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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第二章

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新たな仲間

 雪斗が食堂を訪れた際、幾人かのクラスメイトがいたのだが、ひとまず雑談に興じているのを見てひとまず混乱はないなと安堵する。


(グリークがいなくなった今、一番怖いのはクラスメイトの暴走だからな……)


 彼らが精神的に不安にならないようにするには、まず王都の防備を完全なものとすべきだろう。


(リュシールがその辺りの方針を決めてくれているだろうけど……)


 現在彼女はジークと改めて謁見し、またグリークの立場を引き継いで活動を再開している。竜族ではなく伝説に存在する天神という事実は重臣達にとって二重の衝撃で、結局彼女のペースに巻き込まれてグリークの配下も従うこととなった――主人の顛末が悲惨なものであったのも、おとなしく従った一因となっただろう。


 そして彼女は外部と折衝し始めた。本来大陸に存在する国家間で会議を行う予定だった。それがグリークの死亡――果てはアレイスの宣戦布告で中止となったことだけは各国も認識するはずだが、そこからどう連携しアレイスに対処するかは改めて決める必要がある。


(前回召喚された時、そういう政治的なことにはまったく関わらなかったし……今回もジークとかに任せていいだろうな)


 むしろ自分が出しゃばるとロクなことにならないだろう――雪斗はそう心の中で呟き、ひとまず方針を決定した。

 それから一人で朝食を済ませ、一度部屋に戻る。少ししてレーネが呼びに来たため、彼女の先導に従い広い客室を訪れた。部屋の中央に存在する円卓を囲うように席へと座る面々なのだが、


「……あれ?」


 雪斗は声を上げた。部屋にいたのは翠芭(すいは)貴臣(たかおみ)、さらに信人(のぶと)とリュシール。ここまでは予想していたが、想像もしなかった人物が二人いた。


 両方クラスメイトであり、雪斗は名前も憶えている。片方は男子。名は塚本(つかもと)千彰(ちあき)で、背はやや低いことに加えて女顔という人物だった。

 彼は信人とよく喋っていたはずだと雪斗は思い出しながら、もう一方のクラスメイトを確認。


 名は野々村(ののむら)花音(かの)。おとなしい性格で昼休みなどは友人と話さず読書しているようなタイプ。顔立ちがやや前髪で隠れがちというところは、引っ込み思案的な性格もあるのではと想像できる。


「えっと、二人は……?」

「大陸の状況を語る前にまずは二人について」


 口を開いたのはリュシール。そこで雪斗は椅子に座り、言葉を待つことにする。


「結論から言うと、二人は私達に協力を申し出たの」

「協力……」


 新たな二人に視線を移す。それに対しまず応じたのは、千彰。


「信人が色々やっているみたいだし、戦わなくていいって言ってくれてるみたいだけどさ、信人は戦う心づもりはしているみたいだし、もし良かったら何か手伝えないかと」

「どういう形で協力するかなどは、どんな霊具を得るかによって変わってしまうわ」


 そこでリュシールが話し始める。


「攻撃系の霊具か、支援系の霊具かによってもどう立ち回るか変わってしまう……ひとまず、適した霊具を探すところからね」

「そんな簡単に見つかるんですか?」


 翠芭の問いにリュシールはにこやかな笑みを見せ、


「見れば自分に適した物がすぐにわかるわ……というわけで、レーネ。騎士を呼んで二人を宝物庫に案内させて」

「わかりました」


 そこからレーネは騎士を呼び出すべく部屋を出る。その間に雪斗は新たに戦う意思を示したクラスメイトに、問い掛けた。


「本当に、いいのか?」

「正直、不安よりも好奇心の方が強いかもしれない」


 そんな本音が、千彰の口から漏れた。


「信人が暴走している光景を見て、怖いと感じた人もいただろうけど、俺は違った。逆に興味を持ってしまった」

「もし霊具を手にして鍛練を積めば、戦うことになる。霊具の作用により恐怖心などはなくなるけど、死がつきまとうことになる」

「いざとなれば、魔紅玉に願えばいいのよ。クラスメイトを生き返らせてほしいと」


 口を挟んだのは、リュシールだ。


「それで迷宮を封印して今度こそおしまい」

「けど、それじゃあ――」

「ジークが魔紅玉に何を願うつもりなのか、私もわかっているわ。けどそれについてやり方は色々とある……私もいる。二度と召喚されないようにするための処置を、今から私が考えるわ」


 その言葉は、天神のバックアップがついたことを意味する。確かに彼女の助力があれば、ジークが求める聖剣所持者をこの世界で、という願いは成立するかもしれない。


「もちろん、誰も死なないよう努力するわよ」

「……わかったよ。けど、戦うのはきちんと霊具を扱えてからだぞ」

「ええ、わかってるわ」

「野々村さんは、どうして?」


 翠芭が問う。話の矛先は花音へと向かう。


「えっと……その……」


 彼女は戸惑いながら、言葉を選ぶように、


「八戸さんとか、陣馬さんとか必死に動いているのを見て……何か手伝えないかなって」

「彼女はきっと、支援系の霊具が適しているわね」


 そうリュシールは評する。


「ユキト、今後アレイスが動くというのなら、きっと大々的なものになるでしょう。彼女みたいに後方で色々動いてくれる人も必要になってくるわよ」

「確かに心強いけど……まあ、わかった。俺としては誰も戦って欲しくないとは思っているけど、無理強いはできない。そこは尊重するよ」


 敵がアレイスということで、状況も召喚当初とは変わってしまった。見知った相手でなおかつ彼は国の情勢なども把握していることだろう。ならば少しでも動ける人間がいた方がいいのは確か――

 そこでレーネが帰ってくる。騎士に千彰達を任せ、雪斗達は改めて話をすることになった。


「さて、ユキトには多少話したが、アレイスが動き始めた結果、かつての戦争で苦楽をともにした者達が、敵に寝返った」

「アレイスという人物に懐柔されたってことですか?」


 尋ねたのは貴臣。しかしレーネは首を左右に振る。


「彼らが魔神の気配を漂わせたアレイスに与するとは思えない。おそらく何かしら手を打って、洗脳したのではないかと考えている」

「問題は、彼らをどうするか、だ」


 雪斗は重い口調でレーネに応じる。


「裏切っているということは、少なくとも魔神の魔力の影響を受けているはずだ。そのレベルがどの程度なのか……」

「レーネ、確認だけれど寝返った彼らは霊具を使用しているの?」


 リュシールの質問にレーネは頷き、


「はい。実際傭兵ダインは特級霊具『次元刀』を使用していると報告が」

「なら、まだ間に合うわ。霊具は天神にまつわる武具……魔神の魔力に体全体が侵されれば使えなくなるのよ。おそらく魔法などで意識を変化させられている程度……アレイスが持つ邪竜の力ならば、そういったことが可能というわけね」

「だが多少なりとも急がないとまずいよな?」


 雪斗が質問。リュシールは頷き、


「けれど一日二日では大丈夫。霊具が使用者を保護する機能もあるから……ダインが持つ特級霊具でも数ヶ月はもつはずだよ」

「なら余裕はあるのか……けど悠長にしていて混乱が起きるのもまずい。早急に争乱は鎮めないといけないな」


 雪斗はそう呟き、話を先に進めようとする。だが、


「あの、話の腰を折るようで申し訳ないんだけど」


 と、信人が手を上げた。


「霊具という単語は聞いたことあるけど、特級ってのは?」

「あ、説明していなかったのね。わかった。まずはそこについて説明しましょう。今回戦う面々の霊具についての解説にもなるからね」


 リュシールはそう返答し、翠芭達に解説を始めた。


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