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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第二章

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選ばれた霊具

 会議の席が一段落した時、ノックの音がした。雪斗が応じると扉が開き、現れたのは千彰(ちあき)花音(かの)だった。


「霊具を選んできたぞー」


 やや間延びした声で千彰が言う。


「といってもどんな能力があるのかわからないし、強いのかも不明だけど」

「俺やリュシールなら見たらわかるよ。で、物は?」


 千彰は雪斗達に霊具を示す。それは手のひらに乗るくらいの大きさを持った、青い水晶球だった。


「これが一番吸い寄せられるような感覚があった」

「へえ、面白い霊具を選んだな……名前は『風帝玉(ふうていぎょく)』。風を操る霊具だ」

「雪斗、ランクは?」


 質問は信人から。


「確か特級だったな」

「お、そうか。なら少し扱い方学んだら勝負でもしてみるか」

「信人、やる気か?」


 友人同士だからなのか、ちょっとばかり霊具を持って火花を散らす両者。だが雪斗はそこに横槍を入れた。


「あー、信人。大変言いにくいんだが……」

「どうした?」

「お前の霊具だと絶対『風帝玉』には勝てないぞ」


 途端、目を丸くする信人。


「は!? 何で!?」

「相性の問題だよ。『風帝玉』は魔法攻撃特化で、なおかつ発動すれば使用者は風によって守られる。物理攻撃特化の『天盟槍(てんめいそう)』だとその風の防壁が突破できず、攻撃を当てることすら難しい」

「ま、マジかよ……」

「ちなみに魔法攻撃のみだからレーネの『聖霊剣(せいれいけん)』に『風帝玉』は勝てない……見事な三すくみができたな」

「魔法攻撃と物理攻撃は相性が出るんだな」


 貴臣が率直な感想を述べると、雪斗は「そこが怖いところだ」と応じた。


「ただ霊具は基本、各国が管理して情報も共有しているから所持者が敵に寝返っても対策などが打てる。けれど魔神の力を所持する者が相手だと、顔を突き合わせた状態で能力や特性を見極めなければならない。場合によっては相性的に絶対勝てない相手というのが出てくるかもしれない……その判断はそれこそ戦歴を積み重ねないと難しいから、もし未知の敵と出会ったら逃げることを最優先にしてほしい」

「迷宮の戦いなんかは特に手探りだから、退路を確保することは重要ね」


 雪斗に続き、リュシールが口を開いた。


「そうね、一つアドバイスをしておきましょう。何はともあれ、まずは退路を確保した上で戦うこと。そしてもし危急に立たされたら逃げることを最優先……まあこれは時と場合にもよるのだけれど、もし味方が来るということがわかっているのなら、防戦に徹するのもありね」

「本当はそういう状況にならないのが一番だけどな」


 雪斗の言葉に翠芭も頷く。


「一番大切なのは、孤立しないことかな……」

「正解だ。戦う場合でも誰かの援護がある状態にはしておきたい……あ、ちなみに俺が単独で戦ったのは、敵の力量がわかって問題ないと判断したからだ。真似はしないように」


 そう述べた後、雪斗は花音へ視線を向けた。


「そちらはどんな霊具を?」


 問われ、花音はおずおずといった様子で差し出した――それは、一本の短剣。ただ鞘が目を見張るくらい艶やかな真紅。


「これかなって……直感だけど」

「その短剣で戦うってことかな?」


 首を傾げる翠芭。花音はどういう霊具なのかを尋ねようとして雪斗達へ顔を向けたが、ビクリとなって動きを止めた。

 原因は明白――雪斗、レーネ、リュシールが揃って花音が持つ霊具を凝視していたからだ。


「……そ、それを選んだのか? 直感で?」


 雪斗の確認に、花音は恐る恐るといった様子で頷く。もしかしてまずかったのか――そういう考えが浮かんでいる様子だったが、雪斗は構わずリュシールに問い掛けた。


「リュシール、これはどうする?」

「う、うーん……さすがに予想外だったわ。これが選ばれるなんて思ってもみなかった」

「あの霊具の扱いというのは、私も指導できないぞ」


 レーネが続く。会話の内容に翠芭や貴臣も驚き短剣を見据える。


「そもそもあれは指導なんてできるのか……レーネ、マニュアルとかあったか?」

「あるわけないだろう。前任者だってどう扱っているかよくわからん部分があるとか語っていた霊具だぞ」

「あ、あの―……」


 そこで花音が小さく手を上げながら声を発する。それでようやく雪斗達は彼女へ視線を向け、


「あ、ああ、ごめん……えっと、その霊具の名は『真紅の天使』っていうんだけど……」

「天使?」

「ああ。前任者が名付けたもので、炎を操る霊具だ」


 炎、と聞いてきょとんとなる花音。自分にそんなものが似合わないとでも言いたげな様子。


「で、問題があってね……それは召喚者ではなくこの世界の人が使っていたんだけど、長命な竜族の人で、使用者がその人しかいなかった……よって、どう扱えばいいのかとか、どういった特性があるのかとか、よくわかっていない」

「つまり、使う場合は手探りってこと」


 リュシールが続く。当の花音は手探りと言われて困惑した。それはそうだろう。


「リュシール、前任者は邪竜との戦いで亡くなり、霊具を国に託したんだよな?」

「だから宝物庫に眠っていたのよ。けれど以前も言ったわよね? あの霊具については調査ができないって」

「確か、作成した天神と相性が悪いだったか」


 天神同士でも相性が存在するらしく、リュシールの能力で『真紅の天使』についての解明は無理だった。彼女自身天神としては万能型で、大抵の霊具なら誰が作成しどういった特性があるものなのかわかるくらいに解析能力が優れているのだが、花音が持つ霊具の作成者だけは別だった。


「これは探り探りでやるしかないわね……とはいえカノさん、そう心配しなくてもいいわ。戦う時になれば封じ込まれていた力により体が勝手に動く。けれど真価を発揮できるかどうかは、完全に未知数ね」

「霊具自体は強いんだが、な」


 レーネが続く。雪斗も頷き、


「それは天級霊具……かなり強力な霊具なのは確かだから、窮地に立たされても対応はできると思う。ただ、癖が強い上に炎で広範囲攻撃なんかを主体とするから、扱いは注意してほしい……と助言しても、実行は難しいよな」


 花音としては困惑しっぱなし。とはいえ相当強く厄介な霊具だと認識はしたのか、


「あの、無理しないように頑張るよ」

「ああ、頼む」


 花音はコクリと頷く。ここでリュシールは手を鳴らし、


「ひとまず、こんなところね。ユキト、これからどうする? 行動開始は――」

「早ければ早いほうがいいだろ。それにダインが動いて軍も動いているのなら、さっさと片付けた方がいい」

「そうね。魔力を相殺できる霊具をすぐ用意しましょう。レーネ、あなたは?」

「ひとまず新たに加わった面々と共に鍛錬を。五人になるので指導役も増えるでしょうね」

「わかったわ。ひとまず私は霊具を集めるのとアレイス捜索のために準備を進める。一度外に出て調査を行い、タカオミ君の準備が整い次第、行動開始。これでいきましょう」


 段取りが決まる。そこで雪斗は最後にクラスメイトへ、告げた。


「最初は戦わせないように動いていたけど、そうも言っていられない事態になりつつある……心苦しいが、力を貸して欲しい」

「死なない程度に頑張るさ」


 信人が応じる。それに雪斗は「頼んだぞ」と告げ――この場は解散となった。


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