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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第八章

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魔物の出現

「――現時点で、犠牲者は報告されていない」


 魔力樹の下に存在する拠点。そこにある会議室でユキトはツカサから報告を聞いていた。

 魔物が出現し始めたことは、報道より前に認識していた。そしてどこに出現したのかも、おおよそ把握することに成功。よって、拠点にいた仲間達と共に対処を行い、その後ツカサに呼ばれ話を聞いていた。


 この場にいるのはユキトとツカサ、そしてオウキの三人であり、イズミなどは別所で魔物対策に動いている。


「ただ、道路上で魔物と遭遇し激突したトラックとかはあった。警察側も魔物が出現したことについて動揺し、政府側に意見を伺っている状況らしい」

「……そこにいた魔物は?」

「対処した。魔力樹の魔力を用いた転移魔法が上手く機能したな」

「……全国に索敵範囲を拡大させていたことが、何より幸いしたな」


 ユキトの言葉にツカサは深々と頷いた。


 魔力樹は日本全国に出現したわけだが、それはつまり魔力樹を利用して自分達の索敵魔法を流すことが可能だということでもあった。よってユキト達は魔力樹を活用した索敵魔法を開発。それを霊脈と結びつけることによって二十四時間観察できる魔法によるネットワークを構築した。

 それが完成したのは、魔物出現から十日前。ギリギリではあったが、拠点の力が有効利用できたのは確かだった。


「拠点作成のリソースを索敵魔法に構築していれば、この拠点がなくとも似たようなことはできたはずだ」


 ツカサはそう言いつつも、さらに自身の考察を語る。


「だが、ここまでスムーズに魔物出現に対処できたのは、索敵魔法が霊脈や魔力樹の魔力を活用できたため、と言えるな」

「……転移魔法も存分に活用し、魔物も対処できた。犠牲者が出る可能性があったのは間違いなく魔物が出現し始めた直後だった。それを犠牲者なく切り抜けられたのは大きいな」

「ああ、そうだな……さて、魔物が姿を現し始めたわけだが、政府としてはどういう方針だ?」


 ツカサはオウキに問い掛ける。そこで今度は彼が話し始めた。


「こちらがネットワークを構築したこと、そして魔物を倒した点については理解している。政府関係者としては霊具を警察機構含め治安維持の組織に使わせたいみたいだけど、それは間に合っていなくてどうすべきか協議している」

「今は俺達に頼るしかない……というわけだな。問題はここからだけど……」

「既に対策はしている」


 そう言いながらツカサは説明を行った。


「魔物の出現地点などを監視する魔法に加え、魔物迎撃用の使い魔を生み出す召喚魔法陣を作成した。魔物が出現するのは魔力樹付近であるため、出現した直後にカウンターとして使い魔が出現し迎撃に当たる」

「それで魔物が人里に下りないよう対処すると」

「人の目から見れば魔物同士が争っている風に見えるだろうから、怪しまれることはないだろう」

「……魔物の出現は、魔力樹周辺だけでいいのか?」

「そうとも限らないのが実情だな」


 ユキトの問いにツカサは冷静に答える。


「町中に出現する可能性だって十分あり得る。というより、魔力樹の影響で人が多い場所には魔力が滞留し、それが魔物を形成する土壌になり得る」

「町中にも使い魔生成の魔法を仕込む必要がある……と」

「ああ、魔法は一度仕込めば機能し出すため、こちらが都度調整するといった必要性がないのは良いが……問題は、日本全国の町や都市にそういった魔法を仕込むのは、さすがに骨が折れる」

「時間が掛かると」

「イズミはそこについても対処しようとしているが……まあ、ここについては俺とイズミがなんとかする」

「具体的にどうするんだ?」


 ユキトが問うとツカサは説明を施した。


「魔力樹や霊脈に魔力を乗せ、使い魔召喚魔法の効果を色んな場所に流す」

「なるほど……それであれば、この拠点内にいても仕込みができるというわけか」

「現地へ赴いて仕込むより、隔たりがあるなど様々な問題もあるにはあるが……早急に魔物の対策を施すには、それしかないだろう。ここは頑張るさ」


 ツカサの言葉にユキトは頷く――ともあれ、今はツカサ達に任せ上手くいくことを祈るしかない。

 そうユキトが考えた時、ツカサはさらに話を続けた。


「そして、使い魔で対処できなかった場合は俺達が動く」

「より凶悪な魔物が現れた場合……邪竜やカイが何かしら介入している可能性がありそうだな」

「ああ」

「……現時点でカイや邪竜の行方は?」

「調査しているが不明のままだ。こちらが活発に動いているため、下手に動かないようにしているのだろう……もし何か仕掛けるとしたら、魔物が出現するより前にやっているはずだ」


 ツカサの発言にユキトは頷く――決戦はそう遠くないかもしれない。そんな風に思いつつ、ユキトはオウキに話を向ける。


「現時点で政府側は俺達のことを公表する気はないんだな?」


 確認の問い掛けにオウキは「うん」と頷き、ユキトへ向け説明を始めた。


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