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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第二章

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魔物の増殖

 いよいよ察知できたシェリスの気配。とはいえまだ道半ばであり、正面にいる魔物達をディーン卿がなぎ倒していく。


「俺達も少しは協力すべきか?」

「いや、まだだ」


 雪斗の問いにディーン卿はそう答えた。


「まだ魔力は温存しておいてくれ。それに私もゼルも余力はある」

「……無理はするなよ。ここで力尽きて倒れてしまったら、それはそれで面倒だ」

「無論だ」


 刃が生じる。それに飲み込まれた魔物は一切合切消え去るわけだが、それでも数が減らない。

 確実に戦場にいる魔物の数は減っている。けれど前の敵数は一向に少なくなっている気がしない。


「……強大な魔法で一掃すべきか?」

「さすがにシェリスだってそのくらい考慮しているでしょうね」


 雪斗の発言に対し、ナディが答えた。


「たぶん彼女はそうした魔法を防ぐような処置を整えている……罠付きで」

「あいつなら考えそうだな」

「そういうこと。まあそもそも大地の魔力などに干渉する大規模魔法は最初から使えないみたいだけどね。その魔力をシェリスが掌握しているようだから――」


 その言葉を聞いた瞬間、雪斗は一つ察する。


「……そうか」

「え?」

「いや、俺達はシェリスが魔物を準備し待ち構えているものとばかり考えていた……そこに問題点があったんだ」


 雪斗は発した後、周囲に目を移す。


「ナディ、魔物の気配についてはわかるが、個体ごとにどう移動しているのかなどわかるか?」

「そんな細かい探査ができればもっと活用しているわよ」

「イーフィスは?」

「やっていますがおかしな点はどこにもありませんね」

「……ディル、どうだ?」

『特におかしいところは……いやでも、遠方にいる魔物の動きが割と激しいみたいだね』

「それだ」


 雪斗は断言。対するナディは眉をひそめ、


「どういうこと?」

「シェリスはこの周辺の大地の魔力を掌握し、魔物を生成できる状況を整えた。そして準備し、俺達を迎え撃っている……そこまではいい。問題はおそらく、現在進行形で魔物を生み出されているのでは、ということ」

「現在もって……それじゃあ、シェリスは常に魔力を消費し続けていることにならない?」

「魔力を供給できる手段を持っているか、あるいはこちらの動きを少しでも食い止めることを策としているか、だな」


 雪斗の言及にナディはなおも訝しげではあったが、


「……シェリスの目論見がわからない以上、決してあり得ない話ではないわね。問題は、どこで魔物を生成しているかだけど」

「ディルでも気付かないくらいだからな……いや、こちらにディルがいるからこそ、それに欺くような生成をしているのかも」


 雪斗はやや遠方を見据え、


「ディルによるとここから遠い場所で魔物が動いている……それにより魔力を乱して魔物の数を増やしているんじゃないかと思う」

「問題はそれをどう防ぐか、じゃない?」

「――この場合、土地に備わった術式を破壊すればいけるでしょうね」


 次に述べたのはイーフィス。


「どのような手法で魔物を生成しているかについてですが、シェリスは魔神の力を持っているとはいえあくまで人間。大地の魔力に干渉して魔法を使う場合、私達と同じ手順を用いなければならないはず」

「その場合確か、大地の魔力を自分の魔力に変換する魔法陣が必要、だったか」

「はい。それはおそらく目立たないように設置されているでしょうが、それがなければシェリスと言えど魔物の生成はできないでしょう」

「ならそれを破壊すればいい……けど、さすがに探査も辛いんじゃないか?」

「大地に存在する魔力に限定するなら、少々時間は掛かりますが調べることはできます」


 イーフィスの頼もしい発言。そこで今度はディーン卿が口を開いた。


「私はまだ余力はある。何か手を打つならば早いほうがいいぞ」

「ということだ……イーフィス、やれるか?」

「そうですね。魔物を減らした方が戦いを有利に進められるのは明白。ここは全力で取り組みましょう」


 イーフィスが杖の先端を大地へ向ける。それと同時杖の先から淡い魔力が漏れた。


 ――こうした探索は、見つけ出すには運の要素も絡んでくる。とはいえ彼の魔法技術は精密であり、雪斗も邪竜との戦いによる経験から信頼している。見つけられる可能性は十二分にある。

