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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第八章

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凶行を止めた先

「ああ、その点については俺も憂慮していた」


 ユキトとオウキはツカサのいる部屋を訪れた。そこはイズミが普段している部屋だが、今日はツカサがいた。


「良い訓練相手がいない……特にディルを持っているユキトは顕著だろう。今後のことを考えると色々とやっておきたいと思うのも無理はない」

「何か対策はあるのか?」

「……組織設立時、魔物との戦いを想定した際、限定的な範囲で魔物を生成できる空間を作成できないか検討したことがある。ただ、やるにしてもかなり魔力が必要となるため、その際は実現が難しいと考えていたが、魔力樹がある今ならば、ということで準備をしている」

「抜かりがないな、ツカサ。というより、俺が考えつくことはツカサも考えているか」

「そういうわけでもないさ……準備をしているのはソラナだ。現在進行形で唸りながら術式を思案しているはずだが……」

「今、ソラナはどこに?」

「たぶん自宅で術式を練っているはず……連絡してみようか?」

「ああ、頼む」


 ユキトの返答にツカサはスマホを取り出して連絡を行った。すぐに彼は話を始め、数分して通話を切る。


「現在進行形で作業をしているらしい。そして試作の術式が数日以内にはできるとのことだ」

「なら、それが完成した時に試してみるか?」

「ああ、ただ一つ……術式を使用するには条件がいる」

「条件?」


 聞き返したユキトにツカサは頷きつつ、


「現段階で強力な個体を作成するには、魔力を継続的に供給し続けなければならない」

「魔力が潤沢に使用できる場所じゃないと、真価を発揮しないと。それはつまり……魔力樹の近くじゃないと難しいということか」

「そうだ」

「魔力樹の側に転移術式があるからやることはできるけど、実行に移した際に問題が発生する可能性はあるか?」

「魔力樹を調査した限り、周辺で何か行動を起こして樹が暴走するなどということはない。もしそうなるようだったら、ユキトとカイが行った最初の戦いで何か起きていたさ」

「それもそうか。なら俺としてはやってみたいんだが……」

「ソラナには連絡しておく。ただ、どこまで強力な使い魔を生み出せるかはわからないぞ」

「物は試しだ。現状では強くなることが事態解決の近道になるのは事実だからな。それに、カイとの決戦までには技法を完成させておきたいし」

「わかった。なら準備をしておこう」


 ツカサの返事を受けてユキトは「ありがとう」と礼を述べる。


「色々とある中で、悪いな」

「この戦いではどうやってもユキトが最後の砦になる。頼みを聞くのは当然だ」

「……最後の砦、か」

「事実、邪竜との戦いでもユキトは最後の最後まで戦っていたんだ。またその責を背負わせることになるが」


 ツカサの言葉にユキトは首を小さく振る。


「こっちのことは気にしなくていいよ。それが俺の役割だからな」


 ――それで話し合いは終了した。その後、ユキトは自宅へ帰ることに。


『ねえねえ、ユキト』


 その道中でディルの声が頭の中に響いた。


『カイのことだけど……』

「うん、どうした?」

『みんなあえて言わないようにしているけどさ、邪竜との戦いの中でカイとは絶対にもう一度戦うことになるよね』

「ああ、それは間違いない」

『なら……カイはどうするの?』


 問われ、ユキトは沈黙。その間もディルが声を発し続ける。


『凶行を止めるというのはわかるよ。邪竜と手を組んでいる以上は絶対に止めないといけない。でも、その先は? 例えばカイを倒して、捕まえて……そこから先は、どうなるの?』

「そこからは、この国の法律とかにも関わってくるな。ただ、邪竜と手を組んでしまった以上、彼は世界的に影響を及ぼした人間となってしまった。そんな彼をどうするのかは……捕まえてからじゃないと、解決できないな」


 そこまで言った時、ユキトは一度言葉を止めた。


「現時点ではまだカイの裏切りについては世間に認識されていない……邪竜とか、魔物とかのことも知られていないのだから当然だが。この状況なら、まだカイ自身を救う方法は間に合う」

『救うって?』

「このまま世界が混乱に陥り、その中でカイと戦い捕まえても、その結末は悲惨なものになるだろう。でも、例えば彼は邪竜に操られていた、とか世間に公表すればどうだ? 少なくとも、国や世界の法律による罪からは免れるかもしれない」

『それはつまり、私達の手で罰するってこと?』

「それもわからない……そもそもカイは自分の意思で邪竜の所へ行った。なら、事態を解決するには、カイの意識を変える必要がある」

『カイの、意識……』

「それを果たして初めて、勝利になる。邪竜を倒すだけでは足らない。カイを倒すだけでも足らない。彼の野望を止めるには、その意識を変える……手法は頭の中にある。でも、それは極めて困難だし、上手くいくのかも未知数だ。けれど、俺達はそれと向き合う必要がある――」


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