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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第八章

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魔物の生成

 ソラナによって魔力が魔法陣へと注がれていく。それにより魔法陣そのものが発光し、やがて光が溢れた。

 ユキトはそれを注視し、やがて光そのものが形を成していくのを目に留める。やがてその光が消えると――その見た目は、黒い狼のようであった。


「まずは初級編。簡単なやつから」


 ユキトの目の前に現れたのは、異世界における邪竜との戦いで頻繁に見た、狼の姿をした魔物。ただこれは邪竜の配下ではなく、単純に自然発生する魔物の中でポピュラーな見た目をしており、平原などに生息していたというだけだ。


「ソラナ、魔物の制御はできているのか?」


 ユキトは剣を構えながら問い掛けると、彼女は頷いた。


「うん、私は魔物を通した視点などを見ることもできるよ。あるいは制御を手放して、自由に行動させることもできる」

「この狼が動ける範囲は? 自然発生した魔物に行動制限はないと思うが」

「魔物は自らの呼吸で魔力を取り込めるようにしたから、魔法陣の影響がなくても生存はできる」

「なるほど……それじゃあ、まずは攻撃してみてくれ」


 その指示にソラナは頷くと、腕を軽く振った。直後、狼がうなり声を上げながらユキトへ仕掛けた。


 体当たりにも似た動きはユキトの首筋へ噛みつこうとするような軌道を描く。それにユキトは即座に反応し、魔物の動きを読んで、その頭部へ一閃した。

 斬撃が魔物の体へと入る。同時、真っ二つとなった体は一挙に霧散し、魔物の存在はこの世界から消滅した。


「……ふむ」

「どう?」


 ソラナが問う。ユキトは彼女が何が訊きたいのかを理解し、


「魔物の強度などを含め、異世界の魔物がきっちり再現されているな」

「お、良かった。記憶を頼りに再現したけど、上手くいったみたいだね」

「描いた魔法陣からは、似たような魔物をいくらでも生成できるのか?」

「地面に描いた魔法陣は魔力を利用し使い魔を作る術式で、その魔物の能力なども調整はできるようにしている。今のは私の頭の中でイメージした魔物の姿と能力がちゃんと出力できるかを試してみた」

「で、ちゃんと再現はされたと。魔物の強さは魔力の大きさも関係してくるが、地面から吸い上げる魔力量で、変化するという認識でいいか?」

「うん、その魔力量を私は調整して強さを決定できる」

「なら先ほどとまったく同じ見た目の魔物を作り、魔力量を多くするとかは?」

「次はそれをやってみよう」


 再度魔法陣にソラナは魔力を注ぐ。再び魔力が溢れ、一気に形を成すと、見た目は先ほどの個体とまったく同じものができた。

 しかし、ユキトの目には――いや、この場における全員が理解したことだろう。魔物が発する気配は、一体目と比べ明らかに濃い。


 生成直後、魔物はユキトへ仕掛けた。先ほどとまったく同じ軌道により突撃を行う魔物に対し、ユキトは寸分違わず完璧なタイミングで魔物へ斬撃を叩き込んだ。

 剣によって魔物の頭部が両断され――その動きもまた一体目とまったく同じもの。そこで、


「……さっきよりも抵抗はあった。魔力量が多い分だけ、魔物の能力も確実に高くなっているな」


 ユキトはそう評すると、ソラナは満足げに頷く。


「私の方でも考えた通りに魔物を操作できたし、魔物の能力も調整できた」

「なるほど、魔法そのものの制御は問題ない、というわけだな……他にやらないといけないことはあるのか?」

「ユキトが望むような個体を生成するには、もう少し実験をしないといけないんだけど」

「ああ、構わないよ」


 ユキトはソラナの言葉に返事をすると、剣を構え直す。


「満足のいく相手を手に入れるためなんだから、いくらでも協力するさ」

「それはありがとう……とはいっても、ここからは結構細かい作業ばかりになるから、ユキトにも負担を掛けることになるけど」

「そこは問題ないよ。どんどんやってくれ」

「……それじゃあ」


 ソラナはさらに魔物を生成し、実験は進んでいく。ユキトは魔物を倒し、その感触を報告する。

 次第にイズミやスイハからもコメントが差し込まれ、少しずつ進展していく。やがて、ソラナはコツをつかみ始める。


 とはいえ、魔物が暴走する危険性はゼロではない。そこでユキトは、


「ソラナ、万が一に備えて色々処置しないとまずいよな」

「うん、さすがにここまでは結界とかもなかったけど、さすがにトラブル対策を事前にやっておかないと……イズミ、良かったら手伝って」

「わかった」


 ソラナとイズミの二人が作業を始める。そうした光景をユキトはスイハと共に眺めることに。


「……ここまで暇じゃないか?」


 なんとなくユキトが話を向けると、スイハは別段そう感じていないようで、


「なんだかんだで楽しいよ」

「楽しい?」

「ユキトが表情を変えつつ仲間と議論しているところとか」

「……それのどこが楽しいのか」


 ユキトは答えたが、彼女は笑う。そこでユキトは「楽しければいいか」と考えることにして、ソラナ達の作業を見守ることとなった。


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