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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第二章

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剣の山

 再び迫るダインに対し、雪斗は剣を逆手に握り、地面に突き立てた。その行動に対しダインが訝しげな視線を送った矢先、雪斗の周囲の地面が突如黒く染まる。


「っ……!?」


 さしものダインも予想できなかったか、攻撃を中断し後退した。


「本音を言うなら結界を限界まで収縮し、逃げ場がない状態にするのが得策なんだが」


 そう雪斗は呟くと、ダインを見据える。


「最初からそんな結界を構築しようとしてもさすがにダインは逃げるだろう。少しずつ結界を狭めていくなんて手法はできないし、この作戦は採用できなかった」

「まあ俺の能力について把握している間柄だ。そこはさすがに警戒していたさ」

「加えて、結界を壊す手段も持っている……だろ?」


 雪斗の問いに、ダインは笑みを浮かべた。正解らしい。


「さすがにアレイスもその辺りは考えている……推察通りだ。雪斗自身、ディルの能力は高いが、結界についてまで有能ってわけじゃないだろうからな」


 実際、その通りだった――ディルの特性は攻撃に特化したものであり、防御については基本向かない。

 例えば結界構築能力が高い霊具を用いればダインの動きを封じることができるし、破壊することも防げただろう。けれどそういう人材を連れてきた場合、彼は勝負してくれない可能性が――そうした予測も雪斗は立てていた。


「もし状況が悪くなれば、さすにがダインと言えど逃げるだろ?」

「否定はしないな。ならどうする? 不得手な結界の強度を上げるか?」


 肩をすくめ、ダインは問う。


「そちらに力を集中させることになれば、さすがに隙もできるだろ」

「……ま、そういうことだ。なら選択肢は一つしかない」


 そして雪斗は地面に突き立てた剣に魔力を込める。


「ディル――やれ」

『了解!』


 気合いの入った声と共に魔剣が力を開放。それと同時に地面に黒が浸食していく。


「何を……する気だ?」


 ダインの足下も黒で覆われる。そればかりではなく、周囲を隔離する結界にも新たに発した雪斗の魔力が浸食していく。


「簡単な話だ」


 直後、黒から出現したのは――刃。黒い刃が地面から出現し、伸びる。一定の長さにまで達すると黒が弾けるように消え、さらに別の刃が生まれる。それが地面だけでなく、ドーム状に形成される結界のあらゆる場所から出現していた。

 それはまるで、戦場全てが針の山に変じたような光景。


「ダインの次元干渉能力は、確かに無敵になることができる。だがその能力には限界もある」


 淡々と語る雪斗に対し、ダインは地面から生えては消える剣の山を眺める。


「つまりこの結界内全てを攻撃し続ければ、いずれ魔力が途切れて能力を解かざるを得なくなる」

「……無茶苦茶にもほどがあるぞ」


 ダインが呻く。次元干渉によりダインの足下から生える剣も彼に触れるが攻撃は当たらない。しかしこれが延々と続けば、彼もいつか能力を解く時が来る。


「こんな無理をして、体が持つのか?」

「逆に問うが、俺がこうして攻撃し続ける間、能力がもつのか?」


 尋ね返した矢先、ダインは前に出る。剣が地面から出続ける中で彼は雪斗へ肉薄する。

 そして刃が雪斗の体に触れようとした。その瞬間だけ雪斗はあえて彼の立つ場所に剣を差し向けなかった。


 剣が次元越しに触れていると、能力が解除できない――それを見越してのもので、実際ダインは能力を解除し、今まさに雪斗へ刃を当てようとする。

 だがその直後、剣の山が一斉にダインへと襲い掛かる――!!


