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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第八章

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鍛錬の環境

 霊具作成による戦力強化については、日進月歩の勢いでありイズミの無茶とも言える作成速度によって、再現度の高い霊具が仲間達に行き渡る結果となった。

 そしてオウキは話し合いの結果を踏まえ、政府側にどう動くべきか結論を急ぐよう提言を行った。現状では訓練を施すことはできるが、それが実になるのはいつかわからない――政府側としては色々と検討した様子だが、可能な限り準備を進めていくのと並行し、邪竜一派を追い、さらにいずれ出現する魔物への対策を行うということとなった。


 つまり、ありとあらゆることをしなければならない――が、ツカサやオウキは予想していたか、方向性が定まった時点で準備は済ませていた。


「既に政府側は誰が訓練に参加するか決めているようだ」


 と、会議室でユキトはオウキから説明を聞く。平日の放課後で、この場にいるのは二人だけだ。


「ただ、招集には時間も掛かるらしい……それだけで一ヶ月くらいは掛かるかな」

「……秘密保持できる人であることに加えて、政府側が直接動くだろうから、たぶん関係各所に説明するのに無茶苦茶大変なんだろうな」


 一ヶ月、という時間は貴重ではあるが、ユキトとしてはそれだけの時間で動くのであれば早いのだろうと認識する。


「ただ、政府側としては単純に霊具の指導をするだけでは足らないという意見だ」

「というと?」

「今回訓練を行う人へ霊具の使用方法を詳しく伝授し、関係組織の人員に指導できるようにしたいと」

「……なるほど、人手不足である以上は理解できる。ただ、できるのか?」

「ツカサはマニュアル化が必要だとして、仲間数人と検討を始めたよ」

「イズミだけでなく、ツカサの方もかなり大変そうだな」

「そこは間違いない……けど、魔物が発生していない今しかやれないことだ。よって、当面の間は顔を合わすことがなくなるかも」

「ツカサはイズミと共に裏方をやった方がいいだろうし、俺としては問題ないよ……オウキの方は大丈夫か?」

「ボクはあくまで折衝役だからね。霊具に関して何かしら動いているわけではないから、そこまで負担は掛かっていないよ」

「霊具を知る人間が増えれば、それだけ色々と面倒事も増すだろう。かなり大変ではあるが……」

「それでも、ボクらはやるしかない」


 オウキの言葉にユキトは頷く。


「俺の方は鍛錬に集中でいいのか?」

「うん、もしもの場合、ユキトに最大の負担が掛かってしまうけど」

「筆頭の戦力である以上、覚悟はしている。それに、ディルの能力は知っているだろ? どれだけ戦い続けても問題はない。心配するな」


 ユキトの言葉にオウキは何か言いたそうにしたが――そこには言及しなかった。


「……魔力樹の権限によって、ボクらの役割もある程度決まってきている。その中でメイについてなんだけど」

「彼女がどうした?」

「今は芸能活動を優先してもらっている。仕事も忙しいし、魔力樹についてはあまり関わっていない」


 ユキトは頷く――メイ自身、魔力の問題が発生していたが、そこについても処置をして以降は何事もない。


「けれど、魔物が発生し……それが大規模なものであったとしたら、彼女の出番かもしれない」

「有名である彼女の力でを利用し、統制を行うということか?」

「最終手段だけどね。政府側としても彼女の力には期待しているようだ」

「……メイの知名度を利用するという手段は、間違いなく俺達の本意ではない。でも、その可能性も考慮しなければならない、か」


 ユキトの言葉にオウキは頷く。


「方針は決まったから、ボクらはそれに対し作業を続けていくことになるけれど……ユキト、僕らでやっておくべきことはあるかい?」

「現状では、カイや邪竜との決戦に備えてイズミと連携……かな。一通り霊具の作成は終えて、次はこれから訓練を行うための人員へ向けての霊具……さらに、カイや邪竜との戦いに備えての霊具作成に入るだろうけど、俺達はどういう状況が想定されるか考え、作成する霊具をきちんと伝え、その能力を把握しておく必要がある。それと」

「それと?」

「……決戦に持ち込んでも、勝たなければ意味はない」


 ユキトの発言にオウキは当然とばかりに重々しく頷いた。


「俺も鍛錬はしている……でも、カイとの戦いで俺は『神降ろし』を用いても負けた。次は絶対に勝たなければならない以上、打てる手は打っておかないといけない」

「ユキト、具体的には?」

「俺にとって今、必要なものは鍛錬する環境だ。時に仲間と鍛錬を重ね、『神降ろし』の技法を用いる時は一人で集中し……ただ、それだけでは足らない。今の俺に必要なのは、より実戦的なものだ」

「つまり、訓練の相手……魔物との戦いを今後想定するなら、魔物との実戦経験か」

「そうだ、これはきっと俺だけの話ではない……他の皆も手にした霊具で仲間と訓練しているだけでは、きっと足りない」

「……そこはイズミやツカサと相談する?」

「他に方法はないと思うが、これ以上二人に負担を掛けるのもまずいか」

「ともあれ、ユキトが言う以上は……カイに勝つためならやらなければならないのも事実」


 そう言うとオウキは、部屋の入口を手で示した。


「今日、ツカサが組織内にいるから、まずは相談してみようか――」


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