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黒白の勇者 ~再召喚された異世界最強~  作者: 陽山純樹
第八章

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二振りの剣

 ――イズミが霊具を作成するペースは早く、間違いなく邪竜の想定を上回る速度で仲間の霊具を作成していく。

 天級の霊具を持っていた仲間はそうもいかないが、特級霊具を所持していた仲間は、再現度の高い武具を得ることができた――それはつまり、純粋なパフォーマンスだけなら、異世界で戦った時と同じように振る舞えることを意味していた。


「――はああっ!」


 そんな中、仲間の一人であるノブトがスイハと向かい合い武器を振るった。彼が用いているのは槍。異世界で使用していた霊具『天盟槍』に酷似した物であり、その特性も再現ができていた。

 一方でスイハの剣は聖剣に及ばないにしても、強力な霊具――純粋な技量勝負では互角だが、霊具の差によってノブトの槍が弾かれスイハが勝利を収めた。


「……なんというか、無茶をするなと言っているのに」


 その光景を見てユキトは呟く――魔力樹の範囲が拡大していく中で、ユキト達は着々と準備を進めていく。ただその速度は純粋に裏方であるイズミの力などによって支えられていた。


「――まあ、イズミも倒れるようなことにはなっていないし、大目に見てあげてよ」


 そう語るのは、ユキトの横で訓練風景を眺める男性。ユキトとそう変わらない身長だが、時折女性と間違われるような中性的な容貌が特徴だった。

 名はオウキ。最初異世界に召喚された際、カイ、ユキトに続くリーダー役を務めることが多かった人物。その理由は元々クラスメイトの中でまとめ役をすることが多かったのもある上、生まれも関係している。


 ユキトが過去に聞いた話では、一代で財を成した彼のご先祖様から、芸術や政治、企業統治など様々な分野に枝分かれするように子孫が名を馳せた。家系だけを見ればカイを上回るかもしれないが、クラスの中で控え目な性格故にムードメーカー的な役割は持たなかったため、カイと比べれば前に出ることはなかった。

 けれど、現在の事態の中で彼は重要な役割を担っている。それはカイの代わりに様々な折衝をすること――生まれから、彼はその役目を自ら申し出た。


「オウキ、状況はどうだ?」


 ユキトは尋ねる。ちなみに彼が訓練場を訪れることはそう多くない。今日も報告がてら来たのだろうと考えていた。


「正直目が回りそうだよ。けど、組織の取り巻く環境は悪くない。カイの件については混乱しているけれど、だからといって僕らに責任を背負わせる気はないみたいだ」

「そこは俺達にとって安堵する部分だが」

「僕らは年齢が年齢だからね……選挙権すら持っていない人間もいるのに、全てを負わせるなんて無茶だ、と考えているのかもしれない」

「なるほど、な」

「ただ、組織側に現状を改善する方法がないか、ということは確認してきたよ。政府側でどうにもならない以上、組織の力を借りなければ状況を打開できないし、色々な思惑が重なって僕らの扱いを決めているんじゃないかな」

「……霊具を開発していることはどのくらい知っている?」

「魔力樹を発生させた一派のことを含め、対抗手段がいるということで納得はしてもらえているけど、イズミの開発速度が早いせいで、報告内容と比べて相当な力を持ってしまっているね」

「組織内の光景を見たら、政府の人間卒倒するんじゃないか?」

「その可能性はある……けど、僕らがこれを持たないといけないのもまた事実」


 オウキはそう言うと、傍らに置いてある剣を見る。イズミは彼の霊具もまた再現していた――そこにあるのは、二振りの剣。


「まさか僕の剣をここまで再現するとは」

「ただ、オウキの剣は天級霊具だった。完全再現というのはまだ無理だ」

「うん、わかっている。でも、一度試しに使ってみた段階で確信したよ。これは僕が持っていた霊具『瞬命剣』に極めて近いものだと」


 そう述べたオウキは、ユキトへ向け笑みを浮かべる。


「とはいえ、だ。実戦はまだだから、是非ユキトと手合わせ願いたい」

「俺は構わないけど、怪我でもしたら一大事だな」

「大丈夫大丈夫。回復魔法を使える人員もいるだろ? なら、首を飛ばされない限りは平気だよ」

「冗談でもそんなこと言わないでくれよ」


 やがて、ノブト達の訓練が終わる。それを見てオウキは、


「ユキトが再召喚された時に共に戦った仲間達……彼らも、強いな」

「霊具を使っていたのは短期間だけど、それでもスイハ達はよくやってくれているよ」

「そうだね、十分過ぎるほどに……でも、召喚された先輩として、ボクらも黙ってはいられないな」


 まるで対抗心を燃やすようにオウキは呟くと、ユキトへ再度要求した。


「というわけでユキト、手合わせを」

「……わかった。ただ、霊具をかなり再現できているなら、加減はできないぞ」

「わかっている。それじゃあ始めようか」


 戦意をまとわせたオウキに対し、ユキトは剣を抜きながら訓練場の中央へと向かった。


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