仲間と信頼
「現状、俺達にできることは一つだな」
口を開いたのは、ツカサ。
「カイや邪竜の狙いを絶対に阻止すること。それには当然、武力がいる」
「……ま、それしかないか」
ユキトはツカサに同意し、オウキへと述べる。
「オウキ、こちらは可能な限り準備をする……魔力樹という膨大な魔力を生む存在が現れた以上、カイ達に後れを取ることは許されない。どんな状況になっても対応できるような態勢を整えておくため、戦力を強化する……そこだけは、政府側に了解してもらわないといけない」
「そうだね……ボクらとしては独断で動く気はまったくない。ただし、最悪のケースを想定し、対抗手段を構築しておく。うん、伝えておくよ」
話はまとまった。重い空気が生まれる中でも、ユキト達は自分達にできることをやろうと改めて意思を統一する。
「今後の方針はひとまず変えないままで、俺達は魔物の出現に応じられるように準備を進めていく……ツカサ、カイや邪竜の居所をつかむような調査は続けているのか?」
「無論だ。しかし成果はない……中断することも選択の一つだと思っているのだが」
「いや、そのまま続けてくれ。カイや邪竜だって魔物が出現するまで漫然と待ち続けるというわけにもいかないはず……俺達が強くなっていくんだからな。だから、ボロを出す可能性もゼロじゃない」
「わかった、調査は続けよう……今回話し合ったことについては、後で共有しておくか?」
「そうだな。アプリなんかを通じて仲間達へ連絡をしよう」
そこでユキトは一度言葉を切った。そして、
「……長い戦いになると思う。魔物の出現なんかを考えると、一度始まってしまえばどこまで戦う必要に迫られるのか……現状ではまったくわからない」
「それは異世界でも同じだったよ」
オウキが言う。ユキトは「そうだな」と同意し、続ける。
「異世界の戦いも、いつ終わるのかわからないまま、霊具を握り戦っていた……それと同じではあるが、大きな違いは仲間以外に頼れる存在がいない、ということだ。俺達は、自分達の戦力だけで乗り切らないといけない」
ユキトはここでこの場にはいないイズミのことを思い返し、
「イズミの負担も重い……ツカサ、戦力的な意味合いで言うと、使い魔のような存在を生み出す手法とかは考えているか?」
「それは他のチームで検討を重ねている。だが、制御法などを含め安全が確立されるまでは厳しいかもしれないという結論になっている」
「安全が確定するまでは採用できないか」
「ああ。しかし、多角的にやれることは探している。特に戦力強化は急務である以上、色々と試したいところだが……」
ツカサは言葉を止める。試す――それはつまり、
「どこか山にでも行って、技法を試す……か?」
「使い魔を用いて戦うという手法は、そうした霊具を所持する人間以外では採用しなかった。そもそも強力な使い魔を作成することはできなかったし、迷宮における戦いではほとんど役に立たないからな」
「初めてのことを試すってことだから、実証実験はしないと無理か……」
ツカサは頷く。やはり色々と問題があり、身動きが取りづらくなっているのは事実であった。
「ともあれ、だ」
しかしツカサは肩をすくめ、
「状況が刻一刻と悪くなっているが。決してネガティブな話ばかりじゃない。俺達も着実に強くなっているからな」
「……とりあえず、さっきも言った通り様々な状況を想定し、準備を進めることを優先しよう。ツカサ、俺は今まで通りでいいんだな?」
「ああ、構わない……しかし、選択肢が多くどれが正しいのかわからないのが実情だ。今はこれが正しいと自分達を信じてやりきるしかないな」
「不安ではあるけど、それしかないな」
――室内の空気が、少し軽くなったように思えた。その中でユキトが感じたのは、仲間達への信頼。
カイというリーダーであり精神的な支柱であった彼が寝返ったことで、問題はある。しかし一方で、彼が敵に回ったことで仲間にも結束ができた。相手はカイであるからこそ、最大限に警戒し、また勝とうと誰もが動いている。
カイという存在を起因したこの考えが良いものなのか今のユキトには判別がつかないが――それでも、
(今はもう、誰一人欠けるわけにはいかない……士気の高さを維持しながら、準備を進めるしかない)
「俺はカイや邪竜と遭遇した際に、確実に勝てるだけの修行をする」
ユキトの言葉に、仲間達は頷く。それが正解であると誰もが認識しているようだった。
「今は鍛錬をしつつ、適材適所で仕事をしていく。俺とディルはかなり特殊な立場であるため、助けが必要ならすぐに言ってくれ……それとオウキ、政府間との対話について、もう少し報告頻度を上げてくれ」
「わかった。大変かもしれないけど、やってみるよ」
「頼む……必然的にオウキやメイの負担は大きくなるけど……魔物が出現するより前に、一定の結論を出すことを目標にして欲しい――」




