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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第八章

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邪竜、否――

「――では、次のニュースです」


 女性キャスターが淡々とした声で原稿に従って番組を進めていく。スタジオは生放送特有の緊張感に包まれ、テレビカメラを通してその雰囲気は全国に伝わっているはずだった。


「政府は魔物の出現について調査結果を公表しました。現在は光り輝く樹木のある場所を中心に出現しており、その周辺には近づかないよう注意を呼び掛けています」


 トップニュースは魔物に関すること――光り輝く樹木と魔物。今までにはない現象が地球上で発生し、マスコミも対応に追われていた。

 SNSでは魔物に関しての情報が多数投稿されていた。日本を中心に発生しているこの減少に世界中が注目し、また同時に各種メディアは魔物に対して見解を述べていた。


 空想上の物語でしか見たことのない存在――これはフェイク画像だと言い切る者もいたし、人間の活動に対する地球の怒りだ、などと主張する者もいた。様々な人間がこの事件を利用してうごめいており、インターネットの世界は文字通りカオスを生んでいた。

 幸いながら、現時点で大きな被害は出ていない――けれど魔物が増え続ければいつか凄惨な事件が発生する。それが起これば、当然政府に追及が行われるだろう。一体、どうするのか――各国を含め、日本政府の対応について世界中が注目しているのもまた事実だった。


 ある意味、日本という国が世界の中心になっている――そうした中、大手メディアはその中心に立ち、ニュースを通して状況を伝えている。


「……魔物、という存在がこの世に現れたこと、正直今でも信じられない気持ちです」


 ニュースを一通り伝えた後、女性キャスターは隣にいる男性コメンテーターへと顔を向けた。


「映像が多数残っている以上、現実のことだと思いますが……」

「ええ、政府は魔物が発生した段階ですぐに会見をしました。ここからわかることは光り輝く樹木の出現によって政府は最悪の可能性を想定し、準備をしていたということでしょう。そうでなければ早急に公表することはありませんから」

「魔物が生まれることを予見していた、ということでしょうか?」

「そこについては何故わかったのか、政府は説明を行う必要があると思います」

「現在、SNS場では盛んに議論が行われています……その中で政府が秘密裏に実験を行っていた、などという意見もありますが」

「正直、現段階ではわからないことが多すぎて陰謀論のようなものまで多数あります。私達にできることとしては、樹木の周辺には近づかないこと。魔物が発生したら速やかに通報することです」


 そう語るコメンテーターに対し、女性キャスターは頷き同意しつつ、


「魔物は目撃情報はありますが、まだ町中に出現などはしていません。ただ、魔物が自然消滅するというのは考えにくいので、山の中などに魔物が大量にいるということでしょうか?」

「SNSで投稿された動画の中には、魔物同士が争っている様子を撮影している物が多数ありました。魔物の生態については不明ですが、それぞれが動物のように縄張りなどを持って、魔物同士で争っているということなのかもしれません」

「それで数が減っている、と?」

「魔物の発生数を考えると町中に溢れていてもおかしくはないですが、それは起こっていないということは、そのような状況になっている可能性があるのかもしれません」


 そう語りつつ、男性コメンテーターは神妙な顔つきとなりながら続ける。


「しかし、数が減っているからといって安心はできません。不用意に樹木近くに行かないこと……それを優先し、自分の身を守ることを最優先にしてください――」


 そう男性が発言した直後、異変が起きた。突然スタジオの奥の方で呻き声のようなものが聞こえてきた。

 何事か、とキャスター達が視線を向けた直後、


「――ぐあっ!」


 今度は男性の声。女性の視点では見知らぬ男が突然カメラマンに近づき、蹴り飛ばす光景が映った。


「な、何だ……!?」


 男性コメンテーターが呟く。


「おい君は何を――」


 次の瞬間、男性が言い終えぬ内に彼の体は横にすっ飛んでいった。女性キャスターが悲鳴を上げ、スタジオに現れた男を見据える。


「あ、なたは――」

「今すぐその場を離れろ。でなければ、吹き飛ばして床に転がるそこの男と同じ結末を辿るぞ」


 女性キャスターは慌てて逃げた。そして入れ替わるように男――邪竜は、カメラの前に立った。


「即座に停波されないよう処置はしたが、そう時間はないだろう。手短に済ませよう」


 邪竜はカメラの前で笑みを湛えながら、話し始める。


「私が何者かを端的に言おう。私は――光り輝く樹木を作り、魔物を生み出した存在だ。名はあるが……そうだな、私は邪神。この世界を支配するべく動いている、空想上の物語でしか存在し得ない、人類の敵だ」


 そう語る邪竜――邪神は、どこまでも楽しそうだった。


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