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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第二章

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魔力相殺

「魔神の魔力相殺は私やユキトの他に、魔力を溜めることができれば他の人もできる……そういう技術を持っている人は多い方がいいわよね」


 リュシールの主張に雪斗は小さく頷く。


「敵が分散する可能性を考慮すれば、使い手は多い方がいいな」

「なら、そうね……技術について二人にも教えましょう」


 そう告げてリュシールは翠芭と貴臣へと目を向けた。


「スイハならば聖剣の力で相殺はできるし、タカオミの杖も増幅機能などを活用すれば使えるわ」

「二人も外へ行くと?」

「現段階ではあくまでそうした技術を教えるだけね。あと、個人的にこの城が狙われる可能性も危惧しているの。もしアレイスが召喚者を懸念しているのなら、まだ霊具の扱いが慣れていない段階で対処しようと思うはずだから」


 その言葉で翠芭達の顔に緊張が走る。


「無論、この城の防備は完全だと思うけれど、相手がアレイスだからね」

「確かに、城のことをよく知っている相手だ」


 レーネがリュシールに続いて語る。


「仕掛けてくる可能性は低いにしても、ゼロではない……技術を誰かに渡し、この城で備える者がいてもいいだろうな」

「決まりね。さて、今後の方針にも関連するところだけど……私は都の外へ出て、アレイスの足取りを追うわ。当然私は魔神の魔力を浄化できるから、裏切った人が来ても対処はできる」

「そして城に翠芭達か……」

「ええ、ここで一つ確認しておきたいのが、スイハ達はどうするのか、ということ」


 少しばかりリュシールは声のトーンを落とした。


「これは私の考えだけれど、鍛錬が一通り済んでいるのならば、情勢的にも戦ってほしいという考えはある」

「それは……」

「ユキトが戦わせたくないというのも理解できるわ。けれど、状況がそれを許さないというのもまた事実よ」


 ――召喚された時から状況を認識するに当たり、確かに少しでも戦える存在。それも特級以上の霊具を持つ者の加勢はありがたいのも事実。


「私は別に全員に無理矢理武器を持たせて戦わせようと思っているわけではないの」


 さらにリュシールは続ける。


「協力してもらえる人には、是非とも戦線に加わってもらいたい……これは国の立場として。ただ、最前線で戦えと言うわけでもない。例えば後方支援でもいい」

「――ユキトにこういう言い方は卑怯に思われるかもしれないが」


 と、今度はレーネが言う。


「アレイスが敵であることから、戦いがどう動くか予想もつかない。何が目的でどういう手札を持っているのかを知るためにリュシール様は動くわけだが、場合によってはこの城が戦場になる可能性もあるだろうし、あるいはアレイスの計略により迷宮から魔物が出てくる可能性だって存在する。そうした危急に迫られる形で初めて武器を振るうよりは、まずこちら側が自由に動ける状況下で戦ってもらった方が、経験も積めるだろう?」

「確かに、そうだけど……」


 答えながらも、雪斗としては自覚している。すなわち、選択肢は少ないと。


「わかった……というか、武器を手に取るだけではなく、戦場に立つということについても覚悟がいる話だ。だから霊具所持者が同意したときにだけ、戦線に加わるってことで、構わないか?」

「そうね……みんなもそれでいいかしら?」


 リュシールは翠芭達に質問すると、全員が一様に頷いた。


「ありがとう。では次に今後の方針について。私達がやることは三つ。一つはアレイスの目的を探ること。これは私がやるわ。そしてもう一つは裏切った者達を救うこと。これはユキトが担当。そしてもう一つが迷宮を踏破するための鍛錬と、この王都の守護。これはスイハに任せればいいかしら?」

「はい、頑張ります」


 翠芭の言葉にリュシールは満足したか、笑みを浮かべた。


「ええ、お願い……それで、私は今後アイレスの動向を探るべく動き回るけど、それに力を貸して欲しい……タカオミ君」

「僕、ですか?」

「ええ。霊具『空皇の杖』はそれだけ強力な物だから、アレイス捜索に非常に役に立つと思うの」

「ということは、貴臣は外に出るってことか」


 雪斗の指摘にリュシールは頷く。


「といっても、もう少し城で経験を積んでからね。もし外に出たら霊装騎士団や私が守るから、心配しないで……タカオミ君、どう?」

「……僕でよければ」

「なら決まりね」

「俺はどうすれば?」


 ここで信人が手を上げた。


「翠芭と同じく王都の守護?」

「そうね……ふむ、今回新たに二人霊具使いが加わるわけだから、少しばかり魔物がどういうものなのかを間近で確認して、心構えをしておくのがいいかもしれないわね。翠芭を含め、全員に仕事をしてもらいましょうか」


 そう述べるリュシールに、翠芭は首を傾げた。


「仕事、ですか?」

「迷宮が復活したことにより、おそらく王都の周辺に魔物が散発的に出現しているはずよ。レーネ、どうかしら?」

「仰るとおりです。質や量としては二級霊具を持っていれば容易に対処ができるくらいですが」

「ふむ、戦場に慣れさせるには丁度いいかしら。王都周辺に出現する魔物を倒し、実戦経験を積むってことでいいでしょう。レーネ、スイハ達の支援をしてもらえないかしら?」

「私は現在召喚者達の護衛などを任されているので、必然的にその役目を担うことになりますね……わかりました。加わった二人を含めた方々を監督するということでいいですか?」

「ええ、それでいいわ」

「悪いな、レーネ」


 雪斗の発言。それに彼女は肩をすくめ、


「むしろ私の方こそ悪い。本当ならば外に出てユキトの支援をしたいところだが」

「交流がある騎士と共に戦った方が翠芭達も心強いだろうし、頼むよ」

「承った。スイハ達のことは任せてくれ」

「よし、これでいいな……と、ここで問題は俺か。遊撃するにしてもさすがに単独というのはまずいだろ? 霊装騎士団の戦力を回せるのか?」

「多少なりとも人員を割くことになるとは思うが、さすがに十分とは言えないだろうな」


 これはレーネの意見。


「ただ、ユキト。私はそう心配していない」

「……どういうことだ?」

「そう遠くないうちに、ユキトの所に戦力は集結するからな」


 その言葉を受け――雪斗は一時沈黙。そして、


「……ちょっと待て。それってもしや」

「ユキトが想像しているとおりだ」

「ま、待てよ。俺、元の世界へ戻る前にあの隊は解散ってレーネに伝言を頼んだはずだろ――」

「確かに私は伝えたぞ。一言一句、正確に」


 そこでレーネは雪斗へ視線を送り、


「だがユキト、一つ問いたい……あの方々が伝言一つで納得すると思うのか?」


 問い掛けを受け、雪斗は押し黙った。何のことなのかわからない翠芭達は会話をただ聞くしかない。

 一方リュシールは意を解したらしく、口元に手を当て笑い始めた。


「なるほど、あの隊か……けれどレーネ、集まるには時間が必要ね?」

「そうですね。よってダイン達との戦いについては霊装騎士団の支援により対処ということになるでしょう」

「そうね。ひとまず方針は決定したわ。ユキト、一番動き回ることになるでしょうけれど」

「それは最初からわかっているし、構わないさ。ただリュシール、準備だけはぬかりなくしてほしい」

「ええ、霊具を集めて三人分、魔力相殺できるように準備をするわ」

「この間にディーン卿がどう動くか……それも注視しなければならないな」


 レーネが最後に述べる。雪斗やリュシールは頷き――ひとまず、話は終了した。


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