした感情は、ストレスになる要因にしかならないぞ」


 レーネはそう語る間に翠芭と貴臣を小部屋へと通した。城の中でも上階に位置するこの場所は、円形のテーブルと四つの椅子が置かれており、テーブルの上には何やら魔法陣が刻まれている。


「玉座の間近くの待機部屋だ。もし緊急事態になったら、ここから玉座の間へ急行する。時間にして一分も掛からない場所で、待つには最適だ」

「この魔法陣は?」


 貴臣は質問しながらテーブルに触れる。直後、彼は目を細めた。


「これは……」

「触ればわかるが、この魔法陣は仕掛けが存在する……本来この魔法陣はペアで扱われるもので、もう片方は玉座の間に設置してある。これで会話を聞き取ることが可能だ」


 そう語りながらレーネは小さく息をついた。


「私は二人と共にここで残り、事の推移を見守ることにする……陛下は穏便に済ませたいと言っていたが、相手は邪竜の力を受けたアレイスだ。正直かなり分は悪いな」

「ここに雪斗がいたらどうなっていましたか?」


 質問は貴臣からのもの。レーネは口元に手を当て、


「それこそ彼の切り札を使って一蹴……というシナリオもあり得るな。アレイスが本物なのか、それとも力を利用した単なる分身か……その辺りも考慮すべき部分ではあるが、彼なら問答無用で仕留めていたかもしれない」


 答えながらレーネはテーブルに意識を集中させる。

 その直後、魔法陣から声が聞こえた。


『全員、決して警戒を解かずその場で待機だ……シェリス、それで構わないか?』

『ええ、どんな状況でも私自身、やることは何も変わらない……ジーク、相手はアレイスでも別人と言って差し支えないわ。だから容赦はしないでね』

『無論だ』


 返事と共に、重苦しい音が玉座の間に響き渡る。来たのだと翠芭は認識すると同時、全身に力が入った。


『お久しぶりですね、陛下』


 そして聞こえたのは男性の声――間違いなく、アレイスだった。


『このような姿ではありますが、また話ができて良かったと思っております』

『世辞はいい。さて、そちらの要求は何だ?』


 問い掛けにアレイスは答えない。どうやら沈黙しているらしい。悩んでいるなんて展開は想像していなかったが、翠芭はなぜ押し黙るのか疑問に感じた。


『……いいでしょう、ならばまずはその話からいきましょう』


 アレイスが返答する。何故このようなことをしたのか――いよいよ彼の口から語られる時だった。


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