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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第二章

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彼らの作戦

「確実、と断定はできませんが、成功する可能性は高い手法は思い浮かびます」


 イーフィスの発言に、雪斗とナディは即座に反応する。


「本当か? それなら――」

「ただし危険も伴います。失敗すればそれこそ、誰かが犠牲になる可能性も……」

「とにかく、話してみなさいよ」


 ナディが言う。それにイーフィスは一拍間を置いた後――


「……ふむ、シェリスが放つ技の特性を利用するってことか」


 雪斗は彼から説明を受けて思考し始める。


「その技は、シェリスが窮地に陥った際に使う可能性が高い……それは俺も理解できるし、実際に幾度となく使ったのを見たことがあるな」

「その技自体は非常に危険です。威力はユキトも理解しているでしょう。失敗すればその技をまともに食らい、下手すれば――」

「ただ、やってみる価値はありそうね」


 ナディは言う。ただ、雪斗としては一つ懸念がある。


「その技に対抗するためには、どうしても俺の切り札……リュシールからもらった魔力を活用しないといけない。一度使って解除すると使った時間に応じてまともに戦えなくなるから、もし一つ目を使ったら効力が切れないように二つ目を使う必要が出てくる。だから不測の事態に備えておく必要はあるな」

「もし失敗したら、というやつ?」

「本当なら一度目で勝負を決めたいところだが」


 雪斗は述べた後、小さく息をついた。


「相手はシェリスだ。しかもこちらが加減をしなければならない……本来彼女の実力なら加減なんてしていられないはずで、三人いてもどう戦いが転ぶかわからない」

「魔神の魔力により、どういう変化があってもおかしくないし、ね」


 ナディはそうこぼすと、目を細め怒りを露わにする。


「アレイス……魔神の魔力をその身に受けてしまったことは同情の余地があるけれど、やることが狡猾ね」

「……なあナディ。根本的な疑問なんだが、どうやって魔神の魔力を体に加えたんだろうな?」

「考える余地はいくらでもあるわ。それこそ邪竜との戦いが終わった後……私達を含めディーン卿やダインもまだ迷宮近くにいた。その時に魔神の魔力を取り込んでしまったアレイスが何かをしたって可能性もある」

「アレイスだってこんな戦いを仕掛けようなんて思っていないだろうが……いや、そこまで予期していたのか?」

「さあね。けどもし私の考え通りだとしたら、アレイスはさらに狡猾に、そして遠大な戦略を立てているでしょうね」

「とはいえ、そう悲観的になる必要はないでしょう」


 次に述べたのは、イーフィスだった。


「リュシール様やユキトが現れたことは、彼にとっても間違いなく想定外だったはず。ユキトの力は誰もが理解し、またどんな状況でも覆せると言えます。加え、リュシール様を始め天神の力を借りることもできる……状況は決して悪くはない」

「リュシールはともかく、俺の方はそう期待できるとは思えないぞ」

「謙遜する必要はないわよ」


 ナディが応じる。その目は雪斗のことを信頼している感情が明瞭に読み取れた。


「ま、私もそう悲観的じゃないわ。今回の戦いだってユキトがいなければ絶望的な戦いになっていたでしょう。シェリスを救うために多大な犠牲を払う必要だってあったし、たぶん国もその心づもりだったはず……けれどユキトが現れたことで、犠牲もなく救える可能性が出てきた。これはかなり大きい」

「もう一つ付け加えるならば、犠牲を出さないことはシェリスにとって精神面でも大きい」


 イーフィスが続けると、雪斗も理解し続きを語る。


「犠牲を払って正気に戻ったとしても、精神的なダメージが大きいでしょう」

「確かに、な。そうした事を回避できる今の状況は、決して悪くないってことか」

「だからこそ、この作戦の重要性が増しますね」


 イーフィスが言うと、雪斗は頷き、


「ならより策を詰めていかないと……ダインとの戦いでわかったことは、魔神の魔力をその身に受けても本人の性格は一切変わらないこと。だから戦い方も性格そのものが出ることで間違いない」

「シェリスの方も敵がユキト達だとわかったらさすがに警戒くらいはするわよね」

「選択肢は二つある」


 ナディの意見に雪斗は説明を行う。


「一つはその警戒を逆手にとる方法……ただ俺としては思い浮かばないけど」

「逆手にとる、という時点でかなり頭を使うからね。シェリスは十中八九攻撃も激しいし、考える余裕があるかしら」

「だとしたら選択肢その二になるけど、いいか?」

「内容は?」


 聞き返すナディに対し、雪斗は一拍置いて、


「それこそ、シェリスが考える余裕がなくなるくらいに追い込む……こっちの方が確実性が高そうだけど」

「なるほどね。追い込んで体の中に染みついた癖を利用して……ってところかしら」

「そういうやり方になるな。ただこの場合は別のことを危惧しないといけない」

「シェリス自身の身の安全、ですか」


 イーフィスはそう語ると、口元に手を当てた。


「正直、こちらもそれを考える余裕はないかもしれませんけどね……」

「霊具の力が驚異的だからな……基本方針はこちらにしよう。二人は何か意見はあるか?」


 雪斗は問い掛けたが両者は何も答えない。同意ということだ。


「なら、この方針でいこう……シェリスとしてはこの三人の中でも特に俺を警戒するはず。もしかするとそこが狙い目かもしれない」

「問題は私よね」


 と、ナディが肩をすくめた。


「イーフィスは後方支援の役割を担うからいいとして、前に出るユキトと私では、私の方が十中八九限界が先に来る」

「鎧の耐久力をもってしても、さすがにキツイか」

「攻撃特化のシェリス相手だと、私単独では防戦一方だしね……何度か訓練でやり合ったことはあるけど、正直勝てるイメージが浮かばなかった」


 ここは相性の問題もあるかもしれない。ナディの霊具は体術強化のバランス型。シェリスもまた同様だが、霊具の力はシェリスの方が上――ナディの鎧を突き破ることがシェリスはできるが、ナディの方は思うようにダメージを与えることが難しいかもしれない。


「でも私の拳がまったく通用しないわけじゃない。ユキトが上手くやってくれるなら私の方で攻勢を掛けることもできるけど」

「……そこは正直、シェリスの出方次第でもあるからな。実際に戦ってみなければわからない」

「わかった。なら前衛のメインはあくまでユキト。とはいえ私の方が中途半端な動きをすれば付け入られる。頑張ってユキトに食らいつくわ」

「そこは俺もフォロー入れられないから、頼むぞ」


 告げるとナディは笑う――邪竜との戦いではこうして話し合いの場が幾度となく設けられた。強大な魔物達を相手にどう戦うか。そしてどうすれば犠牲を少なくできるのか。


(まさかこうして再び話し合い……しかも同じ戦友を相手にして、というのは想像できなかったな)


 雪斗としては複雑な心境だった。ただ嬉しいという感情は不謹慎のような気がして、無理矢理そうした言葉を頭の隅に押し込めた。


「……シェリスは、ファージェン平原の戦いを最前線でくぐり抜けるくらいの力を持っている」


 そして雪斗は、最後に述べた。


「その力は脅威だし、ここで凶行を止めなければならない……そして、彼女を救わなければならない」

「頑張りましょう、ユキト」


 ナディが拳を突き出す。ユキトそれに拳を合わせると、イーフィスもまた差し出し、同様のことをした。

 そんなやりとりが成される中で、雪斗達は進む――目指す場所まで、もうすぐだった。


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