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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第三章

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敵の策略

 先ほどと同じ突入メンバーで雪斗達は再び迷宮の中へと舞い戻る。魔物は相変わらず出現しており、しかしその強さは先ほどまでと同様。つまり一蹴できるレベルだった。

 ただし、だからといって放置することはできない。よって前線に雪斗とナディが立ち、後方をリュシールとイーフィスが援護する形で敵を駆逐していく。


「この小迷宮の奥で魔物を生成しているわね」


 やがてリュシールがそう結論づけ、雪斗達はその場へ急行。そこは床に魔法陣が刻まれた広間だった。


「ようこそ」


 そう語ったのは女性。さらにその横には男性の姿もある。


「確認するけれど、あなた方のどちらかが上の店の店主ってことでいいのかしら?」


 リュシールの問いに男性が「そうだ」と応じる。次いで女性は笑みを浮かべ、


「ここに来た用件はわかっているわ……さて、なぜこんな馬鹿なことをしたのか、でしょう?」

「到底勝ち目のない戦いを仕掛けるというのは、何か罠があるからだろ?」


 雪斗の質問に女性は両手を左右に広げた。


「そういうこと……もちろん普通の罠が通用しないことはこちらも承知の上。だから少しばかり、やり方を変えたわ」


 言葉の直後、魔法陣が光る。雪斗はその魔力がどういうものなのかを肌で感じ取りながら、リュシールへ目配せをした。

 彼女は小さく頷いて応じる。その直後、雪斗は猛然と敵へと走る。


 刹那、敵はそれに応じるべく魔力を噴出する。そして肌の色が白から文字通りの漆黒へと変化をしていく。

 既に人間は捨てている――間違いなくアレイスの手勢。


「なぜ潜伏していたのにここで仕掛けたのか、聞かせてもらうぞ」


 雪斗が迫る。それに女性も男性も魔力を変質させただけで動かない。

 いや――剣を振ろうとした直前に、男性が女性と雪斗達の間に割って入り、両腕をクロスさせ防御の構えを取った。


 それに雪斗は一片の容赦もなく、斬撃を繰り出す。男性はまともに受け――その体が、一瞬にして両断された。


「な……!?」


 それに驚いたのは、他ならぬ雪斗。あまりにも簡単に――そういう考えの末にはき出された声だった。

 男性は言葉を発することなく倒れ伏し、消滅する。そして奥にいた女性は、微笑みを店ながら雪斗へ告げる。


「理由を、聞かないのかしら?」


 雪斗は剣の切っ先を女性へ向けながら、目を細める。何を考えているのか――まったく読めない。

 魔法陣が光りはしたが、少なくとも何か影響があったとは言えない。もっとも雪斗達の動きを制限するといった魔法についてはきちんと対処しているため、問題はないのだが。


 アレイスの手先であるのならそのくらいは理解しているはずで、だとすると何をしたのかまったく理解できない。


「そうね、私の指示は来訪者か城の人間を利用してここに誘い込む……たったそれだけよ。それ以上のことは何も指示されていないし、ましてあなた達に勝てるとも思っていない」

「ここに来た時点で、作戦は成功というわけ?」


 ナディが近寄り問い掛ける。女性はそれに頷いた。


「ええ、そうよ……もっとも仕掛けが成功するか微妙なところだったのだけれど、どうにかやりきったわ」

「あなた達二人はその犠牲というわけ?」

「そういうこと。最初から覚悟していたわよ。私達は……あの御方の礎になる」

「アレイスのことだな?」


 雪斗の質問に女性は何も答えない。直後、その右手が光り、雪斗へ差し向けようとする。


 だがそれに対しナディが即応する。手のひらへ向け蹴りを放つと、パアンと乾いた音を上げて魔力が途切れた。

 次いで彼女の拳が女性は叩き込まれる。それにすら相手は微笑を見せたままであり――表情を一切変えることなく、消滅した。


「……不気味な事件ね」


 そしてナディが感想を漏らす。雪斗は「そうだな」と同意し、


「果たしてここにおびき寄せて何がしたかったのか」

『……雪斗』


 その時、ディルから呼び掛けがあった。どうしたのかと聞こうとした矢先、雪斗も気付く。

 リュシールを見る。彼女も察したのか周囲を見回しており、


「これは……まさか……」

「地上に戻るぞ!」


 雪斗は声を発し、全員走り始める。その途中に魔物の類いはゼロで、障害もなく階段を上がることはできたのだが――景色が、一変していた。

 上った先にあったのは、石造りの神殿のような建物の中。ナディが思わぬ状況に目を丸くする中で、雪斗は入口を指し示して全員で走り続ける。


 外に出るとすぐさま周囲を確認――そこで、雪斗は海岸線を発見した。


「おい……マジかよ……」

「ねえ、これはどういうこと?」


 ナディの問いに雪斗は答えようとして――それよりも前に、イーフィスが口を開いた。


「敵の目論見は、雪斗達を始末しようとしたのではなく、転移させた。あの部屋そのものがおそらく転移装置となっていたのでしょう」

「ってことは、私達は戦闘の間に迷宮ごと移動した?」

「仕込んだ魔法陣とかで、あの部屋ごと転移したんだろうな」


 雪斗はそう見解を述べた後、海を見据える。


「ここはどこだ? 町へ戻るにしてもあの国は内陸国で海なんてものは存在しないんだぞ。大陸のどこだ?」

「太陽の動きからすると、海のある方角は西ね」


 そうリュシールは述べる。


「高速移動を行い、町などを見つけてどこなのかを確認しましょう。とはいえどれだけ急いでも戻るのはいつになるか……」


 これが敵の狙い――焦るような気持ちになるが、今はとにかく冷静にならなければまずい。


「……とにかく移動しよう。まずは情報を見つけないといけない」


 雪斗の指示に全員頷き、移動を開始。

 それと共に雪斗は一つ思考する。転移をしてから、一体何をするつもりなのか。


(最悪なパターンは、あの転移によって入れ替わるようにして誰かが……アレイスの腹心とかが、町へやってくるとか、か。もしそうなったら被害が出る……シェリスがいるとはいえ――)


 雪斗はそこで翠芭のことを思い出す。聖剣を握っているとはいえ、戦うことはさすがに――


(とにかく、被害が出ないよう祈るしかない、か……)


 ギリッ、と奥歯を噛みしめながら雪斗は疾駆する。そこから少しして雪斗達は看板を発見。場所や位置などを確認した後、リュシールが戻るべき方向を指示。そして――全員が、全速力で移動を始めることとなった。


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