 そして魔物の動きがやや活発になる。こちらの動きを察知し押し潰そうとしたのか。けれどディーン卿とゼルがそれを抑え込む。二人の攻撃速度は増し、時間が経つごとに衰えるどころかさらに鋭さが増してくる。


 なおかつまだ余力がある様子――そこで、イーフィスが声を発した。


「場所がわかりました。けれど数が多い」

「でもそれを潰さない限りは魔物は出現し続けるんだろ?」

「はい」

「なら壊すしかないな。ここは俺が」

「私も行くわ」


 そう告げ、ナディが腕を軽く回した。


「数が多いなら、一人よりも二人の方がいいでしょう?」

「……俺は少しくらい戦ってもパフォーマンスは変わらないけど、そっちは大丈夫か?」

「ええ、任せて」


 自信に満ちた返答。雪斗はこれ以上の質問は不要だと判断し、イーフィスへ告げる。


「場所を教えてくれ。それとイーフィスはこの場に残りディーン卿達の援護を」

「わかりました」


 雪斗は一度呼吸を整える。ディーン卿の言うように魔力を完璧に温存するといった形にはならないが――準備運動としては最適かもしれない。


「ナディ、ここを軽く通過しないことにはシェリスに対抗なんてできないぞ」

「わかっているわよ。そっちこそ気をつけなさい」

「ああ」


 返事をした矢先、雪斗は場所を聞き走り出す。魔物の間をすり抜けるような形であり、その後ろをナディが追随する。

 魔物達は当然反応するのだが、攻撃するより先に雪斗達が突破してしまうため、気付いても何の意味も成していない。


 そして該当の場所へ到達した瞬間、雪斗は魔物が地面から生じる現場を目撃する。やはりかと心の中で呟くと同時、雪斗は目を凝らし――小さな魔法陣を発見。地面を薙いでそれを破壊し、ナディへ視線を移す。


「いけるか?」

「余裕よ。ここで二手に分かれましょうか」

「わかった」


 頷くと同時に左右に分かれる。イーフィスから教えられた魔法陣の位置を正確に捉え、魔物をすり抜けながら一気に壊していく。

 ナディもまた同じように破壊するのを気配で感じ取る――破壊した周辺では魔物の生成がされないようで、


『雪斗、やっぱり魔法陣を介して、みたいだね』

「そうか。ならこのまま壊し続ければ魔物は減るな」


 雪斗は呟きながら魔物の中を突破し、文字通り最短距離で戦場を駆け抜ける。魔法陣を発見すると速度を緩めることなく斬撃により破壊し、そのまま突き進む。

 ナディも順調のようで、雪斗と比べ多少ペースは遅いが破壊して回っている。気配に揺らぎもなく、怪我などをしている様子もない。


「このまま全部壊せば、あとはディーン卿が魔物を殲滅しシェリスとの戦い……かな」

『雪斗、シェリスはどう思っているのかな?』

「こっちがこうやって魔物の生成を止めることも予定の内に入っている……ような気もするけどな」


 雪斗は一度後方を見やる。騎士達がこの平原から魔物を出ないよう押し留めているはず。


「……ディーン卿も魔物をいちいち倒して回るのは難しい。どちらにせよある程度見切りをつけてシェリスの所へ向かう必要がある」

『援護はなしと』

「そうだ。俺達と騎士団とを分断するだけでも、十分魔物は役目を果たしているし」


 答えながら雪斗は変わらぬ速度で駆ける。魔法陣を全て破壊すれば後は決戦を残すのみ――無意識の内に、剣を握る拳に力が入った。


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