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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第二章

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次の目的地へ

 雪斗が放った白い剣戟がダインの体を一度駆け抜け、悪しき力を取り払う。雪斗にも確かに見えた。天神の力によって、ダインの体の中に存在していた黒い力を消し飛ばす光景が。

 そして雪斗は『神降ろし』の状態を解除する。一瞬であれば疲労により動けなくなるということはない。けれど霊具に仕込んでいた魔力は完全に尽きてしまった。


「……どうだ、ダイン」


 雪斗は話し掛ける。地面に倒れたままのダインはしばし視線を宙に漂わせ、


「――とりあえず、魔神の影響下にはなくなったな」


 ゆっくりと起き上がる。それと共に軽く伸びをした。


「ああ、平気だ。思考も問題はない」

「ということは、成功だな」

「みたいだな……いやしかし、不思議な体験だった」


 どこかのんきにダインは語る。


「思考は普通なのに、その全てが魔神の方に傾いているんだ。しかもそれをちっとも矛盾していると思わない」

「……信奉者は邪神に心酔しているが、ダインみたいな場合は思考をそうした方向に誘導しているのかもしれないな」

「なるほど、確かになあ……ま、ひとまず俺の方はどうにかなったな、ユキト」

「人ごとみたいに言うなよ……ともかく、正気には戻せたな。それで訊きたいんだが――」

「アレイスのことだろ? でも戦う前に話した以上のことは知らないぞ」

「ディーン卿なら知っているのか?」

「かもしれないな」


 肩をすくめるダイン。ならばすぐにディーン卿の下へ向かわなければならない。


「……ダイン、付き合ってもらえるか?」

「いや、俺疲れているんだが」

「少しくらい無茶しても大丈夫なのは前の戦いでわかってるぞ」

「おいおい、待ってくれよ。俺は魔神に操られていたんだぞ。少しは休ませてくれてもいいだろう」

「ここからディーン卿の屋敷まで半日くらいある。馬車を使えば揺られている間は休めるぞ」


 雪斗の言葉にダインはがっくりと肩を落とす。


「その強引さ、相変わらずだな」

「そうか?」

「つーか、その馬車で休めるって内容は邪竜との戦いで五回くらいは聞いたぞ!」

「わざと言っているからな」


 雪斗の言葉にダインは再び肩を落とした。


「なあユキト、もしかして傭兵ってことで俺を使いやすい人間だと思ってないか?」

「身分のない人間の方が指示しやすいのは確かだな」

「まったく……だから俺はこき使われたのか」

「言っておくけど、こき使われていたのはもう一つ要因があるぞ」

「何だよ?」

「報酬に目がくらむ性格」


 雪斗の指摘にダインは押し黙った。


「報酬により何でもホイホイ受けるその性格が災いしたな」

「……そりゃあ俺は金が目的で傭兵やってるわけだからな」

「ちなみに今回の仕事の依頼料はこのくらいだ」


 宙に金額を描く。するとダインはどのくらいの値だったのかわかったようで、


「お、おいおい。ずいぶんとまあ、報酬つり上げるな」

「多少無茶をやらないといけないからな」

「危険手当込みってことかよ……仮に戦いがなくても、その額はもらえるのか?」

「そこは俺がジークにでも交渉しとくよ」

「はあ、わかったよ……ま、協力するのは確定だからな。裏切ってた分働くさ」

「その意気だ。というわけで早速ディーン卿の屋敷へ向かう――」


 そこまで言った後、雪斗は一つ確認を行った。


「ディーン卿は屋敷にいるんだよな?」

「だと思うぜ。あの人と俺とでは役目も違っていたらしく、あんまり関わらなかったからわからないが」

「屋敷にいない可能性もあるのか……ディル、ここからディーン卿が屋敷にいるかわかるか?」

『現在捕捉しているんだけどさ、屋敷全体に魔法でもかかってるのか判別できないんだよね』

