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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第八章

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それぞれの考え

 ユキトはエリカの要望について、まずイズミへと相談を行った。彼女は難しい顔をしつつ、


「うーん、厳しいとは思うけど……ただ、彼女には申し訳ないけど、良いサンプルケースになるかもしれない」

「サンプル?」

「魔力や霊具のことを知らない人が一から戦い方を学ぼうとすると、どうなるか」

「……確かに、試金石にはなるだろうけど」


 ユキトはそう言いつつ、頭をかく。


「たぶん他の仲間は反対と言うだろうな……」

「私としては世界に召喚されたことのない人が、霊具を持つことはリスクがあると考えているけど……ただ、エリカさんについては無関係とも言えないんじゃないかな」

「カイの恋人、だからな」


 ユキトの言葉にイズミは頷く。


「だから、本人のやる気次第だと私は思う。でも、この件についてはきちんと他の仲間に相談した方がいいよ」

「ああ、わかっている」


 イズミからの返事を聞いて、ユキトはスマホを取り出した。






 そして――仲間達にエリカの件について連絡をすると、様々な意見が出てきた。


 いくらカイと関係性があったとしても、戦った経験などない彼女に霊具を持たせるのは危険だ、と語る者もいたし、あるいは彼女の立場を考えると、何かしら霊具を扱わせるべきではと主張する者もいた――それは、今後カイが公に動き始めた段階で、彼女の方に干渉してくる可能性があるためだ。


 そういった事情を踏まえれば、確かに霊具を持たせる理由付けはある――が、反対意見も勿論出た。議論は紛糾し、最終的にはエリカ自身の意思と、ユキトやイズミ、そしてツカサといった面々が判断する、という形になった。


 議論そのものはどこまでも続きそうではあったし、誰かが判断しなければならない問題であった――よって霊具を使用するという点において、エリカが本当に扱えるのかを分析する人間が最終判断をするべき、という結論に至ったのだ。


「……そういうわけで、今から話すわけだが」


 ある日の放課後、組織の建物にユキトとイズミ、そしてツカサの三人が集まって会議室で話をすることに。

 他にもタカオミやソラナが呼ばれたが――二人としては三人の判断に任せると表明し、三人で話し合いを始めようという形となった。


「まず、そうだな……俺達がエリカに霊具を持たせるかについて、どういうスタンスなのかを話しておくか」


 ユキトの提案にイズミとツカサは同時に頷いた。その反応を見てユキトは改めて口を開く。


「それじゃあ、俺から……俺は、エリカの意思を尊重する立場だ。彼女自身が、もしかしたら今の事態を止められたかもしれない……なんて考え負い目から言い出しているという点は少し気になるけど、自身の選択であるなら、やってもいいんじゃないかと思う。もちろん、細心の注意を払ってになるけど……」

「彼女は事情を知っている人物でもある」


 ユキトの言及に対し応じたのはツカサ。


「そういう意味では他の人……つまり、何もかも事情を知らない人とは違うし、検証をするに最適と言えなくもない」

「……ツカサも賛成か?」

「しかし、俺としては否定的な見解だ。現在、拠点を作成しようと動いている。そちらにリソースを割いている以上、彼女に霊具の使い方を教える、というのはさらに余計なリソースを消費することになる」

「やることが多いから、まずはそちらを優先すべき、と」

「そうだ……今、やることは多い。拠点を作成すること、政府側と協調関係を維持すること、さらに魔物との戦いについて準備を進め、カイや邪竜の捜索……霊具を所持し扱える人間が限られている以上、魔法を用いて作業を高速化するとはいえ、さすがにこれ以上やることを増やすのは……と、考えている」

「人的資源の面を受けて、というわけだな」

「……心情的な話をすれば、俺としても霊具に触らせるのは反対というわけじゃない。というより、全力で否定している者は少ないだろう」

「確かに……色々やりとりをした限り、否定する人も消極的な感じだったな」


 ユキトはそう述べると、今度はイズミへ目を向けた。


「イズミはどう思っているんだ?」

「私はどちらの意見というわけでもないかな」

「……どういうことだ?」

「何より、霊具を扱えるかどうかの検査をしないといけない。私達は異世界に召喚されて全員が霊具を自在に扱えたけど、他の人も同様に扱えるのか……さらに言えば、エリカさんは霊具から記憶を得てすぐ使えるというわけでもないから、霊具を扱える魔力があったとしても、ちゃんと指導しないと自分の霊具で自分のことを傷つける可能性がある」

「……その検証には、人的なリソースを消費するな」

「でも、これはいつかやらなければいけないことだとも思う」


 そうイズミは主張する。


「魔力の訓練は、どれだけ体を鍛えていてもあまり関係がない……私達だって、全員運動部所属で体を鍛えているわけじゃなかったし、霊具にあった記憶によって戦えるようになっていた。だから素人でもちゃんと指導できれば……そして、いずれ魔物が出現するのなら、その指導方法についてちゃんと私達も学んでいく必要があるんじゃないかな」


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