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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第二章

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遠征と指導

 話し合いの翌日、準備が整った雪斗は都を離れ、かつての仲間を救うべく旅を開始する。

 行き先は大陸南西部に位置するベルファ王国。まだディーン卿達は動いていないが、ダインについては魔物を率い行動していることが確認されている。


「間に合えばいいけどな……」


 リュシールの話によれば、霊具を扱っている間は魔神の魔力に対し完全には浸食されない。とはいえ徐々に進行するのは確実で、時間が経てば救える可能性が低くなる。


「後は俺が手順をミスらないことを祈るしかないな」


 リュシールから魔力相殺については教授された。やり方はわかったが、相当魔力を消費するため、確かに『神降ろし』を行使できる魔力は温存しなければならないと認識できる。


「ダインはこの手が通用するか確認する意味合いもあるな……続いてディーン卿達か」


 その時、雪斗の脳裏にかつての戦いが思い起こされた。夢に見たファージェン平原の戦い。その中で立つ、一人の少女。


「……アイツもまた、寝返っていたりしていないだろうな」


 もしそうなら、大変なことだ。なぜなら彼女は天級霊具の使い手であり――


『なんだか、面倒な事態になってるねえ』


 そんな感想がディルからもたらされた。


『かつての仲間と戦う……か』

「アレイスとしては味方同士を戦わせて戦力を削ろうって魂胆かもしれないな。俺がそうはさせないけど」

『ここで仲間を取り戻して、アレイスの野望とやらをリュシールが止める……というのが基本構図かな?』

「問題はアレイスの目的が何なのか、だな。グリークと手を組んで成し遂げたかったこと……これは推測だけど、アレイスの目的は迷宮に眠る何かなのかもしれない」

魔紅玉(まこうぎょく)ではなくて?』

「魔紅玉なのか、あるいは別のものか……あの迷宮は天神と魔神の最終決戦の場だ。俺達が把握していない何かがまだあるのかもしれない」

『なるほど。現在迷宮は封印されているし、入り込まれる可能性は低いと思うけど……』

「王都の守りは堅牢だからな……まあ俺の推測で説明がつかない部分もあるし、あくまで一つの推測っていう認識でいいさ。さて」


 雪斗は真っ直ぐ見据える。街道がどこまでも続き、馬車などが王都へ行く姿も確認できる。


「ひとまず大陸中で魔物が暴れ回っているわけではないことは救いだな……とはいえアレイスを放置すればいずれ邪竜との戦いによって生じた悲劇が再び到来する。それだけは、絶対に避けないと」

『うん、頑張ろう』

「ああ」


 返事と共に雪斗は足に力を入れ――街道を駆け抜けることとなった。



 * * *



「そう、魔力を高め、魔力を相殺する」


 雪斗が旅立ち、城に残された翠芭(すいは)達は戦いに備え鍛錬を行う。そうした中で翠芭は少しばかり特殊な訓練――雪斗のような魔力相殺についてリュシールから教えを受けていた。


「うん、コツはつかんだようね。この調子ならすぐに実戦で使えるわ」

「ありがとうございます……これで魔力相殺については終わりですか?」

「ひとまず、ね。私も準備が整ったし、今日中には城を出るつもりよ」


 リュシールはそう述べると、信人(のぶと)達を指導するレーネに目を向け、


「レーネ、翠芭達を頼むわね」

「ああ、任せてくれ」


 頷くと、リュシールは再び翠芭へ目を向ける。


「聖剣所持者として、少なからず緊張はあると思う……けれど、スイハは自分にできることをすればいいわ。前回召喚された聖剣所持者のカイは、それこそ出来過ぎだったくらいだから比べるのは間違っているし、状況も違うからね」