「屋敷に赴かないとどうなっているのか判断はつかないってことか……」

「勇者ユキト!」


 ここで騎士の一人が駆け寄ってきた。


「魔物の征伐も終わりました……ダイン様はご無事で?」

「ああ。どうにか引き戻せたよ。俺達はすぐにディーン卿の屋敷へ向かいたいんだけど、そちらはいけるか?」

「早急に移動できる処置をしますが……私達も同行するんですか?」

「魔術師などに結界を張ってもらい、屋敷を隔離しよう。退路を断たないと何をするかわからないから」

「なるほど……わかりました。移動が可能になったら再度ご連絡します」


 騎士が立ち去る。それを見ながらダインは一つ言及した。


「俺とユキトの二人でやるのか?」

「それしか選択肢はないよ。国側に応援を要請するにしても、時間が掛かる。ディーン卿が下手に動くより前に、こっちから仕掛ける」

「はあ、なるほどな……とはいえ俺はゼルもディーン卿も苦手なんだけどな」


 ダインは息をつく。


「魔神の力はなくなったから、俺の攻撃力は元に戻った。能力使えば俺は彼らの攻撃を食らわないけど、決定打はないぞ」

「ディーン卿かゼルか……どちらかを食い止めてもらえばいい」

「一対一にもっていくってことか。ま、それが無難ではあるな」

「そういうわけで手伝ってもらうぞ、ダイン」

「ま、頑張りますか」


 腕を軽く振る。先ほどの戦闘でそれほど魔力を失ったわけではない。この調子ならば十分戦えるだろう。


「騎士の連絡が来たら即座に出発だ。休憩は馬車の中で頼むぞ」

「はいはい、わかったよ……ユキトのお手並みを拝見させてもらうさ」

「さっきので確認できなかったか?」

「本気を出していたわけじゃないだろ? ディーン卿相手に全力を出すとは思わないけどさ」


 笑いながら語るダイン。その目は、雪斗のことを頼もしく思っている様子が垣間見られた。


「それじゃあ乗っけてもらう馬車でも決めるか……ユキトはどうするんだ?」

「ここまでほぼノンストップできたから、ダインと同じく馬車に乗って休ませてもらうよ」


 そう応じながら雪斗はダイン共に歩き始めた。






 それから程なくして馬車に乗り、雪斗達はディーン卿の屋敷へと急行する。

 ディルの報告によれば屋敷の中を確認することはできず、出たとこ勝負になりそうな雰囲気。ただ雪斗もダインもそれほど悲観的ではなかった。


 原因はディーン卿達の能力。彼らの霊具は純粋な身体強化に方向が向いているため、例えばダインのような能力特化的な霊具でも十分勝機はある。雪斗としても単独ではなく連携して対応できる以上は、戦いそのものも十分楽になるだろうと考えている。


「ダイン、二人同時に現れたらどっちをやる?」

「ゼルよりはディーン卿だな。魔法攻撃でも結界とかじゃなければすり抜けられるけど、何が起こるか不安なんだよな」

「ならまずはゼルを相手にして正気に戻す……続けざまにと上手くいくかどうかはわからないが、屋敷を隔離して逃げ場をなくせばいけるだろ」

「あとは俺の魔力がどこまでもつかだよな」

「俺との戦いにさほど時間を使っていなかったから大丈夫だろ」

「楽観的過ぎるだろ……まあいいさ、俺はディーン卿を受け持つ。その間に頼むぞ」

「ああ」


 返事と共に車内に一時沈黙が生じる。そこで雪斗はディーン卿達との戦いにどう臨むかを思案する。

 彼らの能力は広範囲攻撃が主体。戦場が外であろうと中であろうと縦横無尽に攻撃し続けるため、どのような状況下でも戦法自体は変わらない。


(ただ、屋内と屋外とでは状況も変わるよな)


 雪斗の剣は派手に動けば屋敷などは倒壊してしまう。それによって身動きがとれなくなっても雪斗ならば打開できるが、ディーン卿側がどう動くのかわからない。


(ともかく逃げないように注意を払わないといけない……そこに意識を向けていれば大丈夫か)


 早く彼らを救い、アレイスを――そういう気持ちを抱きながら、雪斗達はディーン卿の屋敷へと進み続けた。


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