突然の連絡
新たな拠点の作成については、ユキトから仲間へ提言した結果、思った以上に賛同する人間が多かったため、すぐさま動くことになった。
もっとも、大きな懸念としては当然政府の反応。ユキトはオウキと話し合い、拠点の作成について、オウキが責任を持って説明すると告げた。
「大丈夫か?」
「……話し方次第で印象は変えられるよ。もちろん、場合によっては政府側がボクらを危険視する可能性はある」
オウキはそうユキトに言った。しかし、
「政府と関係性を良好にするのはボクの役目だ。今のところは問題ないし、メイにも今後参加してもらうから……なんとかするさ。それよりも、カイや邪竜に対抗するための施設を用意する方が優先だとボクは思う」
「……わかった。他の人と話をして、施設を作る方向で話を進めさせてもらう」
――そこからは、ユキトではなくソラナを始めとした裏方の面々で作業が始まった。魔物を作り出してから一週間ほどでどのようにするかについては、おおよその枠組みを決めてしまった。
「上手くいけば、夏休みくらいまでには完成するかもしれない」
そうソラナは言い、本当かとユキトは内心疑いつつも、それだけの速度で施設ができるのであれば、魔物が発生するまでには間に合うだろう、と思った。
また、それに加えて魔力樹からは離れた場所――かつ、霊脈が存在する位置に、カイや邪竜に見咎められない施設を作ることをソラナ達は決めた。様々な対策が成される中で、ユキト達は訓練を行い、さらに霊具の作成も進めていく――ユキト達は受験生であり、大丈夫なのかとユキト自身が不安になったりもしたのだが、仲間達が作業の手を止めることはなかった。
そうして活動を進める中、ユキトはカイについて考える。
(俺達が霊具の訓練をしている間にも、カイや邪竜は謀略を進めている……)
現在進行形でカイ達の捜索も続けている。それはユキト達だけでなく、突然カイがいなくなったとして警察の方でも調べてもらっている。
カイの両親達も動き出しており、こちらはこちらで大事になっているのは間違いないのだが――依然としてカイの居所をつかむことはできていない。
「カイ……」
名を呟いた時、ポケットの中にあるスマホから着信が。ユキトが手に取ると、意外な人物の名が表示されていた。
「……もしもし?」
ユキトが電話に出ると、相手は少し躊躇うような声音で、話し掛けてきた。
『あ……その……ごめんなさい』
「謝る必要はないけど……」
電話の相手は、エリカだった。ユキトは頭をかきつつ、どうしたのかと問い掛けようとして、
(いや、どうしたのかなんて訊くまでもないか……カイのことを知りたいに決まっている)
彼女は組織のことを知っているが、あくまで部外者であるため詳細を話してはいない。その中でカイがいなくなってしまったという事実を彼の両親などから聞いているだろう。
しかし彼女は大きな手がかりを知っている――ユキト達に尋ねるのは至極当然の話だった。
「カイのことが聞きたいんだろ?」
『そう、だね』
なんだかぎこちない言葉――とはいえ、さすがにカイについて詳細を語るわけにはいかないため、曖昧な返事をするしかないのだが。
(それにカイが裏切ったなんて、彼女としてもショックだろうし……)
現在、厄介な任務に就いているみたいな表現で濁すしかない――そう思っていると、
『カイについて、なんだけど』
「……ああ」
『――カイは、ユキト達が倒そうとしている敵の所に行ったんじゃないの?』
その問いに、ユキトは咄嗟に応じることができなかった。それは紛れもなく事実だが、なぜ何も知らない彼女がそういった推測に至ったのか。
『やっぱり、そうなんだね』
「……どうして、そういう結論に至ったか話を聞いてもいいか?」
『うん、いいよ。できれば、面と向かって話がしたいかな』
「……わかった。なら放課後、そちらの学校近くで待ち合わせをしよう。日程はそちらの都合に合わせるよ。どこか店に入って話をしてもいいけど」
『なら、後で予定が決まったら連絡する』
「ああ」
通話が切れた。ユキトはそこで、魔物の奇襲にでも遭遇した気分となった。
「なぜ彼女が……いや、何かしら兆候があったのか?」
あるいは、彼女にしか感じ取れなかった何かがあった――そこでユキトはエリカから色々と話を聞きたいと考えた。
もしかすると、彼女との話は――カイとの戦いで、何か突破口を見いだせるかもしれない。
(説得できる材料がある、なんていうのは望み薄だと思うけど……あらゆる可能性を考慮するなら、彼女から話を聞いて、カイのことを知っておくべきだ)
予定までに、彼女に対する質問を考えておこうとユキトは思う。
(あとこれ、仲間に相談すべきか?)
そう呟いて、確認を取るべきだとユキトは思った。
(誰に相談するのが良いかな……メイ、とかかな?)
ただ、彼女が捕まるかどうか――色々と懸念を抱きつつ、ユキトはエリカとの話し合いを頭の中で思い描き続けた――