「はい、その……頑張ります」


 翠芭の言葉にリュシールは「お願いね」と応じ、歩き始める。翠芭は彼女の後ろ姿を見送った後、レーネへ向け口を開いた。


「私はどうすれば?」

「剣の修練に入ろう。それと魔物が町の周辺で出現したと報告があった。明日にでも討伐に向かう……それが魔物との初戦闘になるな」


 初戦闘――少なからず緊張したが、レーネは笑う。


「そう肩肘張る必要はないさ。それにスイハはある意味初陣は済ませている……ノブトの暴走を抑えた時に、な。あれと比べれば大したことはない」


 そんな言葉を受け、翠芭は信人に視線を送る。レーネとは異なる別の騎士の指導を受けて槍を振っているところだった。

 また貴臣(たかおみ)千彰(ちあき)については魔術師らしき人物からレクチャーを受けている――千彰の霊具は前衛の役割を担うが、魔法の特性を持つためにそうした形をとっている。


 そして最後に花音(かの)だが、彼女については短剣の扱い方などを女性騎士から指導されているが、肝心の霊具そのものについては解説していない。


(雪斗も困っていたし、どう扱えばいいのかわからないってことか……)


 果たしてどのような霊具なのか。翠芭としては気になったが、結局尋ねることはせず、自分の鍛錬に勤しむ。


「ディーン卿達の動向はこちらも常に情報収集している。もし何かあれば、逐次報告しよう」


 そうレーネは告げる。正直関わるかどうか微妙な話ではあるが、何かあって戦うとなれば――覚悟は今のうちにしておくべきだろうと翠芭は思う。


「ユキトがダインとの戦闘に入るのは、おそらく数日経過してだ。その間に君達はそれなりに戦える体裁を整えておく……ディーン卿が動き出すのはおそらくそのくらいだろう。まあ君達が関わることはないと思うが」

「迷宮についてはどうするんだ?」


 信人が質問。それにレーネは肩をすくめ、


「現在迷宮は封鎖している……それを解除するのはアレイスとの戦いが終わってからだ」

「少なくとも、地上で戦闘がある間はやらないと」

「迷宮攻略は、それこそ地上で戦争をこなすくらいの難事業だからな。十分な準備と戦力がなければ行かない……どれほど脅威なのかは、この世界に暮らす者達なら重々承知している」


 重々しく語るレーネ。迷宮に入るのは現在起こっている戦いが全て終わってから――その時、翠芭はどうなっているのか。そしてクラスメイトは、


「ともあれ、今はその準備段階という認識でいい。今の訓練がいずれ迷宮攻略に繋がる……そういう認識で構わない」

「明日の戦闘は、その手始めってことか」


 信人の呟きにレーネは「そうだ」と答え、


「無論、君達だけに任せるわけではない。きちんと私を含めた護衛を用意する……と、その一人を紹介しておこう」


 そこでレーネは信人と向き合う男性騎士へ目を向ける。


「彼が私と共に君達を手伝うことになる……霊装騎士団所属で、名はマキス=レーベンだ」

「よろしく頼む」


 無骨な騎士。灰色の髪を持つ彼は綺麗な角度で一礼する。


「生真面目な性格で、君達の相手でも問題ないだろうということで、霊装騎士団を離れてこちらの手伝いをすることになった」

「……ただ、肝心の霊具については一級霊具だ。君達が私を抜く日もそう遠くないだろう」


 そう語るマキス。さらに彼は微笑を浮かべ、


「君達がきちんと戦うために、指導をさせてもらう。私自身召喚者と共に戦えることを光栄に思っている……よろしく頼む」


 翠芭達は一様に頷く。そしてレーネは最後に語った。


「タカオミやチアキを指導している魔術師については、申し訳ないが一緒に行動とはいかない。あくまで指南役といった形だ。とはいえ魔法は霊具に秘められた力を活用できれば十分戦えるため、問題はないと思う。明日の戦いで、早速鍛錬の成果を見せてほしい」

「頑張ります」


 貴臣が応じる――そうして、穏やかな鍛錬の時間は過ぎていった。


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