「くっ!?」


 彼の刃は雪斗に触れたが、傷を負わせるだけの勢いはない。そして雪斗の剣の山もダインに攻撃を当てはしたが、ダメージを食らわせるには至らない。

 もっとも、地面から幾本も突き込まれた剣の衝撃に、ダインは呻いた――それは本命の一撃を当てるだけの明確な隙となる。


 雪斗が剣を差し込む。ディルが既に彼の持つ鎧を解析し、戦闘不能にさせるだけの威力を持たせたもの。

 それはダインも悟ったらしく――即座に後退。それと共に能力を起動し、虎口を脱した。


「……能力を解除した瞬間、剣の山が襲い掛かる」


 そして雪斗は語り始める。


「傷はなくとも衝撃までは防げない。その瞬間、俺は剣を叩き込もうとする……まあダインは逃げるだろうな。けど延々と攻撃を続ければ次元干渉能力を起動し続ける必要がある。それは結界を破壊する場合は――」


 ダインは結界から生える剣を見据える。


「一瞬で結界の際まで移動できる手段くらいは持っているかもしれないから、常時技を起動し続ける……剣の山から逃れることができるタイミングは、俺を攻撃する時だけだ。さて、どうする?」

「……こんな手法を、ここに来るまでに考えていたのか?」

「最初の一撃で決まってくれれば出す必要はなかったんだけどな」


 雪斗は肩をすくめる。能力を発動し続けていてなお、涼しい顔だった。


「ダインを追い詰めるなら、能力を起動させ続けて持久戦に持ち込む……これがベストだろうと考えたため、こういう手法をとらせてもらった」

「……結界内に捕らわれた時点で、勝負はついていたってことか」

「まだ詰んではいないさ。ダインが俺を倒すシナリオだって存在する。ダインが攻撃する以上、こちらもリスクはあるからな」


 雪斗は剣を構える。そしてダインを――それこそ邪竜と対峙するかの如く見据える。


「油断はしない。全力で戦い、ダインを救う」


 宣言に、ダインは笑みを浮かべる。どこまでも無邪気な、はつらつとした笑み。


「やれやれ、ずいぶんと仰々しい戦法だ……けどまあ、これはこれで面白い!」


 叫ぶと同時にダインは駆ける。一気に肉薄した彼の刃は、雪斗の衣服をしっかりと捉えた。

 だが逆に剣の山が彼の体を襲う。それに突かれたことにより、彼は身動きがとれなくなる。


 すかさず雪斗が剣戟を見舞う。だがダインは一瞬で剣の山をすり抜け、退避する。

 雪斗の方にダメージはない。先ほどの光景が繰り返された形だ。


「……やれやれ、これでユキトの方も一撃で倒れてくれれば、まだ勝ちの目はあったんだろうけどな」

「悪いがそこまで手を抜くつもりはないよ」

「わかってるさ……ま、こういうことなら逆にシンプルになった」


 ダインは呼吸を整える――どうやら次の一撃に賭けるらしい。


「俺の全力が……どこまで通用するか――」


 走る。そして雄叫びと共に放たれた斬撃に対し、雪斗は魔力を高め応じた。

 反撃で仕留めるために剣での防御はしない。ダインの攻撃が通用するか、それとも雪斗の防御が上回るか――


 刹那、ダインの剣が雪斗の胸元へと入った。能力を解除したことにより衣服に食い込み、肌に届こうとする。

 だが、それでも雪斗から鮮血が生じることは、なかった。


「――ダメ、か」


 反撃。まず剣の山がダインに突き刺さり、動きを止める。攻撃に全力を尽くした彼は、もう逃げる余裕を残してはいなかった。

 直後、雪斗の剣がダインへと直撃する。皮膚の上にまとう金属鎧を破壊し、その内側にまで衝撃を与える斬撃。ダインの体は浮き、地面に倒れ伏した。


「見事、だな。まあ無茶苦茶な戦法だったが」

「ほっとけ」


 雪斗は応じながら彼に近寄る。そして懐からリュシールに託された霊具を手にする。


「そういえば、どうやって魔神の魔力を取り払う?」


 ダインの問い掛けに、雪斗は行動で応じた。途端、漆黒が――純白へと変わる。

 それを見て、ダインは笑った。


「……何だ、ユキト。白の勇者の真似もできたのか」

「ああ」


 返事と共に雪斗はダインへ向け一閃し――その魔力が、結界内に弾けた。


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